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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第四章 アシエラプトル編
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51. Eランク

 そんな隷属魔法騒動から数日が経ち、僕の気分も落ち着いた頃にサトリさんがやっと帰って来た。


 あの事件の事後処理で大変だった。

 話によればあの後、大規模な摘発が行われたそうだ。

 摘発に際して十数名規模の治療師部隊が投入されて摘発現場に居た人全てに状態回復魔法をかけてから踏み込んだそうだ。 その結果として誰も犠牲者を出さずに確保でき、現在はさらに上位の組織に向けての摘発を進めているとのこと。

 その事件も一旦区切りがついたので、サトリさんは元のダンジョンの発見業務のために戻ってきたのである。



「君たち、申し訳ないがギルドまで来てくれないか? マスターが話が有るみたいなんだ」


「僕とアスナにですか? 何だろう。 嬉しくないような予感がするんですが」


「それは君たちの次第だね。 今回の隷属魔法騒動が関係しているんだよ」


「え~? サトリさん何とかなりませんか? 僕は隷属化された事があるので、あの無力感というか絶望感を思い出したくないんです」


「そ、それは……。 嫌な事を思い出させて申し訳ない。 それでも、その、……断ることができなくってね。 あとは君たちの判断に任せることにしたんだよ」



 サトリさんが困った表情をした。

 う~ん。 これって半強制みたいなやつか?



「一体何の話なんですか?」


「ああ、ランク昇格の話だよ。 君たちの功績が認められてね、最低でもEランクにしなきゃならないみたいなんだよ」


「ええっ? 最低でもEランクって。 アスナはともかく僕は何もしてないことになってるから、僕はFランクのままでも問題ないんじゃ?」


「ええっ?? カイン兄ちゃん。 私だけ生贄なんて卑怯よ。 指示通りに動いただけなのに私を裏切る気? この裏切り者!!!」


「……」



「あれっ? スタンが発動しなかった?」


「何を言ってるの? スタンなんか使ってないわよ?」


「だって今、”この裏切者!!!” って言わなかったか?」


「人を何だと思っているの? 意識しないと発動なんかしないわよ。 ちゃんと手加減は覚えているのよ」


「そ、そうでしたか。 それは御見逸れしました」


「分かればいいのよ」


「……」



「君たち、終わりかい?」


「はい。 終わりです」


「じゃ、カイン君、アスナちゃん、ギルドへ行こうか」


「えっ? それは終わったのでは?」


「そうよ、終わったのよ。 行くならお兄ちゃんだけで行ってね?」


「ちょっ、アスナ自分だけ助かろうなんて、裏切るのか? この裏切者!!!」


「……」



「くっ、 僕にはスタンは使えなかったか」


「お兄ちゃんって、馬鹿?」


「あ、アスナに言われたくないかも」


「何? それってどういう意味? 私を嘗めてる?」


「嘗めるとアメのように甘いのかな」


「ほらやっぱり、私を馬鹿にしているわ。 この裏切者!!」


「あ、あれ? スタンは発動しなくなった?」


「私だって大人になったのよ。 必要ない時にはスタンは温存よ」


「まあ、そうだよね。 こんな場面で使っても意味がないよね。 そうかアスナもやっと大人になったのか~」


「え? こっちを嫌らしい目で私を見ないでくれる?」


「ば、馬鹿か。 こんな幼児に嫌らしい目を向けるなんてあり得ないだろ~」


「やっぱり、お兄ちゃんって馬鹿なのね、世の中にはそういう嗜好のヤバイ奴が……」


「ちょっとカインちゃん、アスナちゃん。 一生懸命話を煙に巻こうと抵抗しているようだけど、サトリン相手に誤魔化し工作は無駄よ」


「……」



「た、確かにそうですね。 はぁ~、アスナこれは駄目だね、諦めよう」


「私は最初から無理だと思ったけど、仕方なく付き合ってあげたのよ」



 そんな僕達の抵抗も空しく結局僕たちはギルドに連れ出されてしまった。

 そしてまたもマスターと一緒にマスター室に閉じ込められた。 サトリさんが、内側から鍵を掛けてしまったのである。



「サトリさん! 鍵を掛けるなんて、流石に僕らは逃げませんよ?」


「そうよ、サトリお兄さま。 こんな幼子を閉じ込めて何をなさる気なんですか?」


「こ、これは危機的状況なんじゃないか? あ、アスナ、スタンだ! スタンして逃げるのだ!」



「ちょっと、貴方たち。 いい加減にしなさい! サトリンを苛めたら怒るわよ」


「あ、ああ。 すまない。 鍵を掛けたのは外部から人が入らないようにするためだよ」


「……わかってますとも。 ちょっとだけ意趣返しというか、憂さ晴らしさせてもらっただけです。 すみませんでした」


「……」



「サトリ君、この子たちは何時もこんな調子なのかね?」


 ギルドマスターは僕に呆れたような表情をしてみせた。 



「ええそうです。 油断していると、いいように翻弄されますね」


「なるほど、子供だからって侮れないようだな」


「……」


「それで、今日の御用向きは何でしょうか?」


「……そ、そうだね。 君たちの昇格の件だ。 喜びたまえ君たちは今日からEランクに昇格だ」


「Eランク? あの~、お断りしてもいいですか? 僕達は目立つのが嫌なので」


「ええっ? い、いや困る。 困るよ君。 サトリ君、この子達に話は通してあるんだよな?」


「ええ、勿論です。 色々とゴネるだろうからでマスターに直接説明してもらおうと何とか連れて来たんですよ」


「連れて来ただけなのか……」


「ええそうです。 少しだけ用向きを伝えて連れてくるだけに留めました」


「そ、そうか。 コッホン。 ……君たちはEランクになる。 それは決定事項だ。 いいね?」


「いや良くないです。 何故Eランクなんですか? 合理的な説明をお願いします」


「……昇格なのに文句言われるとは思ってなかったな。 合理的、合理的な説明か。 そうだな、やはり隷属魔法使いの組織構成員を捉えた功績だな」


「そうですか。 でも捉えたのはサトリさんとフィリアさんです。 僕らは手を出してないですよ?」


「手を出してないか。 確かに手は出してないのか。 ……いや、君たちが発見して、危険な魔法も抑えたんじゃないか」


「え? そんな物証は無いと思いますが?」


「物証、物証か……。 確か無いな」


「では、昇格の話は無かったということでお願いします」


「いや、困る。 もう決定済みで、本部とも合意済なんだよ」


「それなら間違いということで取り消せば……」



「カイン君。 その位にしておきたまえ。 マスターに対してその態度はよくないな!」


「……」



「……すみませんでした。 ゴネれば何とかなるかと思ってしまいました。 申し訳ありませんでした」


「まあまあ、サトリ君。 本人達の了解なしに事を決めてしまったのはこちら側の落ち度ではあるから、仕方がないよ。 それでもカイン君。 Eランク昇格については、これでも大分妥協してもらったのだよ。 本部に現在Fランクで仮Cランクというのがバレてね。 正式にCランクにするべきとお叱りを受けたのだよ。 それでも君たちには負担だろうから、交渉してなんとかEランクに留めるように妥協してもらったのだよ」


「……わかりました。 ご尽力ありがとうございました。 (つつし)んでEランクお受け致します」


「あ、ああ、助かるよ」


「……」



「それにしても、君の<ギフト>は本当にBRDなのか?」


「ふぅ~そうですよね。 そう考えるのが合理的ですよね。 ふつうより魔力が多くて魔法を識別できるわけですからね。  ええそうです。 僕の<ギフト>はBRDです」


「……そうか。 もしやと思ったのだが本当にそうだったのだな。 君はそんな境遇なのに、よくぞ(くじ)けずに頑張ってきたな」


「はい。 僕はとにかく頑張ってみるって決めましたから」


「……やはり本部の言う通りCランクが妥当なn……」


「いえ、目立つのは困るのでEランクでお願いします」


「そうか、わかった。 ではEランク冒険者カイン君、アスナ君。 これからもよろしく頼むよ」


「はい。 わかりました」



 というわけで、僕らはEランク冒険者になった。 

 Eランクになるということは、国中のギルドへ公開されて登録されるということを意味するので、10才と8才のEランク冒険者が誕生したことが知れ渡ってしまうことになるのである。 

 ちなみにBランクになると友好国へも情報公開されることになる。


 そして今回ギルドマスターに僕が<BRDギフト>だとバレてしまった。  

 まあこれは仕方が無いのかもしれない。 

 それでも現時点ではアスナについては隠せていて、特殊能力スタン持ちとして認識されているのでこの点では取りあえず安心だ。 僕にとってアスナは守るべき実の妹のような存在なのだ。 


 それにしても、サトリさんが怒らないなんて嘘だ。 

 やはり怒るし、怒ると怖いじゃないか!  

 まあ怒らなくてもあの死にたがりの爆裂魔法を見た者としては怖いけどね。


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