第2話:修行中の姫騎士と側近の女騎士、そして魔王軍の襲撃
レオンが王国から追放された翌日、彼は街の外れで一人、何をするわけでもなくぼんやりと歩いていた。考えることと言えば、カウンターの使い方をもう少し巧くできるかもしれないということくらい。だが、どうすれば攻撃に変化を加えられるのか、今のところ答えは見つからない。
そんな時、ふと視界の隅に一筋の煙が立ち上るのが見えた。
「うーん、あそこ、何かあるかな?」
レオンは好奇心に駆られて、その煙の方向に足を運ぶことにした。歩きながら煙の原因を考えるが、どうも魔物の気配はしない。そんな中、急に茂みから声が聞こえてきた。
「くっ、まだ……まだだ!」
その声は、少し高く、威厳を感じる女性のものだった。声の主が必死に戦っているようだが、相手はかなり強力な様子が伝わってくる。
「姫様、無理です! 引きましょう!」
もう一人、冷静な女性の声が響いた。その声には強い決意と共に、姫騎士を守ろうという想いが込められている。
レオンは急いで声の方に向かって走り出した。
――そして、茂みを抜けた先には、絶望的な光景が広がっていた。姫騎士とその側近の女騎士が、圧倒的に強い魔物たちに囲まれていた。
姫騎士は白い鎧に身を包み、腰に剣を携えて立っている。だが、すでに疲れ切っている様子で、足元がふらついている。側近の女騎士もまた、必死に盾で姫騎士を守ろうとしているが、傷だらけになっていた。
「このままだと、まずい……」
レオンは自分のスキル「カウンター」を考えながら、二人を助ける方法を急いで模索する。だが、攻撃力がない自分がどう動くべきかは思いつかない。
その時、魔王軍の幹部と思しき大きな魔物が一歩踏み出し、姫騎士に向かって力強く剣を振り下ろす。
「姫様、避けて!」
側近の女騎士が叫ぶと同時に、姫騎士はその剣を受け止めようとしたが、力尽きて膝をついてしまった。
「くっ……!」
だが、その瞬間、レオンは迷わず飛び出した。魔王軍の幹部の攻撃が姫騎士に迫る中、レオンは彼女の前に立ち、カウンターを発動させる。
**『カウンター!』**
レオンの体が魔物の剣を受けると、次の瞬間、ものすごい反動が起こり、魔物の剣が彼の体をかすめる。だが、驚くべきことに、魔物はその攻撃を受けた瞬間、膝をつき、口から血を吐きながら倒れ込んだ。
「な、なんだこれ……!?」
レオンは驚きと共にその場に立ち尽くした。魔物が倒れる瞬間、すべてが時間が止まったかのように感じた。まさか、自分のカウンターがこんなに強力だとは思ってもみなかった。
「……え?」
姫騎士と側近の女騎士は、目を丸くしてその光景を見ていた。彼女たちが必死に戦っている中、突然現れたレオンが、あっという間に魔物を倒してしまったのだ。
「こ、これがカウンター……?」
姫騎士が呆然と呟く。側近の女騎士もまた、その様子を見て目を見開いた。
「あなた、一体……?」
レオンは少し照れくさそうに頭をかきながら答えた。
「えっと、僕、カウンターしかできないんですけど、これ、やりすぎちゃったかな?」
「……やりすぎどころか、あんな魔物を一撃で倒すなんて!」
側近の女騎士が驚きの声を上げた。姫騎士もその目に大きな感謝の意を込めて言葉を続ける。
「ありがとうございます! あなたのおかげで助かりました!」
「いやいや、僕なんてまだまだ……」
レオンはどこか照れくさい表情で頭をかく。そのやり取りを見て、側近の女騎士がふとレオンに近づき、冷静に言った。
「……それにしても、あなた、どこから来た方ですか?」
レオンは一瞬言葉に詰まるが、答えた。
「えっと、ちょっと前に王国を追放されて、今はさまよっているところです。」
「王国……追放?」
姫騎士が驚きの表情を浮かべた。
「それでは、あなたも何か事情があって追放されたのでしょうか?」
レオンはしばらく黙ってから、ぼそっと言った。
「カウンターだけで強くなっちゃったから、ちょっと嫌われちゃったみたいです。」
その言葉に、姫騎士と側近の女騎士は顔を見合わせ、思わず笑ってしまう。
「それで追放されるなんて、どう考えてもおかしいわね。」
側近の女騎士が苦笑しながら言うと、姫騎士も頷きながら微笑んだ。
「でも、そんなあなたがいてくれたおかげで、私たちは助かったんです。もしよかったら、私たちと一緒に行動しませんか?」
「え? 一緒に?」
レオンは驚きつつも、姫騎士の真摯な提案に少し考え込みながら答える。
「うーん、でも僕、カウンターしかできないし、もしかして足手まといになるかもしれませんよ?」
「そんなことはありません。あなたのカウンターがあれば、私たちは何度でも立ち上がれる気がします。」
姫騎士の言葉に、レオンは思わず目を見開いた。
「じゃあ、よろしくお願いします!」
レオンは少し照れくさいが、姫騎士と側近の女騎士に微笑みかけた。こうして、レオンの新たな冒険が始まったのだった。