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ペナルティギフトと呼ばれたBRD  作者: 猫又花子
第一章 アタスタリア王国編
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2. 文字記録ボード

 それから元気を取り戻した僕は目立つぐらい本気で本を(あさ)り始めた。 

 <文字記録ボード>に本を取り込むためである。 

 これから<BRDギフト>の研究を行うための下準備なのだ。

 そして家に飾ってあった本や、僕の店で売られている本だけでは飽き足らず、町の図書館にも入り(びた)ったのだ。 


「アレンちゃん、また来たのね。 本を手に取ってパラパラ(めく)るのが趣味なんて…将来がとても楽しみだわ」

「お姉さん。 一人で本を上下逆さまにして読むなんて、僕より上級者じゃないですか?」

「上級者だなんて、アレンちゃんはもうお世辞が使えるのね」


 いや、お世辞を言った覚えはないのだが、この司書の変態おばさんは何を勘違いしているんだろう?


「お、おば……お姉さん。 僕もその逆さま読みの技を覚えてみたいな~」

「あら、簡単よ。 こうやって対面に座って。 相手に読んであげれば、ほら逆さまに読むことにになるでしょ」


 こ、これは変態の技じゃなくて、読み聞かせのプロの技を極めた結果なのか! 

 僕は衝撃をうけて愕然(がくぜん)としてしまった。

 これじゃおばさんよりも僕のほうが変態の上級者じゃないか。 

 (はか)らずもちょっと敗北感を味わってしまった僕はこの場から逃げたくなってしまった。


「あ、ありがとうございます。 大人になったら精進してみます」

「期待しているわよ。 今は本に触ってくれるだけもで他の子よりも有望よ。 その内ちゃんと読んでみてね」

「はい、その内ちゃんと読んでみます」


 実はこの有能なおばさんの指摘は的を射ていた。

 僕はパラパラと本のページを(めく)って<文字記録ボード>へ内容をコピーしていたのだが、その文章を本当の意味で読んでいるわけでなく、理解もしていないし覚えてもいないのだ。

 今の僕は知識を貯めるのが優先だからこれでいいはずだ。 

 ……あれ? でもこれって知識を貯めていることになるんだろうか? 読んで理解しなければ活用できる知識にならなんじゃ? …まあいいや、後で読めばよいのだ。 

 興味あることを優先で、面倒事は後回し、それが僕のポリシーなのだ。



 今日も僕は本をパラパラ捲って、内容を<文字記録ボード>にどんどんコピーしている。 

 そしてついに魔法の解説書と思われる<魔法大全(まほうたいぜん)>という背表紙の本を発見してしまった。 


 おっとこれは僕の研究にとって重要な本なのでは? そう思ったので今度はちゃんと中身も見てみることにした。


 その本には<ギフト>やステータスの説明、魔法パタン――青丸と赤丸を一列に並べたパタン、が描かれていて、その数は数十種類もあった。

 その本には16個の丸印のみの修練(しゅうれん)魔法のパタンは勿論、 32個、48個、64個、80個の丸印パタンが(しる)されており、下級魔法から極大魔法までの魔法とその解説が網羅されていた。

 この本はとても重要だと思われたので、間違って消してしまわないように同じ内容を<文字記録ボード>の2か所に分けてコピーして置くことにした。 

 勿論本当の意味で理解して覚えるのは後回しだ。 



 本のコピーを進めて何冊めだろうか分からなくなってしまった頃、ある日気づくと<文字記録ボード>が凄いことになってしまっていることに気づいてしまった。 

 コピーした量が多すぎて、もう何処に何があるのかが分から無くなってしまったのだ。


 まさか折角本の文字を沢山コピーしたのに、無駄な努力だったの?  僕は気づかずに多くの時間を(つい)やしてしまっていたかもしれないと考えてかなり動揺してしまった。 

 このままじゃ駄目(だめ)だ。 調子に乗って手当たり次第に本をコピーしまくりであったのだが、これは一旦整理整頓が必要なのかもしれない。

 重要な本のみに限定して消してしまった方がよいだろうか…。 でも折角コピーしたのにもったい無いよな。


 そう思って<文字記録ボード>の中身を、試行錯誤して何とか使えるようにしようと頑張ることにした。 

 コピーで貯めた大量の文書を何度も諦めて消しかけたのだが、僕の勘が文書を消すな、まだ諦めるなと(ささや)き続きていたので、僕としても驚くほど執拗に頑張ってしまった。

 そして、いい加減に疲れてしまい諦めかけた時に、<文字記録ボード>にはカットやコピーとは別の(かす)かな感覚操作があることに気づいたのである。 

 それは本の背表紙のタイトルのように、一行目のみを表示してその他は隠せるという、索引を作れる感覚操作であった。


 やった。 何か発見してしまったぞ。 僕って天才?

 これができるなら、もっと何か他にあるんじゃないか?  


 僕は調子に乗って索引を沢山作り、その索引を更にまとめて隠せるかにもチャレンジしてみた。 そしてそのチャレンジを開始して30分ほど経過した時に、パソコン上のデータファイルをフォルダ分けして保存するように、<文字記録ボード>にコピーした文書を階層(かいそう)的に管理できることも発見してしまったのだった。 

こ れらの便利機能を知らなけば、記録を活用できるように整えるするために大部分の文書を消さなければならなかったところだ。

 <文字記録ボード>にこんな便利機能があることは、<ギフト>に関する常識にも無かったし、<魔法大全(まほうたいぜん)>での<BRDギフト>説明にも記載されていなかった。


 これはもしかしたら、<文字記録ボード>に他にももっと知らない機能を(さが)せるせるかもしれないな。

 僕は()りつかれたように、<ボード>の研究調査にのめり込んだ。 

 不思議な世界の記憶にあるパソコンやスマホを思い浮かべながら、()ったらいいなと思う機能をいろいろな視点から調査を始めて1週間経った頃、ついにネット検索のようにキーワードを指定しての検索機能まで発見してしまったのである。 

 索引と階層的な管理、そして検索、これらが在れば、<文字記録ボード>の記録データをいくら増やしても活用できる。


 やった~。 これで文書に書かれていることを覚えなくても<文字記録ボード>にコピーだけで十分知識として活用できるな。 

 へっへっへ。 これで勉強しなくても賢くなったのと同じなのだ~。

 

 僕はやっと<文字記録ボード>の機能に満足できたのであった。

 考えて見ると、そもそも検索とは不思議な世界の記憶では当たり前の言葉だったのだが、この世界ではスマホはおろかパソコンやインターネットも無いので概念自体が一般的ではなかったのかもしれない。

 もしかして、過去のBRD持ちは、これらの便利機能の存在を発見できなかったために、<文字記録ボード>の記録データを活用できず、生きた図書館ともいえる知識の大家(たいか)になれなかったのではなかろうか。 

 僕は改めて<ボード>を深く研究し理解することの重要性を感じたのであった。


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