第20話 「大会当日(開会式)」
あのカードショップでの一日から、二週間が経った。
ハルトたちは練習やデッキ調整に励み、部員同士の連携も少しずつ深まっていた。
「さて、いよいよ大会当日だな」
レンジが拳を握りながらつぶやく。
カエデもにこやかに笑い、
「ハルト、準備は万端?」
と声をかける。
ハルトは自分の風属性デッキを手に取り、ゆっくりと頷いた。
「うん。全力でいこう」
会場に足を踏み入れると、すぐに緊張感が伝わってきた。
観客席には応援の旗やタオルが揺れ、各校のユニフォームを着た学生たちがざわめく。
試合用のテーブルが整然と並び、カードの光が反射して輝いている。
その光景だけで、胸が高鳴る。
司会者の声が響く。
「皆さま、本日はエクリプスレイン3対3チーム高校生大会にお越しいただき、誠にありがとうございます!」
開会式が始まり、まず県内有力校のチームが順に紹介される。
「西陽台高校、チーム『ウィンドブレイカーズ』!」
ハルト、カエデ、レンジの3人が一列に並び、観客席に軽く手を振る。
「いよいよだな……」
とハルトは小さく息を吐き、手のひらでデッキを握りしめる。
続いて紹介されるのは、時都高校、快晴高校、ピュアハート女子学園など。
各校の代表チームは3人ずつ、堂々とした立ち姿で観客に挨拶する。
「この学校、強そうだな……、それにあいつはこの間のショップ大会のやつ」
レンジが隣でつぶやき、ハルトも小さく頷いた。
白浜りり先輩率いるチーム「ネコアサルト」もそのひとつだ。
チームメンバーと軽く会釈を交わす。
「……さすが先輩」とハルトは思わず息を飲む。
デッキを握る手の動きからも、安定感と戦略眼の鋭さが伝わってくる。
ほかにも、時都高校「ヘデク」、快晴学園「トリコロール」、ピュアハート女子学園「ガールズトーク」など、県内屈指の実力校が順に紹介されていく。
観客席からは拍手と歓声が湧き、紹介されるたびに緊張感が増す。
ハルトはその光景を見ながら、自然と心の中で比較していた。
「俺たちはまだまだ……でも、頑張らなきゃ」
「こんな田舎の県でも各校から2チーム出ているところも結構あるな」
隣のレンジも同じようにカードを確認し、カエデは微笑みながら励ます視線を送ってくる。
紹介が続く中、会場の空気が少しずつ熱を帯びていく。
選手たちの表情や仕草から、それぞれのチームの特徴や戦術がほんの少し伝わる。
強気なチーム、冷静なチーム、チームワークを重視しているチーム……
ハルトは自分たちの立ち位置を意識しながら、少しずつ心を落ち着けた。
「全部で16チームか……すごい規模だな」
レンジが呟き、
カエデが
「これだけいると、観ているだけでも面白いね」
と笑う。
試合順や対戦相手はまだ発表されていないが、ハルトは胸の中で戦略をイメージし始める。
強豪校の紹介がひと段落すると、会場全体が静まり返る。
司会者が声を張る。
「以上で出場16チームの紹介を終わります!
いよいよ、最初の試合が開始されます!」
ハルトたちは深呼吸をひとつして、チームメンバーと視線を合わせた。
カエデの小さな笑顔に励まされ、レンジの拳の握り方に闘志を感じる。
ハルトは自分の風属性デッキをぎゅっと握り、心の中で決意を固めた。
「さあ、いくぞ」
3人はゆっくりとバトルテーブルに歩みを進める。
観客席からは期待のざわめきと応援の声が上がり、会場全体が大会モードに染まっていく。




