第41話「武装船団」
二日目の一試合目が終わり、俺たちは控室へと戻る。
そして三人とも、自然と小さな円になる。
「……そっちは?」
俺が聞くと、レンジが肩をすくめた。
「序盤は悪くなかったんだけどな。
最大火力をカウンターされて無効にされてからは、じり貧だったわ」
悔しそうではあるが、声は落ち着いている。
「相手、冷静だった?」
カエデが聞く。
「だな。無理に来ないタイプ。
俺が動いた瞬間だけ、きっちり刺してきた」
それだけで、どんな試合だったかが分かる。
「カエデは?」
俺が視線を向ける。
「私は……守りを固めて、少しずつ動いたかな。
水属性は、基本的に動いてくる相手のほうが有利に戦えるからね」
レンジが軽く息を吐く。
「やっぱ手強いな」
「うん」
俺は頷いた。
「派手じゃないけど、ちゃんと“勝ちに行く試合”だ」
三人とも、しばらく沈黙する。
(……次だ)
「とりあえず次の試合は午後からだから、ご飯食べに行きましょう」
カエデに促され、食堂へ向かう途中で先輩たちと合流する。
「頑張ってるみたいだな!」
「試合見てたよ」
「いい動きだった」
口々にほめてくれる先輩たち。
「けど、当たったら勝つのは俺たちだぜ」
そうマックス先輩が、にやりと笑って煽ってくる。
「マックス、後輩を威圧しない……」
ちなみに先輩たちは、ここまで無敗らしい。
誰一人、負けていないとか――正直、化け物だ。
食堂に着くと、そこにはたくさんの出場選手たちがいた。
「よう、君たち。さっきはいい試合だったね」
声をかけてきたのは、アクアフォースの面々だった。
「どうも」
「負けちまった俺たちから言わせてもらうぜ。
勝って、優勝しろよ!」
「おう!」
俺がどう返していいか迷っていると、レンジが一歩前に出て応えた。
アクアフォースの面々と一緒に食事をしていると、
次の対戦相手が決まったらしい。
「愛知代表、武装船団か……」
「あー、あそこなぁ」
「珍しいチームだよな。
あそこまでウェポンカードを有効活用できる連中、なかなかいないぜ」
「私はウェポンカード、あんまり入れてないなぁ。
基本のバフ魔法で対応できることが多いからね」
「俺は二種類かな。
装備するとバーンダメージが上がるやつがあるんだ」
「俺は一種類。
正直、発動機会は少ないな」
俺たちは口々に言う。
(ウェポンカード……
ユニットに装備することでステータス補正や追加効果を得られる便利なカード。
ただし、ユニットが破壊されれば一緒に壊れるのが難点だ)
そう考えていると、モニターが切り替わった。
俺たちのチーム名が、次の対戦欄に表示される。
食事を終え、俺たちは会場へ戻る。
やがて、次の対戦時間になった。
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▼ 二試合目
二試合目の相手は、武装船団。
(ウェポンカードの使い手……)
そう意識しながら席に着き、
気持ちを切り替えて集中する。
ジャッジが、試合開始を告げた。
「「リンク」」
試合が始まる。
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序盤
相手は積極的だった。
ユニットを並べ、早い段階から圧をかけてくる。
そのユニット一体一体に、ウェポンカードが装備されていく。
俺は、すぐには応じない。
盤面を受け止め、最低限の処理だけでターンを返す。
――耐える。
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中盤
相手の攻めは止まらない。
ウェポンカードを装備したユニットたちが、
追加効果と強化された数値を武器に襲いかかってくる。
(……ここで除去を切れば楽になる)
だが、切れば終盤の選択肢が消える。
(まだだ)
ライフを削られながら、
本当に危険な一体だけを選んで裁く。
盤面を整えることに、ほとんどの手札を使わされる。
派手さはない。
けれど、俺の選択肢だけが、少しずつ削られていく。
観客席のざわめきが、遠くで波のように揺れた。
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終盤
決定的な一手は、静かに訪れた。
俺は、温存していたカードを切る。
――だが、相手はそれを上回ってきた。
「……っ」
一瞬、思考が止まる。
盤面を、こちらに傾けきれない。
(――もう、待てない)
俺はエースを前に出す。
「ワールキング、召喚!」
盤面を一気に押し返し、攻めを展開する。
削るべきところだけを、確実に削り切る。
「ワールキングでユニットを攻撃!
通れば、貫通ダメージでライフ0です!」
相手は、深く息を吐いた。
「魔法発動。《リペアウェポン》」
「コストとして手札を一枚墓地へ送り、墓地のウェポンカードを装備させる」
相手はカードを掲げる。
「装備するのは、《呪怨の仮面》対象は……ワールキングだ」
「《呪怨の仮面》の効果。
受けるダメージは互いに等しくなる」
――次の瞬間。
俺たちのライフは、同時に0になった。
結果は、引き分け。
引き分けという結果に、胸の奥にもやもやが残る。
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控室に戻ると、すでに一人戻ってきていた。
レンジが、こちらを見る。
「……どうだった?
俺は引き分けだったぜ」
「俺も引き分けだったわ」
俺は答える。
「昨日より、ちゃんと考えられたんだがな」
控室のモニターでは、カエデが静かに戦っていた。
やがて、モニター越しにカエデの勝利が告げられる。
結果として、1勝2分け。
俺たちは、勝利で終わった。
「ハルト~、レンジ~。勝ったよ」
やがてモニターに、次々と結果が表示されていく。
敗退の文字。
消えていくチーム名。
(……減ってきたな)
ブロックの枠が、少しずつ埋まっていく。
カエデが、画面を見たまま小さく言った。
「次、勝てば……」
言葉は、そこで止まった。
俺はデッキケースを、ぎゅっと握り直す。
(明日は、一試合のみ)
だが、その一試合が――
どれほど重いかは、もう分かっていた。




