第105話「二度目のお見舞い」
今話から、閑章の2つ目に入ります。
よろしくお願いします。
守里: じゃあね。
美月: バイバイ!!
珠美: はい!!さようなら!!
新里: お疲れ様です!!
梅澤: じゃ。
学校を出た守里と美月は、梅澤達と別れ、家への道を歩く。
美月: 珠美ちゃんと連絡先交換できた〜
守里: 笑、そんなに嬉しい?
美月: そりゃあ、だって、珠美ちゃんは初めて仲良くなった後輩なんだもん!
守里: そっか笑
美月: ってか、若様部隊なのに、若月先輩抜きでグループ作るのは、変だよね笑
守里: なら、今度の風紀委員の仕事の時に、頼んでみたら?
美月: 次は金曜日か。
守里: そうだよ。
美月: よし、やってみる。もし成功したら、初めて先輩と連絡先を交換することになるな〜
守里: この機会に、葵波さんと愛衣さんのも貰っとけば?
美月: 分かった!!
守里: 笑
美月: どうしたの?
守里: いや、なんか美月の交友関係が広がってるのを見ると、嬉しくて笑
美月: 笑、守里のおかげだよ!
守里: そう?笑。でも1番は、美月の頑張りのおかげだって。
美月: 毎回このやり取りになるね笑
守里: 確かに笑
美月: あ〜今日の晩ご飯何かな〜
守里: 昨日がミートスパゲティだったから…
美月: カルボナーラ?
守里: さすがに麺類連続はないんじゃない?
美月: なら、オムライス?
守里: 一昨日食べたじゃん笑
美月: そっか笑、じゃあ…
パチ
守里: …
美月: ハンバーグ!
守里: うん。
美月: あれ?なんか反応薄いな〜笑。守里はハンバーグ大好きでしょ?
守里: うん。
美月: ?
守里: 病院…病院に行かないと。
美月: 病院?っ!!(まさか、守里。)
守里が立ち止まり、伊衛能病院に向かおうとし始める。
美月: ちょっ、ちょっと待って!守里!!
守里: なに?
美月: 私も行く!
守里: …分かった。
美月: (守里の家族として、ちゃんと向き合っていかないと…よし、まずは、お姉ちゃん達に連絡しよう。)
そうして、美月は結真に連絡を送りながら、守里の後について行き、伊衛能病院へ。
◈◈◈
伊衛能病院
看護師: 森崎君、こんにちは。
守里: こんにちは。
看護師: 今回も、御家族の方がいらしたんですね。
守里: はい。
美月: こんにちは。
看護師: こんにちは。では、こちらをどうぞ。
守里: どうも。
美月: ありがとうございます。
前回と同じく、エレベーター付近にいる看護師から、許可証を受け取る2人。
看護師: こちらにお乗り下さい。
守里: 美月、行くよ。
美月: うん。
3人はエレベーターに乗り、地下に向かう。
美月は、守里の隣でエレベーターの床を見つめる。
なんか、緊張する。
この看護師さんの雰囲気も異様だし、今の守里も、まだよく分からないし。
やっぱり、1人で来るのは…
いや、私は守里の家族なんだ。
心を強く持とう!!
チーン
エレベーターの扉が開く。
看護師: どうぞ。
守里: ありがとうございます。
美月: ありがとうございます…
守里は看護師にお礼を言うと、実の姉である優茉の病室に向かって、歩き始め、美月もそれについて行く。
改めて見ると、やっぱりここの病院おかしいよね…
看護師さんも全然見当たらないし、何より人がいなさすぎる。
普通ならっていうか、ここの上にある入院棟は、結構、看護師さんが廊下を歩いてるし、お見舞いに来た人とかもいる。
でも、ここは、そういう人が全くいない。
守里: …
美月: …
この状態の守里には、感情がないんだよね。
それと、お姉さんの記憶としては、名前と年齢しか残ってなくて、それ以外のことは覚えてない…
それで、春時や飛香が言うには、もしかしたら私達と一緒にいることで、記憶が戻るかもしれないと。
そのことも、一応確かめないとだ。
そうして、美月と守里は、優茉の病室に到着する。
ガラガラ
守里: 失礼します。
美月: 失礼します…
病室の中に入ると、前回と変わらず、部屋の中央にあるベッドで、優茉が安らかに眠っていた。
守里: 1ヶ月ぶり、姉ちゃん。
美月: こんにちは、お姉さん。
守里: 今日は美月を連れて来た。
美月: 改めて、どうも。白城美月です。守里の…う〜ん、姉?妹?…同い歳です。よろしくお願いします。
守里: 今月は色々とあって、悪いヤツを捕まえたりした。
美月: 中々大変だったよね。
守里: うん。
美月: 守里、大活躍だったんですよ笑
守里: 美月も。
美月: 笑、ありがと。
守里: うん。
その後も、守里は淡々と、この1ヶ月で起こったことを話し、美月はそれに相槌を打ったり、感想を言ったりして…
守里: よし、そろそろ。
美月: ねぇ、守里。
記憶が戻ってるかどうかを確かめなきゃ。
守里: なに?
美月: お姉さんの好きな食べ物ってなんなの?
守里: 好きな食べ物………あ、オムライスだったかな。小さい時、よく食べてたし、僕に作ってくれてたりもしたよ。
美月: っ!!!!そ、そう…
答えてくれた!
前回は、分からないって言ってたはずだから…やっぱり、記憶が少し戻ってる。
よし、もう少し質問してみよう。
美月: じゃあさ、お姉さんと遊びに行ったりしたことある?
守里: 遊びにか……ギフトモールに買い物に行ったことはある。確かその時に…
美月: その時に?
守里: …グッ
美月: 大丈夫?!
守里が頭を押さえる。
守里: …うん。その時に、姉ちゃんに言われたんだ。女の子の荷物は持ってあげなきゃダメだよ、って。
美月: へぇ。
部分的に思い出してるって感じなのかな…
にしてもお姉さんは、そんなことを、守里に言ってたんだ。
守里はお姉さんのことを覚えてなくても、お姉さんに言われたことは守ってるみたい。
美月: じゃあさ、お姉さんと守里と、日向子達みんなで遊んだことってあるの?
春時達の話では、小さい時はよく、みんなで遊んでたみたいだから…
守里: …うん、あった?……いや、あった。遊んだことある。
美月: 何をして遊んでたの?
守里: …分からない。
美月: そっか。
ここまでか…
じゃあ、最後に…
美月: 守里はさ、お母さんのこと覚えてる?
守里: お母さん?……分からない。
美月: …分かった。
やっぱり、お母さんのことは、全く記憶が無いんだ。
でも、このままいけば、いずれ、お母さんのことも思い出すことになるのかな。
美月: ありがとう、守里。教えてくれて。
守里: うん。質問は終わり?
美月: そうだよ。
守里: なら、帰ろうか。
そう言って、守里は扉の方に向かう。
美月: お姉さん。
美月は優茉の眠るベッドに近づく。
美月: お姉さんが目覚めるまでは、私が守里を支えますから。でも、私も早くお姉さんと、お話してみたいです。
守里: 何してるの?行くよ、美月。
美月: うん!
そうして、2人はエレベーターの所まで戻り、看護師と共に、1階に到着する。
看護師: では、また。
守里: はい。
守里が病院の入口に向かう。
美月: あの…
看護師: どうされましたか?
美月: 守里についてのお話を…
看護師: 私は答えることができません。
美月は、看護師に話を聞こうとしたが、看護師はそれを断る。
美月: …そうですか。すみません。
看護師: いえ…
美月: では…
看護師: …森崎君を支えてあげてください。
美月: え?
看護師: 森崎君は、中学2年生の頃から毎月、ここに来ています。
美月: …
看護師: 私は、その様子をずっと見てきました。しかし、1度も森崎君が笑ったところを見たことがありません。森崎君にどのような事情があるのかは知りませんが、私は、森崎君の笑顔を見てみたいんです。
美月: 守里に何があったのか、知らないんですか?
看護師: はい。私は末端ですから。
末端?
どういうことなんだろう…
看護師: 先月来た御家族の皆さんや、今日の貴女を見て、多分、貴女達なら森崎君を、変えることができると思いました。
美月: っ!!
看護師: 私が言うのも変ですが、森崎君をよろしくお願いします。
美月: はい、任せて下さい!
看護師: 笑
美月: っ!笑
初めて、この看護師さんの笑顔を見れた。
看護師: 森崎君が、待ってますよ。早く行ってあげてください。
美月: そうですね笑。じゃあまた来ます!
看護師: はい。
そうして、美月は看護師の元を離れ、病院から出る。
すると、守里が病院の前で立ち止まり、キョロキョロしていた。
美月: 守里〜
守里: あれ?美月。どうしてここに…
美月: まぁいいじゃん!帰ろ!
守里: 笑、そうだね!
美月: それで、さっきの会話の続きなんだけどさ。
守里: さっきの会話って、確か…
美月: 今日の晩ご飯の話だよ!
守里: あぁ〜そういえば、そうだった。
美月: なんだと思う?
守里: う〜ん、ハンバーグだったら嬉しいな!!
美月: 笑、そっか。ハンバーグだったら良いね。
こうして、2人は家に帰ったのだった。
to be continued
ありがとうございました。
まだまだ続きます。