67 テイマー様は気ままに暮らしたい
「ささっ、主は何の心配もする必要はないのです。
今すぐ私の背に乗り、再び世界を周りしょうぞ!」
「ちょっと待てやゴルァ!! いきなりポッと出てきて、旦那様を奪おうなんて私が許しませんよ!!」
「なんだ貴様。我と主の邪魔をするならば、少々痛い目にあってもらうぞ?」
「上等だ! 表出ろや!!」
「ちょっと待て、二人とも!」
ルーヴが全てを察し、させまいと割って入った。
この喧嘩っ早さはブラッドムーンと関係なかったんだな……。
しかし、タツミが動かないのは妙だなと見れば、にこやかではあるが、裏のある表情をしていた。
「イーナム様、良いではありませんか。それで二人が納得するのであれば」
「タツミも止めてくれよ……」
「ふふふ……。彼らが仲良くしている間、私たちは私たちで親睦を深めましょう?」
「あぁ!? テメェまた旦那様を誑かす気か!?」
「真に強い者は、戦わずして勝利を得るものよ」
「なるほど、ではそちらの女から処分するとしよう」
「ちょっと、マジで三人ともやめろって!!」
「オッサン、モテるって大変なんだな……」
ぐったりしながらも、クロウは笑う。
いやマジで、笑いごとじゃないんだけどな!?
もうひっちゃかめっちゃかだし、周りの視線も痛いし、何より疲れたし……。
「よし、いったん帰ろう。ちょっと休憩して、それから考えるぞ」
「まさか旦那様! また家に人を呼び寄せるつもりですか!?」
「ケンタは元々俺の相棒だ、ほっとくわけないだろ。それに、細かいこと言えば人ですらないしな」
「あぁー! 二人だけの愛の巣がぁ!!」
「誤解を生む発言をするな……」
まったく、ルーヴの独占欲にも困ったものだ。
しかし、これで四人か。妙に大所帯になってしまったな……。
冒険者の付きそいを辞められたのだからと、のんびりと一人気ままにしたかったのだが、どうやらそうはいかないらしい。
「主よ、背にお乗りください。家までお送りする役目ならば、私めにお任せを」
「おっ、久々だな! 頼むとしようか!」
「ふふっ……。やはり主は、私の背に乗る時こそ最高の笑顔でありますな」
「え? そんなに喜んで見えるか」
「もしくは、私が嬉しいのですよ」
ま、たしかに馬に乗るのは心地いいからな。顔に出ていたかもしれない。
そんな久々の乗馬を邪魔するのは、やっぱりルーヴだ。
狼の時は背に乗ってたし、負けん気が強いんだろうな。
「ちょっと!! それなら私が背負いますよ!!」
「いや、お前に背負われるほど、俺は小さくないぞ?」
「くっ……。けっ、けどですね!! ソイツは家の場所知らないでしょう!?」
「主が示されれば、どこへでもお連れしますのでご心配なく」
「分かってないですね! 旦那様は極度の方向音痴! 家の場所間違うに決まってるでしょうが!
なので、わたしも乗ります!!」
「もしかして、乗りたいだけか?」
「そのまま攫われかねないから言ってんですよ!!」
「そんな真似するわけなかろう。そして、貴様を乗せる気などない」
「んだとごるぁ!!」
ホント、こいつらは……。言い合いが徹夜明けの頭に響く。
ぐりぐりとこめかみを押さえていれば、別方向から厄介ごとが飛んできた。
ぐったりとしていたクロウが、起き上がり唐突に言い出したのだ。
「それじゃ、俺が案内するぜ! 師匠の家見てみたいしな!」
「師匠……?」
「そそ。俺はイーナム師匠に色々教わって、冒険者兼テイマーになるぜ!」
「……は?」
「ってことで、よろしくなー!」
「ちょっとーー! もう増やしちゃダメですってば!!」
「俺が増やしてるんじゃねえ! 勝手に増えてんだ!!」
「ふふふ……。徳のある者には、人は集まってくるものです。
イーナム様、諦めて受け入れた方が楽ですわよ?」
「あ、オバさんはまだ試合終わってねーからな!
ぜってえに勝つ! 覚えとけよ!!」
「はいはい。暇つぶしに相手してあげますよ。
ただし、口の利き方には気を付けるんだな……」
「お前ら……」
どうやら気ままで静かな生活とは、程遠いようだ。
なんか今回で一区切りでもいい気がしてきた。
けど明日もあったりするよ。




