第26話「同じ部室、同じ決意」
地区大会決勝を二日後に控えた放課後。
部室には、いつもと変わらない光景があった。
机の上に広げられたデッキ。
スリーブを入れ替える音。
カードを一枚ずつ確認する指先。
ハルトたちは、それぞれの場所で黙々と準備を進めていた。
「……なんだか、静かだな」
レンジがそう呟くと、カエデが肩をすくめる。
「いつも通りでしょ。大会前って、だいたいこんな感じ」
誰も笑わなかったが、空気は重くない。
むしろ、落ち着いていた。
――そこへ、部長の犬山リアが部室に入ってくる。
「全員、いるな」
短くそう言って、部屋を見渡した。
「地区大会、ここまでよくやった」
それだけで、十分だった。
誰もが、この言葉の重みを理解している。
「決勝に残ったのは、うちの学校の二チームだ。
そして――全国に行けるのは、上位三チーム」
一瞬、空気が引き締まる。
「だからといって」
リアははっきりと言った。
「“負けてもいい”なんて、思うな」
その言葉に、誰も反論しなかった。
マックス先輩が、軽く笑って口を開く。
「まあ、勝つのは俺たちだけどな」
「はいはい、マックスはとりあえず落ち着いてね」
樹里先輩が笑って諭す
副部長のリリ先輩も私たちを見て宣言する。
「本気で来なさい。私たちも全力で相手するよ」
カエデが静かに頷く。
「全力で行きます。
その上で――勝つのは、私たちですから」
ハルトは、そのやり取りを聞きながら、手元のカードを見つめていた。
同じ学校。
同じ部室。
同じ時間を過ごしてきた仲間たち。
それでも――
勝利するチームは一つしかない。
(二日後か……)
ハルトはデッキをまとめ、深く息を吸った。
誰が相手でも関係ない。
勝つために、ここにいる。
それは、中学時代に無気力だった自分が、確かに変わり始めている――
そう確信できる瞬間だった。
二日後。
同じ部室から、2つのチームが決勝戦へ向かう。




