『第一章』勇気を振り絞った結果が必ず上手くいくとは限らない。
急いで指定された教室に向かうと、扉の前に委員らしき人達が立っていた。
「入る前にこちらの用紙を受け取ってくださ~い!席は自由になります!」
ハキハキと声を張り上げる彼らは自信に満ち溢れた顔をしていた。想像していた太陽集団通りの人達が居て少し背筋が伸びた。大丈夫かな。俺今日死んじゃうのかな。狙われたら石上を盾にして逃げようそうしよう。というか狙われる前に早く教室に入ってしまおう。恐怖で顔が強張りながら教室の中を見回すと、他の委員だろうか。教壇付近で数名の男女生徒が様々な顔をしながら団欒団欒をしていた。ある人は本日の原稿らしき紙をぶつぶつと読み上げ、ある人は緊張で必死に人の字を書いては飲み書いては飲みを繰り返している。そしてまたある人は椅子に座ってのんびりとご飯を食べていた。なんだあれ.....。
「藤沢早く入ろうぜ。結構な人来てるから席埋まっちまうぞ」
そう言うと、石上は教壇真正面の空いている席に歩き出した。おいおい、あいつ死んだよ。傍から見て明らかにヤバい集団の目の前に陣取るとか勇者でもやらないわ。もしかしてあいつが勇者なのか。確かに今までの行いからして勇者なのかもしれない。そうか、あいつは勇者だったのか.....。そう無意味な思考を巡らせていると、石上は席に着いたようでこちらを手招きしている。俺は勇者の頼みならと素早く歩き、隣の席に着いた。