第二話 ギルドの扉
二話目です。またまた短いですが、見ていただけると幸いです。
翔は、見知らぬ世界に転生してから数日が経過していた。最初はその異常な状況に呆然とするばかりだったが、少しずつ周囲の世界に慣れ始めていた。ギルドという場所に行くことに決めたものの、そこが一体どんな場所なのか、どんな人々がいるのか、まだ見当もつかない。
男に案内されて歩くうちに、次第に周囲の景色が変わってきた。初めて見た異世界の街並みは、どこか中世のヨーロッパを思わせるような古風な建物が立ち並んでおり、石畳の道を歩く足音が響く。道端では、冒険者らしき人物たちが装備を整えていたり、馬車を引いている姿が見受けられる。
「ほら、あれだ。」
男が指差した先には、大きな建物が見えた。巨大な木の扉が開いており、出入りする人々の姿が見える。その建物の上には、見慣れない文字で「ギルド」と書かれている。翔はその文字を一瞬見て、驚いた。
「この文字、…読める?」
転生してから何もできなかった自分が、この文字だけはなぜか理解できる。言葉として、意味として、頭の中にすっと入ってきた。
「…ここがギルドか。」
翔はその建物を見上げ、少し緊張した面持ちで歩みを進めた。男に促されるまま、ギルドの中へと足を踏み入れる。
「中はこんな感じだ。」
男が扉を開けると、広々とした室内が広がっていた。中には、冒険者たちが集まり、情報を交換したり、仕事の依頼を受けたりしているようだ。人々のざわめきと、時折響く笑い声が賑やかで、なんだか心地よい雰囲気を感じる。
「こちらに来て、新人登録をしてもらおう。」
男に案内され、翔はギルドの掲示板の近くに座っている受付の女性に向かって歩いた。女性は、翔の姿を見るとニッコリと微笑みながら迎えてくれる。
「新人の登録ですね? 名前と、冒険者としての希望を聞かせてください。」
「佐藤翔です。」
「見ない名前ね。…まあ、いいわ。どうやら新しく転生した人みたいだしね。」
「えっと、冒険者って、何をするんですか?」
翔は少し戸惑いながらも、素直に尋ねた。すると女性は、親切に説明をしてくれた。
「冒険者は、この世界での多くの仕事をこなす職業です。例えば、魔物を退治したり、貴族の依頼を受けて護衛をしたり、様々な仕事があります。もちろん、報酬もそれに応じて支払われますよ。」
「なるほど…」
翔はしばらく考え込み、ようやく口を開いた。
「じゃあ、僕もその、魔物退治とかやりたいです。」
「勇気があるわね。でも、いきなり魔物退治をするのは危険よ。まずは簡単な依頼から始めた方がいいわ。」
女性の言葉に、翔は少し肩を落としながらも、心の中で決意を新たにした。まずはできる範囲で少しずつ経験を積んでいく。それが最初の一歩だ。
「では、簡単な仕事から始めましょうか。」
女性が笑顔で言うと、翔の登録が完了した。依頼を受けるための手続きが終わると、女性は翔に一枚の紙を手渡した。それには、「雑草の駆除」という依頼内容が記されている。
「これが初めての依頼よ。近くの森で増えすぎた雑草を取り除いてきて。」
翔はその依頼を受け取って少し戸惑った。「雑草の駆除」とは、どう考えても冒険者の仕事としては簡単すぎるように思えた。しかし、ここで無理をしても仕方がない。まずはこの小さな一歩を踏み出すことが重要だ。
「わかりました。行ってきます。」
翔はギルドを後にし、指定された森に向かって歩き出した。道中で、数人の冒険者たちとすれ違ったが、彼らは翔に目もくれず、何か急いでいる様子だった。そんな中で、翔はまだ何もわからない自分を感じつつも、歩みを進めた。
「雑草の駆除か…どんな仕事でも、まずは始めなきゃ。」
少し不安な気持ちもあったが、同時に胸の中に湧き上がる期待感を感じていた。これから何が待ち受けているのかはわからない。だが、この世界で自分がどんな風に成長していくのかを、少しずつ知っていくことができるのだ。
翔の新たな冒険の第一歩が、今、始まった。
進みが遅いかもしれません。次からペースをちょいアップで行きます