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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第四章 アシエラプトル編
45/65

45. スタン

 それから3日後、サトリさんがガイアさん?スマイルさん?を伴って宿へと帰って来た。

 ガイアさんとスマイルさんは目に隈をつくり明らかに元気がない。 

 そんなにキツイ仕事だったのだろうか。


「おかえりなさい。 サトリン。 今日は早いのね。 それにソイツ等を連れてどうしたの?」


「ああフィアちゃん、やっと仕事が終わってね、一段落したから改めて紹介も兼ねて連れて来たんだよ」


「フィアちゃ~ん。 スマイルちゃんはあんなのもう嫌なのぉ~。 サトリンは鬼、鬼ぃちゃんなの~」


「サトリン、スマイルちゃんに何したの? まさか、あんなことを?」


「フィアちゃん、 そんな大したことはしてないよ。 ただ早く魔物狩りに行きたいっていうから、僕の書類仕事を手伝ってもらったんだ。 思ったより進まなかったけどね、まあとりあえず落ち着いたんだよ」


「サトリは酷いんだぜ。 少しずづ、これが終われば、次はこれが終わればという感じで、延々と仕事を引き延ばすんだぜ。 こんなに時間がかかるなら引き受けるんじゃなかったぜ」


「そうよ。 そうよ~。 まさに鬼畜。 大鬼畜の所業よ~」


「あらまぁ、それはそれは……ご愁傷さまでした。 スマイルちゃんは良く頑張ったわね。 これでサトリンの恐ろしさが分かったんじゃない?」


「……」


「酷いなフィアちゃん。 そんな、分かってるだろ、僕は恐ろしくないよ?」


「 「 「 「   恐ろしいです!!  」 」 」 」


 フィリアさん以外の僕らは、サトリさんの恐ろしさを良くわかっていた。 それを忘れてサトリフィアとか言って絡んだソイツ等は、再教育されたという事なのだろう。


「……何故君たちが僕を恐ろしがるのか理由がよくわからないのだが……、まあここへ来た目的はコイツ等とアスナちゃん達を正式に引き合わせるためなのだよ」


「んじゃ、俺から行くぜ。 俺はガイアってんだ。 VITとHP特化型で、その他STR、AGI、MPもそれなりに鍛えているぜ。 主にダンジョン内のレベル上げでだけどな。 何故かMNDやINTとかDEXは育たないんだよな。 変だろ?」


「そうよアスナちゃん、カインちゃん。 気を付けてねコイツ変だからね。 あまり近づくと変が移るわよ」


「んだとコら! フィリア、お前ふざけた口聞くんじゃね~」


「MNDやINTが育たない病が移ると可愛そうでしょ。 あんた変なんだからね」


「お、おぅ。 確かにそれは移ると困るな……」


「……」


「それじゃ次スマイルちゃんでいいかな? 自己紹介よろしく頼むよ」


「はい!、わたしはスマイルちゃんですぅ~」


「……」


「スマイルちゃん。 終わり?」


「うん。 終わりだよ~」


「……それじゃ、カインちゃんお願いね」


「はいフィリアさん。 僕はカインといいます。 10才です」


「終わり?」


「はい」


「……まぁいいわ。 それじゃ、アスナちゃんお願いね」


「はいフィリアさん。 わたしはアスナです。 8才です」


「終わり?」


「はい」


「……」


「おい! サトリフィア、なんでこんなガキを紹介するんだ? やっぱりお前らの隠し子なのか?」


「そんなわけないでしょ? いい加減にしなさい!!」


「……」


「あ、ああ、そうだね。 ちょっと紹介不足だから補足が必要だね」


「まず、スマイルちゃんなんだが、 STR特化型で、MNDやINT以外はそれなりに育っているみたいだよ。 ……ガイアの育たない病がMNDとINTに移ったのかもね」


「次にカイン君なんだが、……ええとその、<ダブルギフト>があるようでね。 MP量が凄いんだよ。 フィアちゃんにも十分供給できるぐらいにね」


「ほう。 魔力タンク役確保したぜ!ってことか。 それにしても<ダブルギフト>か~。 俺も欲しかったぜよ」


「あんたはMNDやINT育たない病っていう<ダブルギフト>をもってるじゃない」


「フィリアてめえ、さっきからいい加減なことを」


「なによ、 いい事じゃない。 その分他のステータスが育つんだから前衛としては最高でしょう?」


「……? そういえばそんな気が……」


「……」


「最後にアスナちゃんなんだが、やはり<ダブルギフト>持ちでね。 何と、スタンの才能があるんだよ」


「なに? スタンだと~?」


「ガイア、あんた声がでかいんだら近くで叫ばないでくれる? 耳が痛くなるわ」


「こんな幼女が? 天然ものなのか?」


「さあどうなのかしらね、そんなの関係ないじゃないの?」


「天然のなら今後の実力の発展はね~はずだからよ。 そうじゃなくて養殖物なら、サトリだって止められるぐらいには強くなるぜ」


「ああ、それなら僕はもうスタンの洗礼を受けているよ。 アスナちゃんのスタンは実に強力だね」


「サトリンの言う通りよ。 さらにこの前なんか私とカインちゃんのスタン時間を変えることも出来ていたようだから、まだ発展途上ってとこかしらね」


「そうか発展途上か~。 いいじゃね~か、鍛えようがあるってこったな。 どれ、お嬢ちゃんやってみせな? どんなもんか見てやるぜ」


「いや、ここじゃちょっと周囲の方にも迷惑がかかるからね。 裏から林の池の方へ行こう」


 ガイアさんは大分アスナに興味深々だ。 しきりにアスナに手を伸ばそうとするが、アスナはガイアさんが怖いのだろう。 直ぐに距離を取っていた。 

 僕たちは、林の池にやって来た。 結構広し、人気がないのでここなら大丈夫だろう。



「ちょっと、アスナ、僕はちょっと離れてみるから合図したらお願いね」


「カイン兄ちゃん、怖いの?」


「怖いというか、2秒近く金縛りされるのは気分が悪いんだよ」


「私も退避して置くわね。 ガイア、スマイルちゃん、身をもって威力を知るがいいわ」


「フィアちゃん。 僕も退避するね。 どんな状況か観察したいからね」



 僕、フィリアさん、サトリさんは、その場から離れて20mほど退避した。


「も~いいの?」

 アスナからの問い合わせだ。


「も~いいよ~!」



 僕は、アスナに了承の合図を送った。 そして……。



「この裏切者!!!」



 ガイアさんはフリーズした。

 スマイルさんはフリーズした。

 猫さんもフリーズした。

 小鳥さんが数羽落ちて来た。


 僕は少しフリーズした。

 サトリフィア(サトリさんとフィリアさん)も少しフリーズした。


「……」


「こりゃ強烈だな、おい! スゲーわ。 瞬時発動かよ。 飛行する奴とか魔法詠唱する奴とかに絶大な効果があるんじゃないか? 大技を使ってくる奴ににも使えそうだな」


 僕たちは少しフリーズされてしまったことにショックを受けながらも、アスナ達のほうへと歩いていった。 ガイアさんはアスナを撫でようとしていたが、アスナは逃げ続けているようだ。 まるで鬼ごっこのようで凄く微笑ましい。



「この裏切り者!!!!」



 僕らは至近距離からスタン攻撃をうけてしまった。

 その隙にアスナは、サトリさんの蔭に隠れてしまった。

 余程ガイアさんに撫でられるのが嫌で仕方がないらしい。

 まあそれはそうだよな。 なんせアスナの2倍以上の身長で、まるで模型で見たことのあるキングオークの縮小版みたいなのである。

 アスナはガイアさんを見て怯えている。

 ガイアさんも倒れたままアスナを見て顔を青くしてしまっていた。

 今回ガイアさんのスタン時間は約10秒と長かった。 ガイアさんはアスナを追いまわして動き回っていたのだが、その途中でフリーズさせられたのだから派手にコケていた。

 ちなみに僕らのスタン時間はかなり短かったようで、転びそうにはなったのだが何とか踏み留まることはできていた。


「ちょっと、アスナちゃん。 スタン攻撃の技能が上達してない? いままで周囲を巻き込んでいたけれども、今はガイアだけに強く当てたんじゃない?」


「すごぉ~~い。 アスナちゃんすご~い。 ね~もう一度ガイアにやって見せてよ~~。 スマイルちゃん、もう一回見たい~」


「いやいやいや、スマイル、これだダメだ。 突然食らうと心臓に悪いし、今のは洒落にならねーレベルだったぜ。 こんなん実戦で敵に食らったら命とりだぜ」



「この裏切り者!!!!」


 立ち会があろうとしていたガイアさんがフリーズしてまた倒れたしまった。

 フリーズ時間はやはり約10秒ぐらいだ。

 僕たちもフリーズしたが、今度のフリーズ時間は前よりもかなり短い。

 スマイルさんは、面白そうにフリーズ中のガイアさんの頭をペチペチ叩いていた。


「おもしろ~~い。 アスナちゃんもう一回。 もう一回」

「でめえ、スマイル冗談じゃ……」



「この裏切り者!!!!」


 今度は、なんとフリーズしなかった。 


「……」


「ふぅ~ やっと弾切れか。 全く冗談じゃないぜ。 凶悪すぎて話にならんわ」


「ふむ、なるほど、3回は発動できるようだけど、4回目は無理なようね。 ……そういうことならいい機会だからアスナちゃんのスタン攻撃の回数制限や深度そして再使用時間などを調べておくのがいいわね。 それから実戦で練習かな」



 アスナは不服そうにしていたが、自分の攻撃の有効性確認なので文句は言わなかった。 

 そしてその日以降、ガイアさんを実験台にして、アスナのスタンのテストが行われた。

 ガイアさんは嫌がっていたが、魔物との戦いで一番恩恵を受けるディフェンダー役なので我慢して実験に付き合っていた。 もちろん有効範囲の実験では僕なんかも実験台にされてしまっていた。

 そして10日程経過後、アスナの習熟度も上がり、分かったことは以下の通りだった。


(1) スタン攻撃の回数は深度によらず3回まで。 それ以降は回復しないと使用できない。

(2) スタン攻撃の再使用時間は4時間寝ると回復する。 寝ないと24時間経っても回復しない。

(3) 深度時間の最大値は、5秒、10秒、15秒の3種類。.

(4) クールタイムは深度時間の2倍程度。 つまり5秒スタンさせたら、スタンから立ち直って5秒後に次のスタン攻撃ができるのである。

(5) 有効距離は30m程度。 標的を絞ることも出来たし、範囲を指定することもできた。



 スタンの実験が終わり、暫くしてから僕とアスナはフィリアさんたちに連れられて冒険者ギルドに来やってきた。 サトリさんは直ぐに受付へ行きちょっと話をしてからギルドの奥へと消えて行ってしまった。 暫くしてから、かなりの年配で緑の制服を着たギルドの方、恐らくはこの町のギルドマスターを連れて来た。


「やっと、カイン君とアスナちゃんの冒険者資格が許可されることになったよ。 これで見習いでなくて正式なFランク冒険者となったんだ。 そしてこれがその証明タグだよ」


「それからね、これから受けるテストに合格したら仮Cランクのタグが貰えてやっと僕らと行動できることになるんだ」


 この町のギルドマスターを思われる方が、僕達を見つめながら少し不服そうに頷いた。


「この子達が例の子供かね。 ふむ、まあいいでしょう。 テストは受けてもらうがね」



 そうしてサトリさんが僕らを手招きしたので大人しく付いていくことにした。 

 連れていかれた場所はギルドの訓練場だった。 

 そこでは何名かの若い冒険者が緑の制服を着たギルド職員と見られる人の監視のもとで訓練を行っていた。 そしてそのギルドマスターと思われる年配の方がギルド職員を呼び寄せて何かを話すと、冒険者たちの訓練が中止になり、僕たちと一名のギルド職員以外誰もいなくなった。



「さてと、まずはスタンが本当に使えるかを、私にやってもらえるかな?」


「あの~、サトリお兄様。 このマスター をスタンさせてもいいの?」


「私が許可を出すのだから、私が納得する必要があるのだよ。 君はアスナちゃんと言ったかね? 構わないからスタンを私に使ってみてくれ」


「はい。 わかりました」



 僕たちはギルドマスター から距離をとり巻き込まれないようにした。


「じゃお願いしよう」



「この裏切り者!!!!!」



 アスナのスタン攻撃が炸裂した。 最も深度時間の長いやつだ。



 ギルドマスターはフリーズした。  

 そして15秒後、マスターはフリーズから解けると、その場へヘタリこんでしまった。



「こ、これは思っていた以上に強烈だったな。 よし合格だ。 Cランク冒険者として認めよう」


「マスター、この町だけの仮Cランクでお願いします。 この年でCランクだと余りにも目立って危険なので」


「あ、ああそうだったな。 サトリ君。 この町だけの仮Cランクで認めることにしよう」


「……」



「それで、そちらの子は、魔力タンクだったな。 じゃ魔力が吸い取れるかも確認しておきたいな」



 控えてくれていた職員の人は、おもむろに身体強化魔法を唱えだした。

 魔法レベル7の大魔法、 VIT強化Lv7だ。  これで消費したMPを吸収できるかを確かめる気なのだろう。 職員の方が、詠唱が終わると僕に例の魔力移動用の魔銀器を渡してきたので素直に装着しようとして気づいてしまった。 これは言っておかねばならない。


「すみません。 補助具ついてないですよね?」


「ああ、気づいたのね。 でも大丈夫よ。 ゆっくりやるからね」


「……」


 MP移動はやはり痛かったが、かなり手加減してもらえたため耐えられないほどではなかった。 

 でも本気で魔力タンク役になるからには、補助具なしでは耐えられそうにない。



「はい。 移動は問題なく出来ました。 少なくとも私以上の魔力を保有していますね。 合格です」



 そんな経緯で、僕たちは無事に仮Cランクとなり、フィリアさん達との同行が許可されたのだった。 ただし、言っておかねばならない。 宿に帰ったところで僕は強く主張した。



「あの~、補助具なしの魔銀器だと、魔力タンク役は困難ですよね。 今回僕は一人でお留守番ですよね」


「……う~ん、これは困ったな。 補助具自体は作り方が簡単で僕にも取りつけられるんだけどね、問題はDEXタイプの魔核魔石なんだよ。 ある程度の大きさのDEX魔核魔石は一般には流通してないから……厳しいね」



 よし、これで僕は危険なツアーに参加しないで済む。 

 アスナよ、君は逃げられないんだから精々活躍してくるがいい。 

 僕は薄情にもそう思ってしまった。



「サトリお兄様。 魔石ってどういうの?」


「ああ、茶色の魔核魔石だよ。 魔銀器に取りつけるサイズは最低でも2cmのサイズは必要だね」


「えっと、これですか?」


 アスナは、空間倉庫から茶色の魔核魔石を取り出して見せた。 サイズは3cm位だ。

 ちょっ! アスナ余計なことをしなくても!


「おお~ 凄いねアスナちゃん。 やはり元伯爵令嬢だっただけあるね。 これで痛く無い魔銀器ができるよ。 それでは加工しておくね」



 サトリさんは、アスナから魔銀器とDEX魔核魔石を受け取ると、外出して行った。


 うげぇ~ 僕も逃げられなくなっちゃったみたい。 

 僕は魔核魔石を取り出したアスナを呪うような目で見てやった。

 きっとアスナはもっと魔石を持っているに違いない。 こうなったら、予備も作ってもらちゃおう。 あんな痛いのは二度とごめんだ。  


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