07 一人目
新宅で初めての夜を迎えてから一週間、俺は順調に生活基盤を整えていた。
一番に作ったのはベッドだ。大工道具を取り出し、丸太を板材へと加工するのは、思ったよりも大変だった。
けれど、その様子を見たルーヴが興味を持ったのか、見様見真似で鋭い爪を使って、俺よりも綺麗に板材へと加工するもんだから、あまりの器用さに驚いたもんだ。
おかげで、あとは組み合わせて釘を打ち、質素ながらも寝心地の良さそうなベッドが完成した。
次に取り掛かったのは、台所周り。
いつまでも焚き火で調理するわけにもいかないし、かまどが欲しかった。
井戸も欲しかったが、水は森の沢に汲みに行けばいいので、後回しだ。
ルーヴと森の中へ入れば、良い石が切り出せる場所がある。そこで石を切ってブロック状に加工……。
さすがに木材と違い、なかなか大変そうだと思い唸っていれば、「これをどうしたいのだ?」と問うようにルーヴが俺を見てくる。
まさかと思ったけど、切り出したいと説明すれば、またもや爪で石を寸分違わぬレンガのように切るものだから、何でもありだなと逆に呆れたもんだ。
帰りに接着用の土を集め、組み上げれば、パン焼に使えるものと、煮炊き用のかまどのふたつが庭に現れた。
そういや、勝手に庭って思ってるが、使って良いんだよな……?
しかし、村人との面倒事はごめんだし、広げるなら今後は森方向にしよう。
食料も問題だが、それはルーヴが森で狩りをしているので、とりあえず困っていない。
問題は、野菜が足りない事くらいか……。ルーヴはいいだろうが、さすがに俺は肉ばかりじゃ、胃がおかしくなりそうだ。
「やはり、畑を作って野菜を育てたいな……」
そう思いたち、とりあえず場所を確保しようと木を切り倒したのが昨日。
根の処理が大変だと思っていたが、ルーヴが泥だらけになりながら掘り起こしていた。
大きささえ気にしなければ、子犬が水たまりで遊んでるような様子なんだけどな……。
そうして、さすがに一人と一匹でやれる限界だと思い、俺は今日村へと旅立つことにした。
今までも何度か買い出しに行こうとしたのだが、そのたびにルーヴのクゥクゥ攻撃にあい、断念していたのだ。
けれど、さすがに有能すぎるルーヴだって、野菜の種は持っていないだろう。
俺は今度こそ、甘える鳴き声に打ち勝ち、村へと向かわねばならないのだ。
「というわけでだな、お前は留守番していてくれ」
返事はキュゥ〜……、という見た目からは想像できない情けない声。
「そんな顔したって、連れてってやれないんだよ。
お前をみると、村の奴らが怖がるだろ?」
伏せの姿勢から、顎を地面に付け、そして上目遣い。
こんなにかわいい狼を、誰が怖がるの? そんな声が聞こえそうな姿勢だ。
「ダメダメ、お前は留守番だ。いいな?」
姿勢は変えず、甘えるような視線を、不貞腐れたように他所へ移す。
そしてブォンと尻尾で地面を擦り、不服だという態度を示した。
まったく、ここまでべったりと甘えてくるとは、村の守り神が聞いて呆れるな……。
そう思いながら、俺は村へと向かったのだった。
村に入る時、後ろを振り返り、ルーヴがついてきていないことを確認する。
さすがに、俺に迷惑がかかるとわかっているのか、無理矢理についてくることはなかった。
一安心した俺は、店々を周り、当分の食料(主に野菜)、畑に撒く種、そして日用品を買い込む。
持ってきたリュックがいっぱいになり、その上で両手にもパンパンの袋を持っている。
すでに日は沈もうとしていて、あまり遅くなるとルーヴが村を襲撃しかねないと、急いで家路につく。
けれど、あやうく家と反対の方向に出そうになり、巡回中の兵士に止められなければ、そのまま迷子になるところだった。
この方向音痴は、本当になんとかしたいものだ。
そんな無駄足もあったが、俺は家へとたどり着く。
けれど、そこにルーヴの姿はなかった。
まさか、俺が遅いから探しに出たのかと思い、駆け寄って家の周りをぐるりと歩いても、あの巨体が見つからない。
どうしたものかと頭を抱えていると、家の扉が開き、声をかけられたのだった。
「おかえりなさいませ、旦那様」
そこには、黒く艶めくツインテールを揺らし一礼する、メイド姿の少女が立っていた。
7話目にしてようやく一人目加入ですよ!
あ、元々加入してましたね。そうですね。
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