第42話「明日の勝利へ向かう風」
二日目の全試合を終え、
俺たちはホテルに戻り、ロビー脇のテーブルに集まっていた。
時間はもう遅い。
昼間なら賑わっていそうな空間も、
今は照明だけが静かに床を照らしている。
自然と、円になる。
「……明日だな」
レンジの一言で、空気が締まる。
ブロック代表決定戦。
勝てば先へ進める。
負ければ、ここで終わりだ。
「相手、強いよね」
カエデが静かに言った。
「うん」
俺は頷く。
「でも、ここまで来たら関係ない」
その時だった。
「――まだ起きてたんだ」
振り返ると、
そこに立っていたのは、マックス先輩とリリ先輩、そして樹里先輩だった。
二年チームの三人だけ。
「真面目だね、ほんと」
軽い調子で言ったのは樹里だ。
リリは、こちらを見て言う。
「明日、ブロック代表決定戦だからね」
「はい」
少し間を置いてから、
リリは、まっすぐに俺を見た。
「私たちに、リベンジするんでしょ?」
胸の奥が、強く締め付けられる。
過去の敗北。
あの時、何も出来なかった自分。
「……するよ」
俺は、はっきり答えた。
「次は、勝つ」
リリは小さく笑った。
「なら、ちゃんと来て」
「決勝で、待ってるから」
マックスが、軽く肩をすくめる。
「言うね」
「私たちも頑張らないとだよ」
リリはそう言って、二人と並ぶ。
「期待してるからね」
三人はそのままエレベーターへ向かう。
扉が閉まったあと、
ロビーにはまた静けさが戻った。
「……やるしかないな」
レンジが言う。
「うん」
カエデが頷いた。
俺はデッキケースを握りしめる。
まだ決勝じゃない。
でも――ここを落としたら、何も始まらない。
「今日は休もう、先輩たちは先を見据えてる」
立ち上がりながら、言った。
「明日、全部ぶつける」
三人で、エレベーターへ向かう。
静かなロビーを離れる直前、
俺は一度だけ振り返った。
(リベンジだ)
それは誰に言われたからじゃない。
自分で決めたことだ。




