69 問題山積
ブラッドムーンを乗り越え、なぜか新しいメンバーが続々入荷した朝。
本来なら疲れたし、ぐっすりと眠ってしまいたいところではあるのだが……。
「6人分の食い扶持どうすんだよ!」
と、眠りに落ちる寸前に飛び起きてしまったのだ。
いや、これはテイマーのサガってやつだ。
自分自身はともかく、使役している動物たちを飢えさせたくない。そう考えてしまうものなのだ。
一般的にもそうなのかは知らん。
「師匠? どうしたんだよいきなり」
俺と同じく、リビングに敷いたブランケットに丸まって、眠りに落ちようとしていたクロウがむくりと体を起こした。
そりゃ、俺が急に叫び出せば、そういう反応にもなるだろう。
「スマン、起こしちまったな」
「いや、それはいいんだけどさ。それに、まだ興奮してて寝付けえねし」
「そうか……」
あれほどの戦闘の後なら、落ち着かないのも無理はない。けど、それ以上に疲れているはずなんだがな。
「クロウは寝ててくれ」
「いや、なんかやることあるなら手伝うけど?」
「これは俺の仕事だし、巻き込むつもりはねえよ」
「旦那様ったら、水臭いですよっ!」
「うわっ!? ルーヴ!? お前も起きてたのか」
「そりゃもう、起きてないといつ抜け駆けされるか……。
じゃなかった! 旦那様のためなら、24時間年中無休ですよ!」
「それはそれで、逆に気を使うからやめて欲しいが……」
「ですが、何か問題があればお手伝いしたいのが、わたくしどもの総意ですわ」
「タツミも起きてたのか……。いや、いつのまに全員揃ってたんだ!?」
見回せば、リビィ含め全員が集まっていた。
こう囲まれてちゃ逃げられねえし、なによりこいつらは動物とは違う。
何もできず見ているよりも、手伝いたいと思うものなのだろう。
頭をぽりぽりとかく俺に、遠慮気味にリビィが問いかけてきた。
「それで……、何が問題なの……?」
「あぁ……。それが、6人も居ると色々入り用だからな……。
一人二人程度なら畑で食いモン作ってりゃ済むが、そういうわけにもいかないだろ?」
「そうですねぇ……。家も改築しないと、この人数で住むには狭いですし。
旦那様! やはりここは、いらないのをリストラしましょう!」
「おいルーヴ、いきなり極論に走るな」
「今流行りの断捨離ですよ!」
「なるほど、ヨツミミは自ら損を引き受けると……。美しい自己犠牲の精神ですね」
「んなっ!?」
「言い出しっぺの法則ってやつか」
「旦那様までっ!?」
「冗談だ」
なんて笑っていてばかりもいられない。
目の前にある問題を先送りにするのは、ジリ貧への最短ルートなんだからな。
「でもよ師匠、村からの援助があるから平気だと思うぜ?」
「援助?」
「うん。そりゃ、師匠はブラッドムーンから村を救った英雄だからな。
なんで、そんな人を飢えさせるほど、この村は落ちぶれちゃいねえさ」
「そりゃありがたいが……」
そんな特別扱いも一時的なものだろう。
なにより、そのせいで冒険者の真似事をさせられるのも避けたい。
ルーヴがまた拗ねるからな。
「ともかく、やることをやっておかないと落ち着かないな。
今必要なことと、今後の予定を立てて、一つずつこなしていこうか」
そう言って書き出す必要事項は、それなりに膨大だった。
そりゃ、6人分だしな。大変な仕事だ。
そしてその仕事を割り振るのもまた、なかなか大変に苦労する。
こっちは、人同士の相性を考えるのが、苦労の大半だ。
「ルーヴ、リビィ、クロウは、家の増築計画策定。それにともなう予算組みも頼もうか」
「え? コイツが金勘定すんの?」
「ふふん! この家の会計は、私が一手に握っているのですよっ!」
「マジか……。俺、必要?」
「俺はそういうの苦手なんでな、いつも誰かに任せきりなんだよ。
リビィも、一緒に旅してた時にやってくれてたし、二人に任せればいい。
クロウは大工との交渉なんかを任せたい。元々村育ちだし、顔がきくだろ?」
「ああ、そういうことね。それなら任せとけ!」
内情を知らないクロウも、説明されれば納得したようだ。
まあ、この組み合わせにしたのは、ルーヴとタツミを分けたかったのもあるんだけどな……。
「残るケンタとタツミは、畑と森の整備に行こうか」
「かしこまりました」
「仰せのままに」
強さという面で信頼のおける二人には、外回りを任せたほうがいい。
なんて言い訳を考えていたが、俺の言葉に反論するつもりは、最初からなかったようだ。
なぜ復活したのか。俺にもわからん。
ということで! よろしくお願いしま~す!
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