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放課後の日常

時間は放課後へと移る。

教室には、掃除の音や友人たちの笑い声がまだわずかに残っていた。

勇人は自分の席で、机に突っ伏していた。体を起こすのも面倒なほど、ぐったりしている。


「古文、どうだったよ?」


前から聞こえた声に顔を上げると、翔平がこちらを覗き込んでいた。


「なんとか全部埋めたよ。あってるかは知らんけど」

「お、やるじゃん」

「お前のおかげだわ。ほんと感謝」


翔平は笑いながら、勇人の前の席の椅子に腰かける。背もたれにだらりともたれながら、足を軽く揺らしていた。


「で、このあとなんか用事ある?」

「いや、特にないけど」


勇人がそう答えると、翔平の顔にぱっと笑顔が広がる。八重歯がちらりと見える。


「じゃあさ、駅前にできたクレープ屋、行こうぜ。一緒に」

「は? 女子かよ」


勇人が呆れたように返すと、教科書を抱えていた美咲が横から顔をのぞかせた。


「クレープ? 新しくできたって噂の?」


夕陽を背にした美咲が、少し驚いたようにこちらを見る。


「お、噂に敏感だな。そう、それ!」


翔平は嬉しそうに指を鳴らす。


「ちょうど俺と勇人で偵察行こうと思ってたんだ。……美咲も一緒にどう?」

「え、私?」


美咲は一瞬戸惑ったように目を瞬かせる。


「甘いもん嫌いじゃないだろ? ほら、三人で行けば並ぶのも退屈しないし」


翔平が畳みかけると、美咲は小さく笑って肩をすくめた。


「まあ、少しならいいけど」

「決まり!」


翔平は親指を立て、勇人の肩を叩いた。


「おい、俺まだ行くとは――」


勇人が言いかけた時にはもう、翔平は立ち上がってカバンを背負っていた。


「まあ、たまにはいいか」


勇人がそう言って椅子から立ち上がると、翔平の口元がニヤリと歪む。


「よし決まり。……で、当然お前のおごりな」

「は?」

「だって俺、今日お前に古文の範囲教えてやったろ? 命の恩人よ?」

「それくらいで恩人名乗るな」

「いやいや、あれがなかったらお前、“白紙提出”だった可能性あるからな。ワンチャン留年まであった」

「ねぇよ」


翔平は肩をすくめ、立ち上がって勇人の肩を軽く叩いた。


「というわけで、財布の中身、よろしく頼むわ。俺はバナナチョコ生クリーム」

「もう決めてんのかよ……」


勇人は呆れながらも、どこか楽しげな翔平のテンションにつられて、小さく笑ってしまう。

気がつけば、肩の力が少し抜けていた。二人のやり取りを見て美咲は楽しんでいるようだった。


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