第4話:ボロボロでも輝く一撃――リリィの覚醒
第4話:ボロボロでも輝く一撃――リリィの覚醒
その晩、リリィはキャンプの静けさに耐えられなかった。レオンの教えを受け、数日が経過したが、思うようにカウンターを体得できない自分に焦りを感じていた。夜が更けるほど、その思いが強くなり、ついには我慢できなくなった。
「一人で練習したい……」
心の中でそんな決意を固めたリリィは、寝静まったキャンプをこっそりと抜け出すことにした。女騎士であるアリスもすぐに気づくことはなかったが、リリィが離れたことに気づいた時には、すでに遅かった。
「くそ……また、無茶をしてるのか。」レオンは夜風に吹かれながら、じっとリリィの姿を追うことなく、心の中でつぶやいた。だが、それでも彼は止めることなく、リリィの選択を信じていた。
リリィが向かったのは、荒れ地の奥に広がる森林の中だった。そこには魔物も多く、夜の闇に隠れるものが多い。だが、彼女は恐れず、心の中でレオンの教えを繰り返しながら、手にした剣を握りしめていた。
「波紋の音を聞く……無防備の構えを取って、相手の力を自分の力に変える……」
心を落ち着けようとしたリリィだが、次の瞬間、背後から魔物の気配を感じ取った。すぐに振り返ると、そこに現れたのは恐ろしい猛獣型の魔物だった。
「くっ……!」
リリィは冷静さを欠き、無意識に攻撃しようとしてしまう。だが、やはり攻撃力は低く、魔物に対して傷一つ与えることができなかった。反撃を受け、すぐに地面に倒れ込んでしまう。
その時、リリィの心に浮かんだのは、レオンの言葉だった。
「攻撃しない、相手の攻撃を受け流す。そして、一撃で仕留める。それがカウンターだ。」
もう一度立ち上がり、リリィは必死で魔物に向き直る。傷だらけになりながらも、剣を鞘に収めるように構えを取った。その無防備な姿勢が、逆に魔物にとっての「隙」を生み出す。
魔物が大きな爪を振りかざして襲いかかる瞬間、リリィはその波紋を感じ取った。空気の変化、攻撃の重さ、それらを全身で感じ取った。
「いける……!」
そして、リリィは咄嗟に体をひねり、魔物の攻撃を受け流し、無防備に振りかざしてきた爪をかわした瞬間、反撃の一撃が生まれた。
「カウンター!」
その瞬間、リリィの剣が魔物の体に深く突き刺さった。まるで時間が止まったかのように、彼女の周囲の風景が静まり返る。その一撃が魔物に致命的なダメージを与え、ついには魔物は倒れ込んで動かなくなった。
リリィは倒れた魔物を見つめながら、息を荒げて立ち尽くしていた。
「できた……やった……!」
その言葉を口にした瞬間、肩の力が抜け、リリィは地面に膝をついてしまう。だが、その顔には達成感と安堵の表情が広がっていた。
その頃、アリスはリリィの姿が消えてからしばらくして、ようやく彼女を追いかけていた。彼女の心配していた通り、リリィはすでに魔物に襲われていたのだ。
アリスはリリィの姿を見つけた瞬間、すぐに駆け寄り、必死で彼女の傷を確認する。
「リリィ、大丈夫!? こんなところで……!」
だが、リリィはその言葉に応えることなく、笑顔を浮かべてアリスを見上げる。
「アリス……見て。カウンター、成功したんだ。」
その言葉にアリスは一瞬驚き、そして笑顔を浮かべる。
「すごい、リリィ! 本当に成功したんだ!」
その時、レオンもリリィの姿を見つけ、駆け寄ってきた。彼はリリィを見て、目を細めながらその肩を支える。
「よくやったな、リリィ。お前は本当にやってのけた。」
「レオン……私は……」
リリィはボロボロになった身体を支えられながらも、涙を浮かべていた。その涙は、辛い修行と痛み、そして自身の成長を噛み締めた証だった。
「お前があの魔物を倒したのは、カウンターをしっかりと身につけた証拠だ。お前にはそれを成し遂げる力があった。」
レオンは優しく彼女を抱きしめ、アリスもその背を叩きながら励ましの言葉をかけた。
「お前、よく頑張ったな。」
リリィはボロボロの体で二人に抱きしめられながら、感動の涙を流した。それは、失敗と苦悩を乗り越えた先に待っていた、勝利の涙だった。
そして、彼女は心の中で誓った。
これからも、もっと強くなってみせる。そして、みんなを守れるようになるまで。