後編
読んで戴けたら嬉しいてすう❗*。・+(人*´∀`)+・。*
オレと圭織さんはラブホの一室、ベッドの上で向かい合って正座していた。
この状況でオレは明らかに圭織さんに負けていた。
圭織さんはこうゆう状況に慣れているのか、余裕さえ感じる。
オレはと言えばカチンコチンに緊張して、話す余裕すら無かった。
困ったように、それでも笑顔で圭織さんは言った。
「そんな緊張されたら、こっちまで恥ずかしくなるわあ」
オレがそれでももじもじしていると、圭織さんは肩で呼吸を吐き出すとオレに近寄って怒ったように眉間に皺を寄せオレのネクタイを外し始めた。
「こんなんじゃ埒が開かないよ」
オレは慌ててネクタイをほどこうとする圭織さんの手首を掴んだ。
「ま、待って下さい!
オレの話を聞いて下さい! 」
圭織さんは再び正座してオレと向かい合ってくれた。
「話ってなんやのん? 」
オレは頭の中で消え入りそうな言葉を掻き集めて慎重に話し始めた。
「オレはアンタと対等にやりたい」
圭織さんは問うように小首を傾げてオレの言葉を待ってくれた。
「今回の仕事を無事終わらせたら、こんなオレも一端の男として組に認めて貰える、銀バッチは確定だ
オレはそうなってから自分の金でアンタを指名する
対等の男と女って立場でアンタを抱きたいんだ
アンタにガチで惚れちまったから······················」
オレは精根籠めて圭織さんの目を見詰めた。
圭織さんはしばらく黙ったままオレを見詰め、そしてフッと息を漏らし笑顔になつて、オレの手を握り締め言った。
「ほんまにバカが付くくらい、礼二はんは生真面目な男やね
解った····························
礼二はんがそうまで言うならウチも待ってる
きっと生きて帰ってウチの太客になってね
そうしたら、ウチは礼二はんの女にして貰うから」
オレは必ず生きて仕事を終わらせる。
そう肝に命じて、圭織さんの手を握り返した。
「必ず一端の男になって帰って来るよ」
竜二兄貴に逢ったのは去年の暑い夏の事だった。
新宿の路地裏、華やかな舞台裏の無法地帯で住む家も無くごろつきをしていたオレは、言われも無い事で五人の男連中に絡まれ、五対一のケンカをおっぱじめた。
こんなのはここに居たら、しょっちゅうの事だったけど、その時のオレは五人も相手にするのは初めての事で、見事袋叩きに遭った。
蹲り蹴られている間、オレは蹴って来る連中の事より、自分の弱さを呪っていた。
ぼこぼこにされてるそんなオレを助けてくれたのが竜二兄貴だった。
一瞬で相手をのしてしまった兄貴の腕っぷしの強さに、オレはその一瞬で竜二兄貴に惚れ込んでいた。
竜二兄貴には勝てないと悟った連中は、それこそ文字通り尻尾を巻いて逃げて行く。
竜二兄貴はすたこら逃げて行く連中をちょっとの間見送ってから直ぐにオレに声を掛けてくれた。
「大丈夫かい
ったく、最近の餓鬼どもはケンカの礼儀も知らねえ
お前も無鉄砲だぜ
五人相手にケンカ売るたあ」
そう言いながらオレの肩に手を掛けてくれた。
オレはそんな竜二兄貴を見ていると、自分が情けないやら、助けてくれた竜二兄貴の有難味やらで、自然と気が緩んで泣き出していた。
気付けば、オレは「強くなりてえ」と餓鬼みたいに繰り返しながら竜二兄貴の胸にすがりついて号泣していて、そんなオレをどうしたものかと、きっと竜二兄貴は困っていたに違いない。
けど、その時のオレは溢れだす涙をどうする事もできなくて、しばらくしてオレが落ち着きを取り戻す頃、オレの肩を掴んで竜二兄貴は言った。
「お前の無鉄砲さには呆れた
そんなんじゃ長生きできねえぜ
どうだい、俺と来るかい」
オレは強くなりたい一心で泣きながら竜二兄貴の手を握り額に押し付け言った。
「頼んます、オレは強くなりてえ」
それが竜二兄貴とオレの馴れ初めだった。
そんな竜二兄貴は今、オレに強い眼光を放ちオレを見据えて言った。
「礼二、今夜里中弘二は動き出す
今後の國龍会の命運は、おめえの今夜の働き次第だ
しっかりと頼んだぜ」
竜二兄貴はそう言うと札束の詰まった茶封筒と一緒に油紙でくるんだ38口径の拳銃を後部座席に座るオレに渡した。
オレは意気揚々と答える。
「うっす、必ず沈めてやるっすよ! 」
竜二兄貴が運転する黒塗りフルスモークのベンツから降り立ったオレは成りを潜め里中弘二が動き出すのを待った。
時刻は24時。
オレは酷く興奮して、身体が震えるのを止める事ができなかった。
成功すれば銀バッチ。
グラサンを掛けオレは気合い充分で、愛人が経営するクラブから出て来た新宿國龍会六代目会長里中弘二の一団の前に姿を現し真正面から銃口を向けた。
「新宿國龍会会長里中弘二さんですね
アナタに恨みは無いが、死んで貰います! 」
オレはそう言って間髪入れず38口径のトリガーを連射した。
銃弾は6発。
面白いように総ての弾が里中弘二の身体を貫いた。
銃弾が当たる度に里中弘二は身体を踊らせ、地面に崩れ落ちた。
「会長!! 」
組員たちがあわてふためいて、里中弘二を囲った。
これじゃあ生きていないだろうと思った瞬間、里中弘二に取り巻くボディーガードの組員たちが前に出て銃口をオレに向けた。
「はは、やっちまったな·····················」
オレが呟くと組員たちの銃口が火を噴いた。
まるで映画かなんかみたいに銃弾がゆっくりと近付いて来る。
オレに引力でもあるかの様に弾はオレの身体に吸い込まれ、オレは弾が当たる度に衝撃で後退りしなければ立っていられなかった。
急に膝の力が抜けて倒れ行くオレの内ポケットから茶封筒が零れ銃弾が当たると中に入っていた札束が弾かれ、バラバラに千切れ空を舞った。
ほんの一瞬の出来事の筈なのに総てがスローモーションで、死に逝く者は皆、こんな風なのだろうかと思った。
お札の雪が降る························。
柔らかな感触がして、圭織さんに抱かれている様な気がした。
こんな処に圭織さんが居る訳無いのに··················。
「圭織さん··········アンタの馴染みに·····なりた·················か·····················」
薄れ行く意識の中、暖かな光に包まれ圭織さんが無邪気に笑っていた·····················。
fin
読んで戴き有り難うございました❗❗ヾ(≧∀≦*)ノ〃
久々にこんなに楽しく書かせて戴きました。
いつもは産みの苦しみを嫌と言うほど味わうんですよお。(TДT)
枝垂れ桜のお蘭様、楽しい企画を書かせて戴き有り難うございました❗❗*.゜+ヽ(○・▽・○)ノ゛ +.゜*