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65 踏まれたり蹴られたり


「おーい、オッサン。いつまで寝て……。

 しっ……、死んでる!?」


「まさかっ!? イーナム様!?」


「スキありっ!!」



 ばっと突かれたクロウの拳を、軽々とタツミは受け止める。

心配そうにしていたタツミの顔は、視線だけで人を殺せそうなものに変わっていた。



「貴様、冗談でも言って良いことと悪いことが……」


「ま、そのへんにしてやれ。俺もふざけてたしな」


「そそ、オッサンがこの程度でくたばるワケねーじゃん」


「お前もお前で、怖いもんなしだな……」



 元々そういう節があったのかもしれないが、タツミに睨まれても怯まないなんて、クロウはなかなかの大物だ。

度胸は冒険者にとって大事な要素ではあるが、それだけだと心配になる要素でもある。

まあ、俺が知ったこっちゃ無いけどな。



「で、そっちの怪我人の治療は終わったのか?」


「終わりましたよ!! 旦那様が浮気している間にね!!」


「おいおい、そんなに拗ねんなって」



 なでなでしてやれば、頬を膨らませながらも受け入れる。

どんなに怒っていても、これには抗えないらしい。



「ごっ、ごまかされたりしないんですからねっ!!」


「オッサン、こういう時はこうだ!」



 膨れっ面の頬をクロウが両手でむぎゅっと押さえれば、ぴゅすーという、なんとも気の抜けた音が出る。

それに恥ずかしさを覚え、ルーヴは顔を真っ赤にさせた。



「なにすんじゃお前はーー!!」


「ぐはっ!!」



 見事な蹴りが脇腹にクリーンヒットし、今度はクロウが床に伏せた。

こりゃ骨の二、三本は折れたかもしれないな。

さすがにかわいそうだ、ちょっと様子をみてやるか。


 痛みに耐えながら、もがくクロウをみてやれば、受付のある部屋が騒がしくなる。

そしてドタドタという音が聞こえ、部屋の扉が壊れんばかりの勢いで開かれた。



「ここかっ!?」


「なっ……!? なんだコイツ!?」


「逃げろ! 半魔だ!!」



 その声に俺はばっと顔を上げた。

そこで見たものは、とても懐かしい相手だった。



「え? ケンタ……? なんでお前がここに……」


「主よ、お迎えにあがりました」



 ほんの数メートルもないほどの距離を、人間の上半身が付いた馬、ケンタウロスは目にも止まらぬ速さで詰めてくる。

そして俺の手をその両手でとり、今にも触れそうなほどに俺の顔に顔を近づけてきた。



「鼻息が荒い。あとクロウを踏んでるから!」


「ぐがっ……」



 今にも死にそうなクロウの声が聞こえる。

そりゃまあ、数百キロはある馬に踏まれたらタダじゃ済まないよな。



「おっと、何かあると思いましたが……。

 しかし主との再会の前に、そのようなもの些細なこと。

 主よ、私との旅を再会いたしましょうぞ」


「待て。ちょっと避けてお座り」


「はっ!」



 しゅばっと横へと動き、クロウを解放したのちケンタはお座り体勢へと入る。

そして、深々と頭を下げた。



「踏んだり蹴ったりだな。言葉通りの意味で」


「俺は……、もうダメみたいだ……」


「バカ言ってられるウチは大丈夫だ。傷口見せてみな」



 まったく、ブラッドベアを倒し、ブラッドムーンを乗り切ったからとはしゃいでいるから、こんなことになるんだ。

そんな小言を胸に秘めながらも、クロウを治療してやった。


 一通りの処置が終われば、副長が恐る恐る近寄ってくる。



「あの、イーナムさん……。このケンタウロスはアンタのなのかい?」


「あぁ、驚かせてすまない。俺の相棒だ」


「いくらなんでも半魔を従えるなんて、どうかしてる……」


「あー、いつもは擬態させてたんだが……。

 ケンタ、まさかブラッドムーンで変化が解けちまったのか?

 それに、リビィたちを頼んだはずだが、それはどうした」


「はっ。最も素早く主の元へと参るため、勝手ながら変化を解かせていただきました。

 また、あの者どもに関しましては、すでに私が守る必要がなくなりましたので、あなた様の元へと戻ってきたのであります」


「必要がなくなった……? 俺の指示とは違うよな?」


「いえ、主の指示に反することなど一切しておりません。

 もちろん、これからもそのようなことはありえません」


「はぁ……。どういうことか詳しく聞こうか」



 俺はあいつらの旅に同行して、守ってやってくれと言ったはずだ。

その指示に反さず、こっちに来るなんてできないはずなんだが……。

言葉通り、蹴られて踏まれるクロウ君。

馬に轢かれても生きてるから、結構タフなんじゃないっすかね。


てか、昨日の更新ミスってましたー!

うっかりもう一本書いてる方をこっちに投稿してたぜ!

いきなり話が飛んでびっくりした人、ゴメンナサイ。

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