『第一章』勇気を振り絞った結果が必ず上手くいくとは限らない。
「えー、それでは今回はここまで。次回は小テストをやるので準備をしてきてください。」
いつの間にか授業が終わったみたいだ。開始10分程の記憶はあり、ノートも最初の部分は蛇のような字と線でしっかりとメモが取られている。しかし、黒板と見比べてみるとメモの数倍の文量が様々な色で事細かに書かれていた。
.......どうやらまた眠ってしまったようだ。
俺、藤沢裕也はほぼ毎授業寝ている。家では深夜になるまでゲームをし、区切りが良くなったら即刻寝る。高校生にもなって、こんな生活を繰り返している自分が少し情けないが、かと言って改善は全くしない。中学の頃は口酸っぱく先生達が注意をしてくれたが、今では面倒見のいい先生しか言わなくなった。流石にそろそろ直そうかな。と心の底から思っていない事を考えていると、ふと時計が目に入り次は昼休みである事を思い出した。そういえば周りが机動かしてるな......
「おい、藤沢!早く起きて飯食べないと、昼の集まりに行けないぞ」
陽気に話しかけてくる東京スカイツリーみたいにでかいこいつは石上連太郎。中学からの友達で、プライベートで遊びに行ったりする程ではないが、学校では一日に何度か話す仲だ。驚くほど優しい。二年程しか付き合いはないが、悪い噂は一度も聞いたことがない。いい奴。
「あー、そう言えばお昼だっけ?時間ないからちょっとだけ食べたら行くわ。石上一緒に行こうぜ」
「おっけー!俺はもう早弁で済ませたから早くしろよ!待ってるから!」
「はいはい。今日の集まりって確か文化祭実行委員の部署決めするんだっけ?」
「そうそう、部署の説明受けて志望書いて提出するって聞いた」
「ふ~ん....。」
文化祭実行委員。主に文化祭でしか動かない委員で、超真面目な眼鏡集団かTHE・青春真っただ中の思い出作りに奔走している太陽集団のどっちかの印象しかない。高校生になった昂揚感で思い切ってなったはいいものの、まだ委員の説明という説明は入学から一カ月経ってもされていなかったのだ。ただ、本日教室に招集用紙が届き、俺と石上と他二名の女子は昼休み直ぐの時間に呼び出された。俺はお弁当を必死に掻き込み速足で指定された教室へ向かった。