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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第五章 アラウミ王国編
65/65

65.  ドラゴン

 そして時間になったので僕らは起床した。

 ダンジョンの中は時間に関係なく明るいので朝という概念はないが、一日の時間間隔はサトリさんたちには備わっているようだったし、セーフハウスにも時計のような機能が備えられていた。


「シャナエ様、カイン君、アスナちゃん。 おはようございます。 そして落ち着いて聞いてください」


 サトリさんが何やら神妙な顔をして僕等を見回した。

 ガイアさんたちも、その件については承知しているようで真剣な表情をしていた。


「実は結界の外に、メガアシエラプトルが5匹いる。 もしかしたら今後更に増えるかもしれないから、ここで討伐しておく必要があると思う。 恐らく我々が風上にいるから我々の匂いを嗅ぎつけてやって来たのかもしれない。 普段ならカイン君たちをもう少し寝かせてあげることもできたんだが、今より状況が厳しくなってしまうと厄介なので早めに起きてもらったというわけだよ」


 僕は完全に目が覚めてしまった。 アスナも同様だろう。

 この前から比較すると、何となく襲ってくるメガアシエラプトルの密度が次第に増加していっているような気がするのだが、それは僕の思い過ごしなのだろうか。


「そこで討伐作戦だけど、フィリアとも話し合った結果、至ってシンプルにすることにしたのだよ。 作戦としては、先ずガイアが結界から出てメガアシエラプトル5匹を集める。 そしてカイン君が5匹まとめて寝かせてから、打ち漏らした場合にはアスナちゃんが即スタンを掛ける。 今回はガイアも巻き込まれて寝てしまうから直ぐに水を掛けて起こしたあとで、メガアシエラプトルを相手することになる。 以上なんだがカイン君、何か意見があるかい?」


「えっと、打ち漏らした場合には、そいつの口の中にアレをぶち込んでも良いのでしょうか」


「なるほど、できそうならばやってくれたまえ」


「他には?」


「あ、ガイアさんは大きいので、僕が睡眠攻撃を仕掛けるときは、姿勢を低くして貰えると助かります。 そうしないとガイアさんの陰に隠れて打ち漏らしが出てしまうかもしれないです」


「ガイア、わかったかい?」


「ああ、了解だ。 俺がしゃがんだら、即睡眠攻撃を放ってくれ」


「はい、わかりました」


「では始めようかね」


 ということで、三回目のメガアシエラプトル討伐戦が始まった。

 僕は自分に自己強化付与セット2をつかった。 この魔法はLv6の自己強化魔法と、さらに防御付与やスピード増加のバフを加えたものである。

 そして30秒待機してから、アスナにも防御付与やスピード増加の効果を付与した。

 フィリアさんは欠損回復魔法の準備を始めた。

 サトリさんは、爆裂魔法の準備だ。

 メガアシエラプトルには爆裂魔法は効かないのだが、気をそらす目的なのだろうか。


 準備が出来たとたん、即座にガイアさんがタイミングを見計らって結界を飛び出した。


「ガハハハ、お前ら、このガイア様が相手してやる。 かかってこいや~!!」


 ガイアさんが雄たけびともいえる大声を発すると、メガアシエラプトルがガイアさんに向かって集まっていった。

 そこで僕は発見してしまった。

 一匹だけその場に留まって、小爆裂魔法を準備している奴がいることを。


 ヤバイ! このままでは奴を打ち漏らしてしまう。

 僕は慌てて、Maxのスピードで飛び出して、その一匹も視界に収めようとした。

 だが、そこでガイアさんが蹲ってしまった。

 激しい攻撃に耐えられなかったのだ。

 僕はやむなく睡眠魔法を放った。

 それとほぼ同時に、フィリアさんの欠損回復魔法の光がガイアさんを包み込んだ。


 ドサ、ドサドサドサッ。


 ドォーン!!!


 4匹のメガアシエラプトルが寝倒れて、その場から動いていなかった残りの一匹の小爆裂魔法がガイアさんへと着弾した。

 ガイアさんは欠損回復魔法を受けた後だったのだが、今は僕の睡眠攻撃を受けてしまい、寝てしまっていて防御能力が低下しているはずである。


 まずい!


 僕は即座に回復セット6(治療Lv6 、 状態回復Lv6、 HP回復Lv6)をガイアさんに放ち、さらに水生成Lv1をガイアさんに使った。

 そこで僕は恐怖で固まってしまった。

 何故なら小爆裂魔法を放った、つまり睡眠魔法を打ち漏らしたメガアシエラプトルが僕に向かって突進してきたからだ。


「!!!!!」


 アスナのスタン攻撃が発動し、そのメガアシエラプトルはフリーズした。

 その隙に目が覚めたガイアさんが、僕とメガアシエラプトルの間に割り込んだ。


「お前の相手は、俺だ!!! よそ見してるんじゃね~ぞ!」


 まるで中二病に冒されているかのようなセリフではあるものの、正直僕はこれで落ち着きを取り戻せた。

 スマイルさんは、早速眠っているメガアシエラプトルの一匹へ攻撃を開始した。

 僕はそれを確認すると、水蒸気破裂魔法をフリーズしているメガアシエラプトルの口の中へとお見舞いしてやった。


 ドォォン!!


 思い通りに奴のフリーズが解ける前に、水蒸気破裂魔法が着弾して、メガアシエラプトルの顎は吹っ飛んだ。

 そしてフリーズが解ける間もなく、そいつを倒すことに成功したのだった。

 振り返るとスマイルさんが一匹目に致命傷を与え、二匹目へと攻撃の対象を移していた。

 だが、時間が経過したので、僕は睡眠魔法を重ね掛けすることにした。


 ドサッ。


 スマイルさんは眠ってしまい倒れた。

 僕は即座に水生成Lv2をスマイルさんへ向かって放った。

 水生成Lv1ではなくLv2を使ったのは、Lv1がまだ微妙にクールタイム中だったからだ。


 バシャッ。


 水が掛かったことによってスマイルさんは目覚めて起き上がった。

 だがスマイルさんに掛けられた水の一部が、スマイルさんが攻撃していたメガアシエラプトルにもかかってしまった。


 グルルルルル。


 スマイルさんの攻撃を受けて、かなり深い傷を負っているのにもかかわらず、目覚めたメガアシエラプトルは唸り声を上げて立ち上がろうとした。


「!!!!!」


 そこへアスナのスタン攻撃が襲った。


 ドサッ。


 立ち上がろうとして不安定な恰好をしたままメガアシエラプトルはフリーズしたので、そのままの姿勢で倒れ込んでしまった。

 そうなれば後はこっちのものだ。 スマイルさんがソイツに追加の攻撃を加えて息の根を止めた。


 寝ているメガアシエラプトルが3匹残っている。

 ようやく僕らにも余裕がでてきた。

 そしてソイツ等を危なげなく討伐することに成功した。


「やった~。 メガアシエラプトルを倒したのぉ~!!」


 スマイルさんが凛々しく雄たけびを上げた。

 今回は色々と反省するべき点もあるものの、そんなことを言い出す間もなくサトリさんが指示を出してきた。


「すぐにこの場から撤収しよう。 皆はすぐにセーフハウスを片づけてくれ。 スマイルちゃん、新たなメガアシエラプトル来ないかを監視してくれ。 そしてタミルさんには奥の方の安全確認をお願いしたい」


「わかったのだ。 確認してくるのだ」


 そう言ってタミルさんはダンジョンの奥の方へと消えて行った。


 僕たちはセーフハウスの解体を始めた。

 セーフハウスは組み立てこそ大変なのだが、バラすのは比較的簡単だ。

 撤収する時には迅速な対応が必要な場面もあるだろうだから、予めそのように設計されているのかもしれない。


 解体を始めて10分ほどでセーフハウスは折りたたまれて無事にアスナの空間倉庫へ収まった。

 その時点でタミルさんは帰って来ないが直ぐに撤収を開始することになった。

 フィリアさんが空間倉庫から小さめの人力車を出してくれたので、フィジカル的なステータスに問題があるアスナ、シャナエ様、そしてフィリアさんが乗り込み、ガイアさんが牽引することになる。

 スマイルさんは探知をメインに担当し、サトリさんは司令塔として、そして僕はもしもの場合に備えての寝かせ役としての役割の担った。


 そうやって移動すること2時間で新たな広間へ出た。 

 その時点ではタミルさんは帰還していなかった。

 ガイアさんの頑張りで人力車での移動が自動車の速度に匹敵するぐらい非常に早かったので、最初に転移された場所からは約100kmも遠ざかることができていた。

 つまりダンジョンを奥の方向へ100kmも深く潜ってしまったということだ。



「さて、一度ここで休息してタミルさんが戻ってくるまで待つことにしよう。 彼は何かあっても逃げることができるぐらいAGIが高いそうだから、恐らく大分遠くの方まで調査範囲を広げてくれていると思うよ」


 サトリさんは大丈夫というのだが、僕らはタミルさんが帰って来ないことに一抹の不安を覚えていた。

 この時間ならタミルさんの移動速度ならば、1000kmまで移動してもおかしくないし、そこまで調べることの理由が不明からである。

 そして待つこと半日、タミルさんは無事に帰って来たので僕等はホッとした。


「タミル~、心配したのぉ~。 何かあったのなのだ~?」


 タミルさんを見たとたんにスマイルさんが今にも泣きそうな顔で問い正した。


「ひ、ひどい目にあったのだ。 この先には、トンデモない魔物がいるのだ。 けれどもその先に出口があったので、一旦外へ退避できたのだ」


 僕らはタミルさんの報告にちょっと慌てたが、シャナエ様がサトリさんより前に出てタミルさんに話しかけた。


「タミル、とりあえず無事で何よりです。 そちらに出口があったとのことですが、状況を詳しく報告していただけますか? 」


「はい、シャナエ様。 おいらはずっと先まで行って調べたのだ。 そしてトンデモない魔物とダンジョンコアを見つけたのだ。 そこはここからは恐らく500km先ぐらいなのだ」


「ダンジョンコアですか。 ということはダンジョンの最深部ということですね。 そこに居た魔物はボスモンスターのようでしたか?」


「シャナエ様、おいらにはボスモンスターかどうか分からないのだ。 形は巨大なスライムという様相でダンジョンの壁を削り取るぐらいの強い攻撃力があるのだ。 けれどもそいつは動作がのろくて、そこから100mも引き離すと追って来なかったのだ」


「勉強不足ですよ、タミル。 ボスモンスターはダンジョンコアの守護者ですから、ダンジョンコアから遠くへは離れないものなのです。 話からすると巨大スライムはこのダンジョンのボスモンスターの可能性が高いのですよ」


「シャナエ様、とても勉強になったのだ。 感謝申し上げるのだ」


「ところで、一旦外へ退避したとはどういうことなのですか?」


「ダンジョンコアから少し遠いところに外へ出る穴が開いていたのだ。 ダンジョンの壁面の欠片が飛び散っていたから、おそらく巨大なボスモンスターが開けた思うのだ」


「そうですか、……それでタミルは、どうやって外へ出たのですか? それから外はどのような感じでしたか?」


「ボスモンスターの動きが鈍かったからすり抜けることができたのだ。 だけと外にはドラゴンがいて追い回されたのだ」


「 「 「 「 ドラゴン?!?! 」 」 」 」 


 シャナエ様とサトリさん以外のメンバーは同時に叫び声を上げた。

 ドラゴンは最低でもSランクに分類される魔物で、人間には全く手が出せない災厄レベルの魔物とされていたからだ。


「ドラゴンですか、……そのドラゴンの種類は分かりましたか?」


「そのドラゴンは、火を吐いたのだ。 やっとの思いでそこから逃げたと思ったら、その先には吹雪を吐くのも居たのだ。 とにかく沢山のドラゴンが居たのだ。 おいらは必死に逃げてまくってやっと戻って来れたのだ」


「タミル、逃げ延びることが出来て何よりでした。 そうなるとサトリ殿、奥側のダンジョン出口は閉ざされたも同然ですね。 それとも何か打開策はありますか?」


「シャナエ様、可能性として1つだけ提示できるのは、ダンジョンコアの破壊の可能性かと思われます。 もしそのボスモンスターを寝かせたりスタンさせたりできるなら、その間にコアを破壊できるのではないかと思います」


「サトリン、コアを破壊すればメガアシエラプトルが新たに生まれなくなるから、倒し続ければその内に殲滅できてここから脱出することが可能なの?」


「フィアちゃん、そういうことさ。 ただし問題が2つあるのだよ。 先ずボスモンスターに寝かせやスタンが有効かどうかという点と、メガアシエラプトルの数が本当に殲滅できる範囲に収まっているかどうかだね」


「……」


「それはそうとタミルさん、そのボスモンスターまでの道のりで魔物には遭遇しなかったのかい?」


「サトリ殿、遭遇はしなかったのだ。 ただし一か所だけ分岐点があって、その方面の状況はわからないのだ」


「タミルさん、了解したよ。 もし皆に依存が無ければ、一旦ここでキャンプしてから、翌日には奥の方へと移動を開始しよう」


 僕らはサトリさんの提案に依存が無かったので、この広間でキャンプすることになった。

 ダンジョンの奥側に出入口があることは、風が吹いていることから予想できていたのだが、その先に最強種のドラゴンが多数がいるとなれば、そこから出ることは現実的ではない。

 となればメガアシエラプトルの大群を倒すことが必要なのだが、果たして倒し切れるかどうかが非常に微妙だ。

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