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アルフレッド殿下は二重人格なのかしら?
メガネをしているときと外れた時とで性格や行動が正反対になる――という新事実について、コルネリア様にご報告しようかどうか丸一週間悩んだ。
そして、結局見合わせることに決めた。
なぜなら、殿下本人がそのことをどう思っているのか分らなかったからだ。
あれから図書室で顔を合わせても、いつもの穏やかな殿下だったし。お茶会も一回あったけれど、そこでも変わらなかった。殴られたほっぺたに絆創膏があったから「どうなさったのですか?」と聞いてみても、「ちょっ、ちょっと転んでしまってね」と、本当のことは言わなかった。
もしかしたら事情があって隠しているのかも……? という可能性も浮上してきたので、ひとまずわたしもあの日の出来事は心に秘めておくことにして、これまで通りの付き合いを続けることにしたのだった。
とはいえ、あの別人のような殿下の姿は、そう忘れられるものではない。
きりっとした瞳に、凛とした口調。暴力でかかってきた相手を口でやり込め、なんだかんだ処刑にはせず学園追放で済ませてあげた度量。
態度は変わっても、殿下の根底にあるものはやっぱり優しさなのねと思うと、なんだか誇らしい気持ちになると同時に、温かいものが胸に広がったのだった。




