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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第四章 アシエラプトル編
40/65

40. 問い詰められる

  僕は目を覚ました。


  ここは? 


  どこなのだろう。 ぼやけた意識が次第に鮮明になってくる。 

  ああ、宿の中か。 宿の中に寝かされていたのか。

  僕は起き上がり、周囲を見回した。 外は暗くなっている。 あの戦闘から数時間が経過しているようだ。


 ぐぅ~。 僕のお腹が食事の要求を突きつけて来た。 



「カイン兄ちゃん やっと起きたの? いきなり寝ちゃったから心配したのよ}


「いや、寝たわけじゃないよ、意識を失ったんだ」


「でも、今まで寝てて起きたところなんでしょ? じゃ寝ちゃったってことじゃない」


「……そうか寝てたから寝ちゃったってことか……。 いや何となく違うような気がする」


「ふっふっふ。 お兄ちゃんの誤魔化し方が分かってきたような気がするわ」


 コ、コイツ、分かって僕をからかってたのか! 何となくだんだん扱いづらくなって来ているような気がするな。 いや元々扱いづらかったのかもしれない。



「はぁ~、何だよも~。 僕はお腹空いたよ。 ご飯食べたいな」


「あ~そうだ。 フィリアさんが呼んでたわよ。 聞きたいことがあるんですって」



 うぁ~、それはそうだよな。 これは色々と追及されてしまうんだろうな~。 フィリアさんはともかくサトリさんじゃ流石に誤魔化しきれないな。 これは覚悟しておこう。



「いや僕はご飯が食べたいんだけど?」


「だって起きたらすぐに連れてきなさいって言われたもの。 まさか逆らうの?」


「……じゃフィリアさんの部屋まで連れて行ってよ。 ここはどこの宿なの?」



「えっとね。 前泊ったイカレポの町の宿屋よ?」


「ええー、来た道を戻っちゃったのか~。 なんで戻ったんだ? どうせなら次の町で泊ればよかったのに~」


「それは、フィリアさん達に聞いて。 私にはわからないわ」



 僕はフィリアさんの部屋までアスナに案内されてやってきた。 流石に新婚さんなんだから、いきなり部屋へ入ったらヤバイかもしれない。 僕はドアをノックしてから、ドア越しに尋ねてみた。



「カインです。 僕を呼んでいたそうなのでお伺いしました。 今よろしいでしょうか?」


「は~い。 ちょっと待ってね。 …………はいどうぞ~」



 僕は部屋に入って行こうとしたところで、アスナが帰ろうとしたので捕まえた。



「アスナ、何逃げようとしてんだよ。 僕たちは一連托生じゃないか」


「何言ってんの? 呼ばれたのはカイン兄ちゃんだから、私は帰るのよ」


「あ~、アスナちゃん。 丁度いいから、下の酒場へ言ってサトリンを呼んできてくれる?」



「 「 サトリン? 」 」



「あ、いえ。 サトり君を呼んできてほしいの」


「はい、サトリンを呼んできま~す」


「ちょっと待てコラ! アスナちゃん、私を嘗めてるの?」


「い、いえそんなことは決してございません。 私アスナはサトリさんを呼んで参ります」


「よし! 行ってらっしゃい」



 二人の時はサトリンって言ってるのか~。 何となくこの夫婦のイメージと違うんだけどプライベートはそんなものなんだろうか。



「それで、何の御用でしょうか?」


「カインちゃん、しらばっくれても駄目よ。 分かっているでしょう? 詳細はサトリン、……サトリ君が来てから聞くとして、先ずはあれからの事をお話しておくわね」


「はい。 ヴァイタリさんは無事だったのですよね?」


「そうよ。 問題なく回復したわよ」


「よかった~。 欠損回復魔法を詠唱していたから大丈夫だとは思ってたんです」


「それよ! 問題は」


「何でしょう? 何かおかしなことを言いましたか?」


「はぁ~、これだからこの子は……」


「なんだか分からないですが、結局どうなったんでしょうか」


「あの後、アシエラプトルを倒したのは知っている?」


「護衛パーティの歓声が聞こえたので、倒したなとは思いました」


「そうなのよ。 またそれからが大変でね。 なんと魔核魔石が取れて大騒ぎだったわ」


「そんなに凄かったんですか? 高価ということですか?」


「そうよ。 あんなに大きいDEX魔核魔石だと数千ギリルぐらいになるかもね」


「そんなにでしたか。 それで被害の方はどうだったんですか?」


「ああそうね。 被害者は、最初に襲われた二人だけだったわ。 後は無事ね。 あのアシエラプトルが襲ってきたにしては被害は最小限に留まったと言えるわ」


「そうなんですか……。 その二人にはレイズも効かなかったんですか?」


「えっとね。私はMP不足だったし。 あの状態じゃ、攻略組織の治療小隊が関与でもしなきゃ無理だったわよ。 少なくともレイズ役1名と欠損回復役が数名ね。 そうして蘇生とほぼ同時に治療するのよ。 そうしないと、またすぐにHPがゼロになっちゃうからね」


「つまり蘇生から直ぐに治療魔法がヒットしなければ蘇生が無駄になるという事なんですね」


「そういう事よ。 訓練を重ねてタイミングを合わせられるようなチームじゃなきゃ無理ね」



 そういう事ならば、僕がレイズと欠損回復を覚えれば、連続魔法で一人で何とかできるのかもしれないな。 ふっふっふ。 僕なら攻略組織のトップ治療師も夢じゃないな。



「なるほど分かりました。 それで、なんでこのイカレポの町に戻って来たんですか?」


「ああ、それね。 あんな魔物が出たんだから、街道が通行禁止になるからよ」


「それにしても、戻らなくても良かったんじゃないかな」


「こちらの町の方が近かったし、首都のギルドとかに報告する必要があったからよ。 あの規模の魔物じゃ攻略組織か、最低でもその補欠パーティぐらいは動かさないと危険だもの」


「なるほど~。 でも、先の町はこのことを知らないですよね。 知らせないと危険なのでは?」


「それは、あの護衛パーティに任せたわ。 少々危険だけれども、彼らの責務でもあるから仕方がないのよ」



「カインちゃん、それにね、ヴァイタリとスティンガには休養が必要だから帰ってもらったのよ。ついでに首都ギルドへの報告書を持ってね」


「うぁ、最後までコキ使うんですね。 容赦ないですねフィリアさん」


「私の判断じゃないわ。 サトリン……、サトリ君の判断よ。 ま妥当な事だと思うから気にしないで」


「そうですか。 サトリンの判断でしたか」


「貴方ね! そのサトリンっての、絶対に彼の前で言わないでよ。 怒ったら怖いからね!」


「……怒るような人に見えないですけどな~。 まぁ怖いのは身に染みてわかってはいますけど」


「そうね、表面上は怒らないわね。 怒らないけど、居なくなるのよ」


「どういう事なんです?」


「一人でダンジョンに潜るのよ。 そして大暴れするみたいよ」


「ひえ~、それは恐ろしいです。 絶対に言わないようにします」


「よろしい! 以上よ。 何かある?」


「いえありません。 ありがとうございました。 では僕はこれで失礼します」



「……ちょっと、逃がすわけないじゃない。 嘗めてるの?」


「いえそんなことは全然ないです。 僕ご飯を食べてないのでお腹が減って死にそうです。 だから食堂へ行こうかと思って……」


「あら、そういえばそうね、何も食べてないのね。 それじゃ私たちの食事の余り物でよければ、ここで食べて行きなさい。 今回色々あって大変だったから、豪華な食事を持ってきてもらったんだけど、とても食べきれなかったのよ」


「いえ、僕は食堂で食べたいです」


「今食堂は酒盛りで大変よ? それに皆に聞かれたいの? 私達はそれでもいいけど?」


「……喜んで余り物を食べさせてもらいます」



 僕はフィリアさんたちの余り物を食べさせてもらった。 いや~、結構豪華で美味しかったです。 量も多かったから余り物も余らせてしまったけど、これって後どうするんだろう。 ご飯を食べ終わって一応満足したのだが、アスナたちが戻って来ない。



「そういえば、サトリさん戻ってきませんね。 どうしたんでしょうか」


「そうね、いろいろ手続きとかがあるから、大変なんじゃないかな。 私は関わりたくないから任せてるのよ」


「それにしても……」


「よし! それじゃ、一発ショーギゲームしましょうか~。 今度は勝たせてもらうわよ」


「嫌です。 フィリアさん弱いから、面倒臭いです。 サトリさんと一緒にやればいいじゃないですか」


「サトリは強いから、嫌なのよ。 悔しいのよ。 我慢ならないのよ」


「そんなにですか。 でも僕も強いですよ?」


「貴方ならいいのよ。 多少負けても我慢できるというか、楽しい範囲なのよ」


「そんなもんですかね。 僕にはわからないです」


「そんなもんよ。 カインちゃんは分からなくていいのよ」


「わかりました」


「……」


「じゃ~やりましょうね。 カインちゃんは飛車角抜きね」


「えええ? そんなんじゃ、……どうだろう、とりあえずやってみましょうか」



 それから将棋の対戦が始まったわけだが、僕は善戦したものの僅差で負けてしまった。



「うぉぉぉ~~。 久々の勝利ぃ~~~~。 いや~勝つと爽快ね」


「そんなに喜ばれると、悔しいけど嬉しい気がしてしまいますね」



 その時サトリさんがアスナを伴って帰って来た。


「お~、盛り上がってるね君たち。 フィアちゃん、もう例の件は済んだの?」



「 「 フィアちゃん? 」 」



「あ、いや フィリア、例の話は聞いたのかい?」


「い、いえ、まだよ、サトリ君を待ってたのよ。 遅かったわねどうしたの?」


「いやね~、この町のギルド長に絡まれてしまってね。大変だったんだ。 ごめんねアスナちゃん、折角呼びに来てくれたのに結構待たせてしまったね」


「いえいえ、お兄様、私は全然大丈夫でした。 結構面白かったですし。 ……ではこれで失礼します」


「ダメだよ アスナちゃん。 一緒に聞かせてもらわないとね」


「……」



「それでは、色々と教えてもらいましょうか、カイン君、いいね?」


「……」


「まずは君達の本名なんだけど、カイン君はアレン君、アスナちゃんはエミリ様で間違ってないね? そして二人とも空間倉庫を持っているんだね」


「 「 はい 」 」


「では、君たちは魔法が使えるようだが、説明してもらえるだろうか」


「私は何も知らないです。 無実です。 全部お兄ちゃんがやりました」


「ちょっ、アスナ! 僕が魔法を使えるのは事実ですが、アスナはそれを知っています。 知らないなんて嘘です。 共犯者です」


「カイン兄ちゃん酷い、私を巻き込まないでくれる? 全て兄ちゃんが原因じゃない」


「アスナ何を言ってるんだ、発動するための回路を発見したのはアスナじゃないか」


「知らない。 知らないわよ。 そんなの証拠でもあるの?」


「証拠は無いけどサトリさん、コイツ嘘付きです。 僕だけがやったわけじゃないです」


「カ、カイン兄ちゃん。 そ、そんなに私を巻き込みたいの。 これは裏切りだわ。 この裏切r…」


「あ~、あ~、あ~! ダメ! ダメ! アスナちゃん、それはダメよ!」


「……」


「アスナちゃん。 本当に何も知らないのかい?」


「……えっと、嘘つきましたごめんなさい」


「ほら。 アスナが認めた!。 僕の方が正しいんだ。 アスナが悪いんだ」


「……カイン君、アスナが悪いのかい?」


「……いえ、僕がほとんどやりました。 アスナは悪くありません」


「……」

「……」


「君たちが何を心配しているのか分からないけど、別に何か取って食おうとしているわけじゃないよ」



 僕とアスナは怯えている。 何が怖いかって、サトリさんが怖いのだ。

 そんなニコニコ顔で睨まないでほしい。 動揺してあらぬことを口走ってしまいそうだ。



「サトリン、……サトリ君。 この子たち怯えているじゃないの。 私が変わって質問するわね」


「フィアちゃん、……フィリア、僕はそんな怖くした覚えはなんだけど、なんでだろうな」


「サトリ君、 あの死にたがりアクションを見せつけた癖に、その言い訳には無理があるわ。  何の警告もなく真顔で爆裂魔法を放つなんて、カインちゃんが教えてくれなければ、明らかに何名か消し炭にしていたわよ!」


「いや僕はフィリアがMP切れになりそうだったから、必死で何とかしようとして……」


「一言私に言ってくれればよかったのよ。 どう見たって非情な所業よ、アレは」


「き、気が動転してしまってね。 つい攻略組織と一緒に戦ってるつもりになってしまったんだ」


「それは、言い訳よ。 反省しなさいよね」


「分かったよ。 僕が悪かった……」



 僕らは、フィリアさんにやりこめられるサトリさんの姿を見て、少し落ち着きを取り戻すことができた。



「あの~、すみません。 夫婦喧嘩はその位にしておいた方が良くないですか?」


「……」

「……」


「カインちゃん。 前から思っていたけど。 貴方って大物よね。 つかみどころがないわ」


「そんなぁ~、褒められても困ります」


「……」



「では、聞くわね。 魔法を使えることは分かりました。 貴方って何者?」


「何者と言われましても、僕はアレン、またの名をカインという10才児です」


「魔物とか魔族ではないのね?」


「ええっ? 僕って魔物に見えるんですか? こ、この服が悪いのかな。 これはアスナに選んでもらったんです。 ということはアスナが魔物?」


「カイン兄ちゃん! この後に及んで見苦しいわよ! 潔く白状しておしまいなさい!」


「いや、アスナがこんな服着せるから悪いんじゃないか。 おかしいと思ったんだよ。 何でこんな柄の服を……」


「ちょっと。 カインちゃん、アスナちゃん。 いちいち話をややこしくしてくれるの、や・め・て・も・ら・え・る・か・し・ら!」


「……」


「だってアスナが……」


「だって じゃありません。 いい加減怒るわよ!」


「……」



「それで、カイン君は、魔物や魔族ではないのだね?」


「は、はい。 僕はれっきとした人です。 普通の子供です」


「……」


「では、続けます。 カインちゃんはどうやって魔法を使うの? 詠唱も無いみたいだけど?」



 遂にこの時が来た。 <BRDギフト>持ちの秘密について白状しなければならないのだ。 僕は覚悟を決めた。  この人達ならば信用できるだろう。


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