66 報告
「この度のブラッドムーン、私の居た街でも襲撃が激しく、冒険者たちは大層苦戦しておりました」
そうして始まったケンタの報告によれば、リビィたちの居た街では、冒険者たちはほぼ全滅しかけていたようだ。
そりゃそうだろうな、いつもなら俺が『世話』してやってるから、ケンタの魔力は魔力減衰陣の効果込みで、通常の馬程度しか漏れていない。
それが『世話』なしになっていたなら、陣による封じ込めがあったとしても、魔物たちにとって魅力的に映るだろう。
つまり、こっちの村でタツミとルーヴの魔力に誘われ、多くの魔物がやってきたのと同じことが起こったわけだ。
「で、まさかとは思うが、あいつら全滅したのか?」
「だったらよかったのですが……」
「よくねえよ!?」
「ご心配なく、全滅はしておりません。
途中で敵わぬと判断し、アンバとミランダは撤退しております」
「二人だけ?」
「主が抜けたあと入った者は、元々戦闘に参加しておりません。
ですので、戦地に残ったのは、かの女だけにございます」
「おい、リビィはどうなったんだよ!? まさか見捨てたのか!?」
「生きてはいるはずですよ。少なくとも最後に見た時、息はしておりましたから」
引っかかる言い方だな……。
だが今は、コイツが俺の命令を無視したかどうかが問題だ。
助けに行くだとかそういうのは、状況を聞いた後考えればいい。
「それで、お前はどうしてここへ来た?
話を聞く限り、指示を無視しない限り抜けられないはずだが?」
「かの女は言いました。『ここで道を分とう』と。
そして主もまた言いました。『彼らを守ってほしい』と……」
「そうだな。それで?」
「わかりませんか? 彼らが道を分つ、つまりパーティーは解散したのです。
私が守るよう言いつけられたのは『彼ら』でしょう。
ならば、守るべき『集団』はすでに存在しないのです。
少なくとも集団が変質しているのならば、私の加護対象ではありません」
「屁理屈かっ!!」
つい声を荒げてしまった。
俺の反応に、ケンタも口をへの字にして不服そうだ。
そりゃまあ、俺もめちゃくちゃな指示したし、屁理屈でもなんでも一応筋を通せるよう考えた形跡はある。
しかし、それだとあいつらは……。
「これでも主の御意志を尊重したつもりです。
新たな者が加入した時、それをもって指示の終わりとすることもできました。
けれど、貴方様のお気持ちを考え、不遜の振る舞いをされても耐えてきたのです」
「すまん、悪かった。俺のせいで、迷惑をかけ……」
言い終わる前にぎゅうっと抱きしめられ、全身の骨がメキメキと音を立てる感覚が襲う。
ちょっとヤバい。コイツまだ魔力に当てられてやがる……。
「もう二度と、もう二度と貴方の元を離れません!
たとえ命令であろうとも、それだけは聞けません!
主も、二度とあのようなことを言わぬと誓ってください!!」
「ぐはっ……。落ち着け……。マジ潰れる……」
「はっ……!? 申し訳ありません!
久々の主に、我を忘れておりました……」
急に放され、力が入らずへたり込む。
ルーヴのドロップキックに始まり、なんか今日は散々だな……。
ともかく、コイツは後で『世話』してやらんとダメそうだ。
「事情はわかった、ともかくその街を助けに行こう。
手遅れかもしれないが、生存者の救出くらいはできるだろう」
「それには及びません。魔物どもは、全て私が討ち取っておきましたので」
「へ? マジで?」
「えぇ。主の手を煩わせぬためならば、かの女どもを助けることであっても行わぬわけにいきません。
不本意ではありますがね……」
最後の一言に、コイツの思い全てが詰まっている。
俺への扱い、そして俺とケンタを引き離した原因となったあの夜のこと。
ケンタが根にもたないわけがない。
たとえそうであっても、俺のために尽くしてくれるコイツだからこそ、俺はあいつらを頼んだのだ。
ついでにあとがきもご報告。
問題なく進めば、今週更新分で一区切りつけ、一度完結にします。
気が向いたらまた再開するかもしれないです。
本来1ダースくらい自称嫁出すつもりだったんで、ネタは考えてあるんだけどね。




