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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第四章 アシエラプトル編
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47. ダンジョン探し

 今回アシエラプトルに遭遇してしまったことにより、僕たちの街道巡回任務は一旦終了となった。 アシエラプトルがこの街道近辺に複数徘徊している可能性が高まってしまい、街道封鎖の継続が決まったからである。

 また2匹目のアシエラプトルの発見という事実によって、この近辺に魔物の発生源であるダンジョンが新たに出現した可能性が高いということになったので、大規模な討伐隊が組織されることになったのである。 

 発見されたのが最初の一匹だけだったという結論であれば、どこか遠くのダンジョンの転移罠などで偶発的に転送されてきたとも考えられるので、大規模討伐隊の編成前の手順として、僕達のような小規模な調査が必要だったのだ。


 さて、僕らの次の任務は、どこにダンジョンがあるかを探査することになってしまった。 大規模討伐隊の編成にはかなりの時間がかかるそうなので、その前にできる事はやっておくということなのだそうだ。

 アシエラプトルが最初の一匹だけであるという事を確認するということは、元々悪魔の証明に近いものであるため、虱潰しに付近の山も調査しなければならなかった。  つまり僕たちに要求されている行動は、街道付近を虱潰しに調査するということになるので、当初とあまり変化がないとも言えるだろう。 ただしダンジョンを発見すればそれで任務終了となるので、むしろ楽になったぐらいだ。


 ダンジョン、それは魔物の巣窟である。


 ダンジョンコアがあるダンジョンは生きているダンジョンであり、その中ではアシエラプトルなどの特殊な魔物が自然と沸いてしまう。 

 生きているダンジョンを放置すると特殊な魔物を生み続けてしまうため、魔物を間引くかコアを破壊しないとダンジョンから出てきた魔物により被害でてしまう。 

 そうかといって、必ずしもコアを破壊するために全力を尽くすことが正解とは限らない。 コアの破壊が著しく困難な場合はどうしようもないし、有益な魔物素材を供給する魔物を生み出す場合などがそれに当たるのだ。

 今回は有害なアシエラプトルを生み出しているダンジョンなので、基本的にはコア破壊を目指すことになるそうである。


 僕たちはアシエラプトルが出現した場所から山の方へと入って行くことになったのだが、ローラー作戦を実行するなんてことは考えていない。 

 ではどうするのかと言えば、勿論経験に裏打ちされた勘に頼るのである。

 そして勘といえば、勿論スマイルさんだ。  スマイルさんを先頭にして気の向く方へと進んでいくことになるのだ。 僕としては何となくだが悪い予感しかしない。


 見える範囲にはダンジョンはないので、僕たちはこれから山の中の林に入って行くのであるが、その前にスマイルさん、ガイアさんには、今までの魔法レベル10の強化に加えて、AGI強化も併用することになった。 

 AGI強化の効果には素早さを上げることの他に、五感の鋭さも上げる効果もあるため、魔物の気配を感じ取りやすくなるのである。



 暫く林の中を進んで行くと、いきなりスマイルさんが立ち止まった。


「ね~ガイア~。 何か感じない?」


「俺に言われてもな~。 感じないとしか言えんぜ」


「え~とね、うんとね、……ほらアッチよぉ」



 僕らは一斉にスマイルさんの指さす方向に目を向けた。

 すると突然そこから山ネズミが飛び出してきた。


 な、なんだ? 山ネズミじゃないか。 警戒して損したよ! と思ったのだが。


 ネズミを追って次に山猫が飛び出して来た。 



 おおっと、結構大きな猫だな。 

 ちょっとビックリしちゃたよ。


 さらに、その山猫を、イノシシが追って来て、さらにその後から、小ぶりのアシエラプトルがやって来た。


 すぐにサトリさんが爆裂魔法の詠唱を開始し、ガイアさんがディフェンダーとなり、スマイルさんがアタッカーになり、アスナがスタンを掛け、爆裂魔法が発動してアシエラプトルを倒してしまった。

 またも流れるような見事な連携が見られた。



 でも、ちょっと待ってほしいサトリさん。 

 ここって林の中だよね。 爆裂魔法って山火事の危険ない?


 僕は心配したのだが、林の中と言っても枯れ木や落ち葉はなく、地面は湿っているので問題無さそうにも思えた。 そうは言っても気になるのかサトリさんは、魔法レベル8の大魔法、水生成魔法Lv8の詠唱を始めていた。


 さすがにサトリさん、マナーがちゃんとしているじゃないか。 

 火を使ったら消火をちゃんとしないとねダメだよね。 

 僕もサトリさんを助けるつもりで、くすぶっているところが無いかを調べて回った。


 バシャッ!!!


 僕の頭の上から突然物凄い量の水が降り注ぎ、僕はずぶ濡れになってしまった。


 しまった! 


 サトリさんが水生成魔法を唱えていたのに逃げないとこうなるのは当たり前じゃないか!

 僕はとっさに周囲を見渡したが、他の人達は勿論この付近から退避しており、僕だけが被害を受けたようだった。


「カイン君。 何故わざと水を被ったのかい?」


 サトリさんが容赦なく僕に追い打ちを掛けてきた。 


 ウッ、どう答えよう。 考えろ。 考えるんだ。



「……いや、あの、その。 服を汚してしまったので洗ってもらおうかと思いまして」


「……」


「カインちゃ~ん。 お漏らしかな~ お漏らしよね~。 スマイルちゃんも昔ビックリしてお漏らししたことがあるんだよぉ~ 」


 ええっ? ちょっとこれって否定するとスマイルさんが傷つくパターンじ? 

 不味いどうしよう。 どうしよう……。 

 僕は大変困惑してしまった。



「そうか。 仕方がないね。 それじゃ乾かしてあげよう」


「カイン兄ちゃん。 思ってたより意気地なしだったのね」



 サトリさんは 魔法レベル4の水操作Lv4で僕を乾かしてくれた。

 僕はスマイルさんのために仕方なく屈辱を甘んじて受けた。



 ◇   ◇   ◇



 それからの僕たちは、林の中、森の中をさ迷った。 

 文字通り、さ迷っているというのが正しい表現だと思えてくる。

 スマイルさんの歩き方はランダムウォークに近いというか何というか、どういう基準で方向を決めているのかがハッキリしない。 

 どの方向へ向かっているかは僕やアスナが図面記録ボードを使って経路を記録しているので分かることで、遠くへ行ったか思えば元に戻ることもあるという感じだった。 

 それでも何故か魔物との遭遇確率は非常に高く、これは試しにガイアさんを先頭に経たせて行軍した場合と比較すると明らかな差があった。

 ダンジョンの近くには当然魔物が多いはずだし、魔物を見つけながら進むのは正しいと思われるので、スマイルさんに先導を任せるのは正しいのだと言えるかもしれない。


 そうやって、林や森をさ迷って、アシエラプトルや、オークなど一匹で徘徊している特殊魔物(ダンジョンでのみ自然発生する)を倒していったのだが、遂に僕等はオークの群れを見つけてしまったのだった。


 その群れの規模は20体ほどと中規模だったが、僕らのパーティは前衛が2名だけなので、いくらガイアさんやスマイルさんが強くても混戦になれば犠牲者が出てしまう可能性がある。

 戦力はサトリさん(愛称はサトリン)、フィリアさん(愛称はフィアちゃん)、ガイアさん、スマイルさん、僕、アスナの6人だけだ。 

 6人で20体を相手どることが可能なのだろうか? 僕は不安を覚えた。



「ね~。 ね~。 やっちゃう? やっちゃうの?」


「おお! あんなの蹴散らしてくれるぜ」


 ガイアさんとスマイルさんはやる気満々だ。 だがそれでは駄目なはずだ。



「ちょっと待ちなさい。 そんなのダメよ。 私たちが危ないじゃない。 サトリン、なんか言ってやって」


「そうだね。 ガイアとスマイルちゃんだけだとちょっと厳しいかもしれないし、わざわざこんなことで危険を冒したくないね。 う~ん、でもこれだけ魔物が密集しているとなれば、この先にダンジョンがある可能性も高いんだよね。 どうしたものか……」


「そ~ね~。 やっぱり少しづつ間引いてから殲滅ということになるかもね」


「フィアちゃんやアスナちゃん、カイン君は、木の上に退避してもらって、一気に叩き潰すというのもあるんだけど、それは最終手段ということで、まずは間引けるだけ間引くことにした方が良いね」


「おう。 サトリがそう言うんなら依存はねえよ」


「え~? スマイルちゃんはつまらないかも~」


「あ~、ごめんねスマイルちゃん。 いいところまで数を減らしたら一気にやっちゃえるから待っててね」


「フィアちゃんがそういうなら我慢するぅ~」


「……それでは、まずは戦闘場所を決めようか」



 僕らはそのオークの集団からそれほど離れていなく、且つ集団に見つからない場所を探し出し、僕とアスナ、フィリアさんは木に登った。 


 そしてフィリアさんは結界魔法Lv2を使った。

 結界魔法はフィリアさんを中心として10m程の円範囲が対象で、その範囲内では魔物は人を認識できなくなる。



 僕等の安全が確保できたので、スマイルさん、ガイアさん、そしてサトリさんが、強化魔法を掛け直してオークの数を減らす間引き作戦がスタートした。


「では魔法で釣ってくるから、ここで待っててね」


 そういうと、サトリさんはオークの集団の方へと行ってしまった。



 魔法で釣るとは、対象の魔物の2メートル以内にレベル1程度の魔法が着弾すると魔物が魔法を打った相手に気づくという特性を利用している。 逆に2メートル以上離れていると魔法に気づかないし、釣られた魔物を視認していないと付いても来ない。 もちろん大きな魔法だと気付くのだが、それは周囲の魔物も同様に気づいてしまうため、一本釣りにはならない。


 今回は群れからちょっと離れたオークに氷魔法Lv1位の小さな魔法を浴びせて1匹つづ連れてくることになる。 もちろんその釣った場面を他のオークに見られてしまうと連鎖的に多量に連れてきてしまうため、釣りには細心の注意が必要だ。


 5分程待ったであろうか、サトリさんが一匹のオークを釣って連れて来た。

 もちろんスマイルさんとガイアさんは連携してソイツを瞬殺してしまった。


 そしてまた5分ほどして釣ってきて瞬殺というのを10回ほど繰り返した。

 そして、サトリさんが、今度は3匹のオークを連れて来た。


 僕たちは、木の上から優雅にその様子を観覧していたのだが、気になったので聞いてみた。


「ちょっとフィリアさん、これって大丈夫なんですか? オークファイターらしき奴もいるみたいなんですけど」


「ええ。 あの3人なら問題ないと思うわよ。 あとアスナちゃんはスタンを温存しといてね。 ファイターがいるってことは魔法系のオークもいるはずだからね」


「はい、わかりました~」


「あとスタンを使うタイミングは、私からアスナちゃんに伝えるね」


「はい!」


 3匹との戦いは、サトリさんがファイターを引き連れて逃げ回り、ガイアさんが2匹引き付けて、スマイルさんがそれを一匹づづ倒すという戦法で、思ったよりも危なげなく終わった。


 今回サトリさんは、大きな音がする爆裂魔法とかは控えている。  そんなのを使って本隊の集団に気づかれてしまったら元も子もないからだ。


 そして、もう一度強化を掛けてから、サトリさんはまた釣りへ出かけていった。


 待つこと10分。 

 まだサトリさんは来ない。 


 そして15分経過したころ、2匹のオークを連れて来た。 一匹は普通のオーク、もう一匹はオークファイターだ。


「バトルメイジも来るかもしれない!」


 と、サトリさんは逃げながら冷静な声で皆に伝えた。



 ガイアさんとスマイルさんは、オークファイターを相手取り戦闘を開始し、サトリさんはオークを引き連れてランニング中だ。


 そして、オークバトルメイジが来た。 

 さらにオークヒーラーも続いている。


 オークバトルメイジは、どうやらサトリさんに火魔法Lv6を詠唱しているようだ。

 オークヒーラーは、治療魔法Lv4の詠唱を開始し始めた。


「アスナちゃん、 メイジをスタンして!」


 僕たちは木から降りて、さらにアスナは結界から少し外へ出た。



「!!!!!」



 アスナのスタン攻撃でオークバトルメイジはフリーズした。

 フリーズしたことで一旦魔法の詠唱は中断したのだが、フリーズが終わるとまた詠唱を始めた。


「アスナちゃん、 オークヒーラーもスタンして!」


「!!!!!」



 オークヒーラーはフリーズし、魔法詠唱が中断した。


 そしてやっとガイアさんとスマイルさんがオークファイターを倒し、次はオークバトルメイジを相手にした。

 バトルメイジは火魔法Lv6を詠唱している。 そのターゲットは……アスナだった。


 アスナは結界内に逃れたが、バトルメイジの個体レベルが高く、結界魔法Lv2では不足だったようだ。



「アスナちゃん、 もう一回バトルメイジをスタンして!」


「!!!!!」


 オークバトルメイジはフリーズした。

 アスナのスタンのストックはこれで打ち止めのはずだ。


 サトリさんはノーマルのオークを連れてランニングしている。

 ガイアさん、スマイルさんはオークバトルメイジを攻撃している。

 オークヒーラーは、オークバトルメイジに治療魔法Lv4を掛けようとしている。

 僕、アスナ、フィリアさんは観戦中だ。


 僕にできることはないだろうか。 僕はガイアさんとスマイルさんの死角にいるヒーラー目掛けて、

 水生成Lv1と使い、続いて水操作Lv1を使って、水の塊をオークヒーラーの顔にぶつけてやった。

 水の塊を顔に受けたオークヒーラーは目をつぶった。

 続けて僕は土操作Lv1で小石地面からえぐりだし、空気操作Lv1で小石を宙に浮かせて小石をオークヒーラーの顔にぶつけてやった。


 コッ!


 攻撃力としては大したことは無かったが、オークヒーラーを驚かすことには成功したようだ。

 オークヒーラーの詠唱の中断に成功したようだ。


 ガイアさんとスマイルさんはそんな僕に気づかずにオークバトルメイジを倒し、次にオークヒーラーを倒し、最後にノーマルのオークを倒した。


「ふぅ。やはり魔術師系の魔物がいると結構厄介だね。 それで残りのオークなんだけど、……見える範囲で5匹なのだけどね、オークキングが混ざっているんだよ。 今回慎重に数を減らしたのは正解だったね。 だけどまだ安心できない状態なのだね。 さてどうしたものか」


「サトリン。 アスナちゃんのスタンも使い切っちゃったからお休みにしない?」


「そうだね。 このまま危険を冒して倒すよりも、じっくり戦った方がよいね。 もうすぐ夕方だし、そうしよう」



 僕らは、そこから30分程歩いて離れてからキャンプを張ることにしたのだった。

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