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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第三章 サトエニア共和国編
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28. 囮作戦

 作戦は小学校に囮として編入して賊のアジトを知らせることだった。  僕からの条件は僕らの保護者代わりになる協力者を2年間雇うことと、僕らが安心して過ごせるよう身分の証明をしてもらうという内容だった。

 ちなみにアスナ(エミリ様)はこの作戦部隊から外してもらっている。 口撃力があり優秀なのだが、さすがに危ないとの理由で、 小学校へは通わずにに図書館で過ごすことにしてもらったのだ。  


 程なくして僕は町立の小学校へ編入した。

 編入試験は受けたが当然満点だった。 僕は9才だったが、試験成績の結果を受けて12才の特進クラスに入ることになった。 

 何時攫われるかもしれないので、空間倉庫はパンツの内側に縫い付けてある。 空間倉庫の存在がバレたら只では済ま無いのだから、外しておこうとも考えたが、こんな便利なものはすでに手放せなくなっていた。

 また僕のフサフサな髪の毛の中に作戦用の魔道具を隠し持つことになった。 非常にイヤだったのだが、僕の髪を一部切り取り頭皮をむき出しにしてから、この魔道具を貼り付けた。 つまり僕は一時的とはいえ十円ハゲを持つ9才児になったのだ。 当然だがそのハゲを隠すために魔道具には髪の毛を貼り付けている。 つまり僕は部分カツラをつけた9才児になったのだ。


 僕とアスナは念願の保護者を得ることができた。 

 保護者はセリーナさんという名の中年女性で、宝飾品加工の仕事をしている元冒険者だそうだ。  どうやらあの怖いお姉さんの血縁者らしい。 保護者を得たことで、アスナは堂々と図書館に通うことができるたし、僕もいろいろと気にせずにBRDの研究に専念できるようになった。



 山の中のBRD研究で、<論理回路ボード>の二等辺三角形が、NANDゲートであると分かったため、次は他のゲート素子を作ること、つまり、NOT、AND、OR, XOR, NOR を作ることに取り組んだ。 最初は苦労はしたが、要領を掴んだあとは割とすんなりと作成できてしまった。 青丸印と赤丸印を発現させる回路の見直しにも取り組んだ。 結論としてそれらはNANDとNOTを使って簡単にできてしまった。  赤丸印は、NAND一つとNOT一つ、 青丸印は、赤丸印をNOTで実現できたのだ。 


 次の段階で取り組んだのは、マルチプレクサという、電話の交換機みたいな回路だ。 僕の不思議な知識によれば、それはNANDゲートの組み合わせでつくれるはずなのだ。

 マルチプレクサの最も単純な回路は入力が2つ、制御線が1つ、出力が1つというものだ。

 これは必死になって数日集中して考え続けて最終的にはNANDゲートを4つ組み合わせて2入力1制御のマルチプレクサをつくることができたのだった。

 さらにこのマルチプレクサをシリアル接続するすることで、4入力2制御、 さらに3つ多段接続することで、8入力3制御、 4つ多段接続することで、16入力4制御のマルチプレクサを作成した。

 この段階で、僕の<論理回路ボード>の中の基本論理回路は以下の通りとなった。


 青丸印発現回路

 赤丸印発現回路

 NAND

 NOT

 AND

 OR

 XOR

 NOR

 1ビット 2入力1制御線のマルチプレクサ

 1ビット 4入力2制御線のマルチプレクサ

 1ビット 8入力3制御線のマルチプレクサ

 1ビット 16入力4制御線のマルチプレクサ


 さらに1ビットのマルチプレクサを並列に接続して、16ビットのマルチプレクサ、 そして32ビット、64ビット、96ビットのマルチプレクサも作成しておいた。 これらは、修練魔法が16ビット、下級魔法が32ビットなどであることに備えてのことだ。 96ビットの16入力4制御線のマルチプレクサなんかは見た目では一体なんであるかサッパリわからないぐらい複雑になってしまっていた。


 これらが今の段階で必要なのかといえば否だ。 

 だが将来的に魔法を発動できるようなボードが得られれば、魔法に必要となる16個の青丸赤丸パタン列、32個のパタンの列、 言い換えれば、16ビット信号、32ビット信号を、回路で切り替えで選択できるのだ。 

 もっと分かりやすく言ってしまえば、僕は回路の切り替えで無詠唱即時発動の魔法行使を夢見て準備したということだ。




 入学してから一か月が経過した。僕は小学校に通い続けている。 

 座学は全く僕の相手にはならない。  座学の間は、ぼ~とした顔をして、頭の中でBRDの研究を続けていた。 そのため周囲には、”目を開けたまま寝ている” という特技の持ち主として知られるようになっていた。

 小学校における授業は、座学だけではない。当然体育も芸術関係もあるのだが、それらでも僕は優秀だった。 ステータス自体は年齢相応で低いのだが、今の段階ではそれらは他の児童と変わらない。 僕は烈古武術流で修行したことがあり、技の修練はほぼ毎日していたので、その分だけ皆よりも体力的にも技的にも先に進んでいたのだ。

 また、絵を描かされる授業とかも、<図面記録ボード>の写真を真似て優秀だったし、歌については、……それによって人気者になれていた。



 そして僕の研究の興味は<発動ボード>に移っていた。 

 今までの研究で無意味な<ボード>は、この<発動ボード>だけだったし、<発動ボード>は見方を変えれば魔法の出力を司る<ボード>とも解釈できたからだ。 もしこの<発動ボード>へ今まで<論理回路ボード>で開発した回路を接続できれば、BRDの僕でも魔法が使えるようになるかもしれないのだ。 しかしこの<発動ボード>の研究には難航していた。 有るのか無いのか分からない物をひたすら探し続けることは思ったよりも精神的に負担がかかる作業だった。



 さらに一か月が経過した。

 小学校生活は相変わらずだった。

 また放課後も相変わらず、僕は執拗に<発動ボード>を探求していた。 自分で言うのも何だが病的なまでに研究に固執していた状態だった。 

 この間、アスナが<文字記録ボード>と<図面記録ボード>との相互リンク連携の発見を達成していたことが唯一の明るいトピックスだった。 

 これによって表面上の能力として、アスナは僕と同等になったのである。


 僕は念のために、今までの研究成果をすべてアスナに教えてあげていた。 <配線ボード>、そしてその先の<論理回路ボード>の知識についてだ。  論理回路の話については正直引かれてしまったが、目指す夢について話てあげると希望に目を輝かせていたのが印象的だった。

 もし仮にBRD持ちの僕が夢半ばで倒れてしまったとしても、アスナは生き残って僕の夢を引き継いでほしい。 そしてこれから生まれてくるBRD持ちの希望となってもらいたいのだ。

 僕は<発動ボード>の研究を執拗に続けた。  夢を叶えるために、そして生き延びるために。



 そして遂にその時が来た。 

 つまり僕は拉致されたのである。 それは休み時間にトイレに行った時だった。 

 トイレには先生と僕の二人きりだったが、その先生にいきなり殴られたのだ。

 気づいたときには、知らない部屋の中でまたも拘束衣と猿轡とかまされて監禁されていたのだ。

 僕はそんな環境でも、時間を有効活用しようと、研究に専念していた。


 そうやって頭の中で研究に専念していると、暫くして頭の悪そうな二人組がやって来た。



「なんだこのガキ、ぼ~っとした顔しやがって、頭変なんじゃないか? 攫ってくる相手をまちがえたんじゃないか?」


「いや、こいつだったと思うぜ。 遠くからターゲットを確認したから間違いない」


「全く胸糞悪い仕事だぜ。 早く借金から解放されて自由になりて~」


「仕方無いなこれは。 借金つくった俺たちが悪いんだよ。 それにしてもあの賭博いかさまだったんじゃないのか?」


「ほんとそれな! それにしてもこんなガキ攫ってどうしようってんだ?」


「何でもな使用人隷属者にするためなんだと」


「隷属者なら大人でもいいじゃねーか。 なんでガキなんだよ」


「あーそれはな。 なんでも修練させねーためだそうだ」


「修練させないだと? そんなんじゃ隷属者として役にたたんだろ」


「いや、隷属者頭にするんだと」


「なんでだ?」


「隷属者って命令されたことしかやらないし、それ以外はサボるだろ?」


「おぅ、まあそうだな」


「だがステータスを上げて無い隷属者が解放されたらどうなると思う?」


「生きていけないだろうな。 魔石を買ってステータス上げることができれば別だけどな。 魔石高けーしな」


「だからな、ステータスの低い奴は放り出されないように一生懸命働く隷属者なるわけだ。 そして隷属者頭なら頭がいい方が都合がいいってことだ」


「ふぇ~ えげつねーな。 このガキが可愛そうになってきたわ」



 本当に胸糞が悪くなる。 まったくも~、可愛そうならせめて縛めを解いてくれないかな~。 なんで人攫いは僕のようなひ弱な児童にここまでやるんだろうか。


 ほどなくして、人力車に乗せられて移動が始まった。 今度の奴には、トイレ休憩とか食事で虐待されることはなかった。 そして袋に入れられての移動が2日ほど続いて、僕は山の中へ連れ込まれてしまったのだった。


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