第5話:別れの時、成長の証
数ヶ月が過ぎ、リリィはカウンターの技術を着実に習得し、魔物を相手に何度か成功を収めるようになった。その成長は目覚ましく、レオンもその努力を誇りに思っていた。だが、彼の心の中では、少しずつ別れの予感が忍び寄っていた。
「そろそろ、あの二人と分かれる時が来るんじゃないか?」レオンは心の中でそんなことを考えていた。
ある日のこと、リリィとアリスが共に集まって話し込んでいた。レオンはそれをちらりと見やりながら、自分の役割が終わりに近づいていることを感じていた。しばらくすると、二人はレオンのところにやってきた。
「レオン、話があるんだけど……」リリィが少し躊躇いながらも、目を合わせて言った。
「どうした?」レオンは少し不安そうな顔をして尋ねる。
「実は……アリスと私、これからそれぞれ別の道を行くことになったの。」リリィの言葉に、レオンは驚きの表情を浮かべた。
「別々に? どうして?」彼は思わず言葉を詰まらせる。
アリスがその後を続けた。「私たちには、それぞれの使命があるから。私は王国に帰って、王女の護衛としての役割を果たさないといけないし、リリィも騎士団の仕事がある。」
「そうか……」レオンは短く返し、しばらく黙ってしまう。
リリィは少し悲しそうに、そして少し照れくさそうに言った。「私たち、これからはそれぞれの道を行くことになるけど、でも……」
「でも?」レオンは彼女の言葉を促す。
「でも、別々の道を行っても、また会うことができるって信じてる。私たち、繋がってるから。」リリィは少し力強く言った。
アリスも頷く。「どこかでまた、必ず会おうな。」
レオンは静かに頷いたが、その胸には不安と寂しさが込み上げてきた。彼は黙って顔を上げ、空を見つめた。日が沈みかけ、空が橙色に染まり始める。
「分かった。お前たちの決断だし、応援するよ。」レオンはやや苦笑しながら答えた。
その後、リリィとアリスはそれぞれの目的地に向けて出発することとなった。二人の姿が遠ざかる中、レオンは一人静かに立ち尽くしていた。
「また……追放か。」レオンは自嘲気味に呟いた。
彼はこれまでに何度も仲間と別れを繰り返してきた。だが、今度の別れはいつもとは違った。リリィやアリスとは、共に戦い、共に成長した時間が長かっただけに、その思いも深い。
やがて、レオンは決心を固め、西部王国へ向かうことにした。彼が進む先には、新たな挑戦と出会いが待っている。だが、しばらくはひとりぼっちの旅路だ。
「寂しいけど……これも俺の旅だ。」レオンは前を向き、足を一歩踏み出した。
夕暮れの空が彼の背を照らし、その姿はゆっくりと西へと向かって歩んでいった。