第35話「動かぬ地、崩れる給仕」
全国大会一回戦。
卓に着いた瞬間、空気が変わった。
照明の下、対面に座るのは
【佐賀県代表・ブリーズ・サーヴァント】。
青年は深く一礼する。
「よろしくお願いします。
……めーぷるちゃん」
カエデは、一瞬だけ間を置いた。
「全国大会では、
プレイヤーネームでお願いします」
静かな声だった。
デッキを置く音が、重なる。
開始の合図。
同時進行。
助言なし。
互いの盤面は、見えない。
――ここからは、
**この卓だけが世界**だ。
「「リンク!」」
序盤からメイドデッキは展開し動いていく
軽やかに、流れるように。
《給仕見習い メリィ》
《疾風配膳 リボンメイド》
メイドたちが次々と展開され、
フィールドは一気に華やぐ。
観客席から、小さなどよめき。
「綺麗だ……」
「速い」
速度で主導権を取り、
小刻みに削る――教科書通りのメイドデッキ。
だが。
カエデは、ゆっくりとゴーレムたちを展開していく。
一手。
さらに一手。
守る。
耐える。
「……?」
青年の眉が、わずかに動く。
(来ない?)
三ターン目。
カエデは、静かに動く。
「《岩殻の構築士》を召喚」
構築士の効果で、ゴーレムたちが呼び出される。
「さらにジャイアント戯画ゴーレム召喚です」
優先権は取られるが、ゴーレムたちが守り切り
カエデは1枚のカードを発動させる。
「地属性アーティファクト――
《基礎杭・ガイアピラー》を設置します」
地に、一本杭が打ち込まれる。
派手さはない。
だが――
盤面の“重さ”が、変わった。
続けて。
低い音。
鈍い振動。
観客のざわめきが、自然と止む。
(……さすがゴーレム寄りは守りが固い)
青年は察する。
メイドの動きは速い。
だが、**地は、動かない。**
メイドデッキとして理想の動きだが
ゴーレムたちは削れない。
青年の呼吸が、乱れる。
(削れない……)
(押せない……)
そしてカエデが切り札を切る
「天変地異を発動します」
盤面の流れが、逆転する。
速い者からではない。
――遅い者が、先に動く。
四ターン目。
天変地異によって優先権を手に入れたカエデが動く
カエデが、攻撃を宣言する。
「魔法を発動します!超重合体を発動し、《ジャイアント戯画ゴーレム》とガイアピラーを融合!」
「大地の杭よ!大地の守護者の命により真なるゴーレムを呼び覚ませ!超重戯画ゴーレムをエクリプス召喚!」
エクリプスデッキより1体のゴーレムが呼び出される
カエデは、淡々と言う。
「動けなくすれば、
それで十分なので」
青年は、言葉を失う。
憧れた“めーぷるちゃん”ではない。
目の前にいるのは――
全国の舞台に立つ、"地属性使い 土谷カエデ"だった。
そしてゴーレムの一撃が振り下ろされる
青年は、手札を見る。
今の手札では、もう届かないと理解してしまった。
攻められない。
逃げられない。
選択肢が、ない。
「……参りました」
青年は、はっきりと負けを認めた。
カードを伏せる。
カエデは、深く一礼する。
「対戦、ありがとうございました」
その声に、私情はない。
――これが、全国。
そして。
カエデは、もう一度だけ思う。
(……ちょっと引いたけど)
(でも)
(本気で来てくれたから、
本気で潰せた)
地は、揺るがない。
カエデ、全国大会にて静かなる勝利をつかむ




