第36話「紅蓮の読み合い」
全国大会、同時進行の三卓。
ハルトの勝利が告げられるのと、ほぼ同時だった。
別の卓で、レンジもまた静かにカードを並べ終える。
火属性同士。
真正面からの殴り合いになることは、始まる前から分かっていた。
向かいに座るのは、同じく火属性を主軸としたプレイヤー。
構築も方向性も近い――だからこそ、誤魔化しは利かない。
レンジは小さく息を吐き、視線を盤面に落とす。
「……同時進行、ね」
相手の動きを見てから考える余地はない。
選択はすべて、同時だ。
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### 一ターン目:火種と様子見
開始の合図。
二人は同時にカードを公開する。
小型ユニット。
軽いバーン効果。
互いのライフが、ほぼ同時に削れる。
派手さはない。
だが、火属性同士の試合では、これが正しい入りだ。
(序盤から飛ばすと、後が持たない)
レンジは、相手の出したカードと処理の順から、構成を探る。
純バーン寄り。
ユニットは最低限。
「……予想通りだな」
レンジ自身は、ユニットとバーンの中間。
削りながら、盤面も残す。
一ターン目は、完全な五分で終わった。
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### 二ターン目:炎の応酬
二ターン目に入ると、空気が変わる。
双方が、同時に中核となるカードを切った。
バーン。
追加効果。
ユニット破壊。
処理が終わるたび、ライフが削れ、盤面が焼け落ちる。
観客席がざわつく。
「同時に飛ばし始めたか」
「まぁ火属性同士は、こうなるよな……」
レンジは眉一つ動かさない。
削られるのは想定内だ。
(まだ、踏み込まない)
相手は、このターンで一気に畳みかけるつもりだった。
だが、レンジは一枚、手札を残す。
結果、盤面はほぼ更地。
ライフも、ほぼ並んだ。
だが――
手札の残り枚数は、レンジのほうが一枚多い。
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### 三ターン目:残した一手
三ターン目。
互いに、残るカードは少ない。
ここからは、読み合いの精度がすべてだ。
レンジは、静かに最後の選択をする。
(ここだ)
相手も、同時に切り札を投げる。
強烈なバーン。
だが、レンジのカードは――
それを前提に組み込まれていた。
炎がぶつかり、処理が進む。
一瞬の静寂。
盤面に残ったのは、レンジのユニットだけだった。
「……勝者、レンジ」
宣告が響く。
火力の差ではない。
出す順番も、反応も存在しないこのゲームで、
**一手残したかどうか**――それだけの差だった。
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レンジはカードをまとめ、静かに立ち上がる。
「……悪くない」
視線の先では、仲間たちの卓も、まだ続いている。
燃え尽きるには、まだ早い。
レンジの炎は、次の戦いに向けて、確かに残っていた。




