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52 赤き月(2)

 タツミとルーヴがここに居ることで、村への襲撃は激しくなる。

けれど長老の話では、今さら帰したところでそれは変わらないらしい。

というか、長老はなんでそんなに詳しいんだ?

引退したとはいえ、村を長年守ってきた人なんだから、経験で分かるのだろうか。


 いや、今考えるのはそうじゃないな。

長老の言うことが正しいなら、二人を帰すのは得策ではないな。

襲撃の規模が変わらないのなら、人手は多いに越したことはないんだから。

ならば、最善の手は……。



「よし、二人は怪我人たちの治療の準備をしておいてくれ。

 俺は、冒険者連中に手伝えることがないか確認してくる」


「了解ですっ! お薬の効果を証明するためにも、がんばりますよ!」


「イーナム様。必要でしたら、私も前線にて共に戦いましょうか?」


「場合によっては必要になるかもしれんが、まずは何を求められているか確認しないとな。

 出しゃばって連携を乱すなんてことになる方が最悪だからな」


「そこまで考えが至らず、失礼いたしました」


「そんなことないさ、頼りにしてる。もちろんルーヴもな」


「むー……。なんだかわたしはついでって感じですねぇ……」



 ルーヴはそう言いつつも、頼られていると知って上機嫌だ。

しかし、普段はバラバラで行動しているであろう冒険者たちが連携を取り合うのかは知らないが、テイマーの俺としてはどうしてもその辺が気になってしまう。


 テイムした奴らで戦う時に、それぞれの特性に合わせて、壁役やアタッカーなんかを考えながら戦うからな。

そんな時、俺は後方で魔法やらで支援するのが基本だ。つまり今回も、前線に立つことを期待されても役に立てないだろうな……。


 そう不安に思いながら、指示を飛ばす冒険者に声を掛けようと近づいた。

彼は冒険者たちをいつも組んでいるパーティーごとに各地の守備へと付かせ、地図に戦力の印をつけている所だった。



「俺たちも何か手伝えることはないか?」


「ん……? あぁ、イーナム殿か……。そう言ってくれるのはありがたいが……」



 彼はちらりとタツミとルーヴに目をやり、そして俺に向き直った。



「テイムしている動物で戦えるヤツは居るのか?」


「いや、訳あって今は何も連れていないんだ。だが、多少の魔法くらいは使える。

 それに、魔力にてられて暴れる動物の対処なら任せて欲しい」


「うむ……。しかし、ブラッドムーンの中心となるのはやはり魔物……。

 対動物用に一人出すよりは、後方で治療に当たってもらった方が助かるだろうな」


「本当に大丈夫か?」


「なに、俺たちも何度もブラッドムーンを乗り越えてきたんだ。

 少なくはない犠牲は払ってきたが、それでも村が今でもあるのは、守り切った証だ。

 心配してくれてありがてえが、ここはプロに任せな」



 二っと笑い、心配させまいとそう言ってくれる。

彼は今回のブラッドムーンが、前までと違う事を知らないのだ……。

だが、そう言われて我を通すのは、それこそ出しゃばった行動だろう。



「わかった。俺たちは怪我人の治療に当たらせてもらう。

 けどもし、戦況が芳しくなかったら、すぐに言ってくれ。

 俺だって素人じゃない。力になれるはずだ」


「あぁ、その気持ちだけで十分だ。後ろのことは頼む」


「任せてくれ。それと……」


「ん? なんだ?」


「余計なお世話かもしれないが……。無茶をしないようにな……。

 重傷でも怪我なら治せる可能性はある。けど、死んじまったらどうしようもないからな」


「なんだよ、縁起でもねえこと言うなよ。そんなに心配か?」


「いや、俺の知ってる冒険者に、死にたがりかと思うほど無茶するやつがいてな……」


「そうか……。無茶をするヤツは、どこにでも居るんだな……。

 ま、それも心配すんな! 俺が指揮を執るんだ、誰も死なせやしねえさ!」


「あぁ、頼んだよ」



 少し悲し気な目をする彼は、もしくは過去に大切な仲間を失ったのだろうか……。

「素人は黙っとれ」と言わないあたり常識人。

まぁ、指揮官が非常識だったら壊滅しますよねって話。

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