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扉の向こう~黒ねこについて行ったら異世界へ~  作者: 碧衣 奈美


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26.銀の大剣

 遼太郎だって、無理を言っているのは承知だ。しかし、闇の力を封じるにしろ消すにしろ「金と銀の力」が必要なのは変わらない。

 今の誠一郎は、金の力だけで闘っている。それだけでは、ルーゼットをどうこうするのは無理なのだ。

 レイリーンも、遼太郎の言わんとすることはわかる。

 しかし、デューロウのように何かを出すのは、今の自分では到底できない、ということもわかっていた。

 そのレイリーンが、はっと顔を上げる。

「コトネさん、手伝って」

「は?」

 レイリーンに腕を掴まれ、琴音は何を言われたかすぐには理解できなかった。

「あの、手伝うって……何を?」

「あたしも、鍵を出すための練習はしてきたの。だから、デューロウと同じことはできる。だけど、今は力が足りないから……コトネさんの力を貸して」

「え……あの、あたしは何も修行とかしてないし、力って……」

「ガレズ様の閉じた扉、簡単に開いたもの」

 鍵ではなく、ガレズの力で閉じられた地下倉庫の扉。

 琴音は、それをあっさりと開けてしまった。それも、倉庫へ入る時と、遼太郎達が駆け付けてくれて外へ出る時の二回だ。

 こちらの世界へ来てからの琴音は、確かに何かの能力が備わっている。

「あの時は、何も考えずに開けただけなんだけど」

「こと、イメージすればいいんだ。早くしないと、誠の方が先にばてるぞ」

 無駄とわかっても、誠一郎はルーゼットに斬りかかるのをやめない。突破口を開くための、時間稼ぎをしているのだ。

「コトネさんなら、できます」

 さっきよりは少し息が落ち着いてきたデューロウも、二人の言葉を後押しする。

 どちらも不安定な力。しかし、二人で一緒にする、ということで強くなれる。

 それは、力を使おうとする気持ちに大きな影響を及ぼすはずだ。

「わ、わかった。えっと……どうすればいいの?」

 琴音が尋ねると、レイリーンは琴音の右隣に立って手を握った。

「剣を思い浮かべて。それだけでいいわ」

 琴音は目を閉じ、剣を頭に思い描いた。

 剣か……。どんなのでもいいのかな。とにかく、敵を斬れればいいんだよね。

 レイリーンに握られた右手が、どんどん熱くなる。暖かい空気が、自分の周囲を包み込んでいるような気がした。

 ふいに左手が重くなり、琴音は目を開ける。

「え……うわぁ……」

 さっきまではなかった銀色の剣が、自分の手にある。デューロウが出した金の剣のように、刃も柄もきれいな銀色だ。

「すごい……」

 レイリーンが少しふらついて琴音によりかかったものの、その目は剣に釘付けになっている。デューロウも、同じように目を丸くしていた。

 守扉者達のほとんどは結界を張るのに必死でこちらを見ていないが、数人がふとこちらに視線を向け、やはり驚いている。

 遼太郎は、感心すると同時に少しあきれていた。

「こと……参考資料は何だ?」

「えっと、この前買ったゲームのアイテム、かな」

 琴音の手にある剣は、かなり大振りだった。刃の幅は十センチ以上あり、柄も含めた全体の長さは一メートルを軽く超えている。

 みんなが剣を見て驚いているのは、琴音とレイリーンの二人が出したから、と言うより、その大きさのせいだ。

 普通の生活をしていて、こんな大きな剣を目にする機会はそう多くないだろうから。

「定期テストが終わってから、何か一生懸命やってるのは知ってたけど。それにしたって、どうしてこんなバカでかいのを出すんだ」

「だって、大きいと攻撃力が高いし、モンスターをいーっぱい倒せるんだもん。特に全体攻撃の技なんて、すっごく気持ちいいんだから」

「その分、スピードが落ちるだろ」

「大丈夫よ。これを持つキャラは、力を重点的にレベルアップさせたもん。魔力は別のキャラで上げたから、素早さや身体能力アップの補助魔法をかけて」

「俺はロープレのキャラじゃないんだぞ。刃物を持つなんて、せいぜいカッターか包丁くらいだってのに」

 レイリーンにはさっぱりわからない会話をしながら、遼太郎は琴音の手から剣を取り上げた。

「剣道もやっておくべきだったかな」

 大きいのでそれなりの重さはあるが、想像していたよりは軽い。琴音が持てるくらいなのだから、持ち上げるのにも苦労する、とは思っていなかったが。

 それにしても、現実の物質ではないのに重さを感じるなんて不思議だ。

「うわっ」

 その声に、琴音達ははっとする。

 誠一郎がルーゼットの髪ではたかれ、飛ばされていた。触手のように動いていたルーゼットの髪の一部が、太いムチのようにしなって誠一郎に当たったのだ。

 守扉者達もがんばってくれてはいるが、完全に防御するまでには至らない。

「誠ちゃん!」

「大丈夫だっ」

 転がされてしまった誠一郎だが、すぐに跳ね起きた。

「あらあら、どうしたの? 断ち切るんじゃなかった?」

 ルーゼットは斬られてもすぐ元に戻り、誠一郎の方は攻撃を受ければ簡単に弾き飛ばされる。

 崩れかけていたルーゼットの顔は、再び美しさを取り戻しつつあった。その顔には、明らかに優越感が浮かんでいる。

 声も、最初に聞いた少女のような高さに戻りつつあった。

「ああ、斬ってやるさ。そうやって笑ってられるのも、今のうちだぜ」

「へぇ。そうやって強がっていられるのも今のうち、じゃないの?」

「そうでもない」

 誠一郎とルーゼットの間に、遼太郎が割って入る。

「剣が一本から二本になっただけじゃない。ずいぶん立派ね。だけど、剣がちょっと大きくなったくらいで、私に勝てると思ってるのかしら?」

 ルーゼットが鼻で笑う。

 誠一郎とのやりとりに気を取られていたため、ルーゼットはその剣が琴音の力を借りてレイリーンが出したものだとは知らない。

 力が不安定なレイリーンに出せる、とも思っていなかった。

「遼兄、そんな剣、どっから持って来たんだよ」

「説明、いるか?」

「……いらない」

 あれこれ聞かなくても、この状況で遼太郎が持って来たものが単なる剣であるはずがない。

 どんなやりとりがあったかはともかく。その剣はレイリーンの力が具現化したものだ、ということを、誠一郎はすぐに悟った。

 遅ればせながら、ルーゼットもそのことに気付く。

「どうやって……。銀の王女に、それだけの力は残っていないはず」

 そういうふうに仕向けたはず……だったのに。

「説明してやる義理はないけど、少しだけ教えてやるよ。ずっと扉の向こうにいたから、情報不足だろうし。お前をどうこうできる力を持つのは、あの二人だけじゃなかったってことだ」

「遼兄、こんな奴に教えてやるなんて、親切すぎだぜ」

 ルーゼットは、遼太郎達がよその世界の人間だということはわかっていた。

 しかし、琴音にレイリーンやデューロウのような力があることまでは、知らない。

「女性相手ってのは気が引けるけど、お前の元になった人形がたまたま女の子ってだけで、そもそも人間ですらないからな。そう思ったら、気も楽だ」

 遼太郎が、ルーゼットを袈裟切りする。誠一郎より身体の大きい遼太郎が大きな剣を振ると、剣圧だけでもダメージを食らいそうだ。

 斬られたルーゼットは、左肩から右脇にかけてその身体を真っ二つにされた。

 しかし、その顔にはまだ余裕がある。笑っているのだ。

「なぁんだ。やっぱり、剣の色が変わっただけね。お前達に私を斬るなど、できるはずがない」

「まったく、しつこいにも程があるな」

 遼太郎は眉をひそめた。

 ゆっくりと、だが確実に、ルーゼットの身体は復元されてゆく。これでは、誠一郎と二人して「同じことの繰り返し」をしているだけだ。

 銀の剣が現れたことで、現状が打破できると思ったのだが……剣では駄目だったのだろうか。

「剣を……重ねて」

 デューロウが、かすれた声を出した。しかし、それでは二人の耳に届かない。

「え、何て? デューロウ、どうすればいいって?」

「二人の持つ剣を重ねて斬れば、もしかすれば……」

 デューロウは今まで、封じるための修行しかしていない。剣を出すなんて、今の今まで思い付かなかったのだ。どうすれば闇に対して効果があるか、なんて知るはずもない。

 しかし、金と銀の二つの力が必要なのであれば、それぞれが別々に攻撃しても意味がないだろう。

 ルーゼットが言うように、剣が一本から二本になっただけだ。レイリーンが剣を出す前の状態と、状況は変わっていないようなもの。

 だが、その力を重ねれば。あるいは、本来の力が発揮されるかも知れない。

「お兄ちゃん、誠ちゃん! 剣を重ねて」

 どういうことか理解しきれないまま、それでも琴音は二人に向かって叫ぶ。

「剣を重ねるぅ? 遼兄かオレが二本一緒に持てってことか?」

「二刀流にしろってこと……じゃないだろうな」

 言われても、意味がわかりかねるので二人はすぐに動けない。その間にも、ルーゼットの身体は戻ってゆく。

「無駄よ、無駄。お前達に、私は斬れない。あきらめて、その剣でお互いを斬り合えば?」

「斬り合う?」

 ルーゼットは人間達が必死になってこの状況を打破しようとし、もがいているのをあざ笑うつもりだった。

 しかし、その言葉に遼太郎がひらめく。

「誠、剣を構えろ」

「お、おう」

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