表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/72

41 鶴の一声

 タツミは、ルーヴに突っかかってきた、まだ幼さの残る冒険者との勝負を提案してきた。

俺は別にドウデモイーのだが、それでギルド側が良いとするかが問題だ。



「ってことなんだが、受付のお姉さん方、どうする?」


「そう言われましても……。私たちの裁量外ですよ……」


「だよなぁ……」


「まぁまぁ、良いではないか。面白そうじゃしの」



 割って入ってきたのは、村の長老だった。

野次馬の中から、ひょっこり顔を出すが、腰も曲がって背が低くなっているのもあってか、今まで誰も気づかなかったようだ。



「あ、出たな! 長老!」


「おひさー、じゃ。さてさて、面白いものが見れそうじゃのう……」



 ふぉふぉふぉと笑う爺さんは、ただただ二人の試合が見たいだけのようだ。

あの真面目な村長の父親と思えないほど、この爺さんは自由人である。


 まぁ、それでもこの村の前村長であり、長老が言うことなら、大抵の無茶は通るらしい。

一線を退きながらも、いまだに力を持つ年寄りほど、面倒な奴らはいないな。


 長老が前向きな意見を言ったがために、受付嬢たちは互いに顔を見合わせながらも、困惑した表情で準備を始める。

長いものには巻かれる、それが人間社会の仕組みであり、闇である。



「はよはよ。ワシは生い先短いでの、見物する前にお迎えが来てしまいそうじゃ」


「でっ、では……。お二人とも、裏の訓練場へ……。

 他の方々も、立ち合いということで、ご一緒にお願いします」


「はー、血湧き肉躍る闘い。これぞ人生の醍醐味じゃ……」


「俺の意見は聞かねーの!?」



 当事者である、冒険者の男の子は呆然としていたが、今さら叫んでももう遅い。

周囲の野次馬も、たのしみだと一緒に移動し始めていた。



「あれ? なんか訓練場綺麗になってねーか?」


「そういやそうだな。穴も空いてねえし、草一本生えてねえし」



 そんな野次馬達の声が聞こえる。

そりゃそうだ、今日はずっとここで、俺が整備してたんだからな。


 しかし、この程度は普通だと思っていたが、冒険者たちにとっては、かなり行き届いた手入れらしい。

そういや、前にタツミが畑が綺麗すぎると言っていたし、意外と他の奴らってのは、もっと適当なのかもしれないな。


 ともかく、このフィールドなら、どうやっても言い訳が立たない。

穴につまづいたとか、草に足元をとられたなんていう、ありがちなアレだ。


 といっても、冒険者ならどんな状況でも問題なく動けなければ意味ないけどな。

森の中で魔物を仕留めるとしても、平坦な地面なわけないのだから。

あ、そういうことを考えるなら、もっとでこぼこを残しておかないとダメだったか……?


 ま、いっか。今はタツミとあの子の勝負だ。

そういや、名前聞きそびれたな。まあいいか。



「では、これより試合をはじめま……。

 あ、長老様、ルールはどういたしましょうか?」



 受付嬢の一人が、試合の開始を宣言しようとするも、何も決まっていなかったことに気付く。

だが、長老は長老で、そんなこと瑣末な問題らしい。



「なんでもいいわい。はよはよじゃ」


「えっと……。では、互いに木刀での試合とします。

 どちらかが負けを認めるまで、時間無制限で行います」


「ふぉふぉふぉ……。おぬし、よく分かっておるな……」



 あぁ、これは言葉にしなかったが、長老好みのルールってことだな。

多分、木刀うんぬんではなく、負けを認めるまで時間無制限というあたりが。

どうせ、若い衆が必死に倒れながら食らいつく姿を見たいとか、そういう陰険な考えだ。

なーんとなく、そんな気がする。



「ふむ、木刀か……。そのようなもの、我には不要」


「は? オバサンなめてんの?

 試合ふっかけてくるってんだから、相当自信あるみたいだけど、リーチの差を分かってないど素人なワケ?」


「たわけ。道具など使えば、力加減がわかりにくいのでな。

 手加減してやろうという、優しさよ」


「へぇ、言ってくれんじゃん。

 ガキだって舐めてっと、痛い目見るぜ……?」



 うわ、このバチバチの言い合いに、すでに長老が惚けた顔してやがる……。

あのジジイ、やっぱ危険人物だ……。

長老、3話目以来の登場。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ