表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/72

40 支部長は出張中

 話によれば、結局この騒動は、ギルドの支部長とやらが来れば解決する話らしい。

だが、いまだに収まる気配がないってことは、その支部長とやらは来てないってことだな。

仕方ない、ルーヴは俺が止めるか。



「はい、そこまで。ルナ、お前は何やってんだ」


「はっ!? 旦那様!? これにはふかーーーい事情がありましてっ!!」


「あ!? テメェがコイツの保護者かよ!

 どーいう躾してんだってんだ!!」


「旦那様になんてことを! そっちの方が、親の顔が見てみたいってもんですよ!!」


「なっ……!!」


「お前ら、やめとけ……」



 若干涙目の少年冒険者は、口喧嘩でもルーヴに完敗のようだ。

実際、ルーヴが本気を出せば、押さえつけてる人を薙ぎ払って、ボコボコにしてるだろうから、口喧嘩じゃなくても勝ち目はないだろうけどな。



「あの、イーナム様。この毛皮が本物かどうかで、二人は争っていたのです。

 テイマーとして名高いあなたでしたら、真贋が判定できますよね……?」



 思わずため息が漏れる俺に、ルーヴを押さえつけていた受付嬢は、遠慮気味にそう言うのだった。



「あっ!? お前があの……」


「旦那様に、お前なんて口きくなですよ!!」


「二人ともめんどくせえな……」



 さすがの俺も、少しイライラしてきた。

いっそのこと、施設修理に使っていた縄で縛った上で、口も布かなんかで封じてやろうかと頭をよぎる。


 でも、そんなことするとタツミがなー……。

怒るんじゃなくて、次はこっちもと、変な期待をしそうで嫌なんだよな。



「悪いが俺は、鑑定なんかする気はないぞ。

 元々部外者だ、ギルドの話に首を突っ込むつもりもない」


「へっ……。本当は名ばかりで、見分けつかねえから言ってんじゃねえのか!?」


「言わせておけば……」


「ルナ、落ち着け。言わせておけばいい」



 ブチギレ寸前のルーヴの頭をぽふぽふ撫でながら、俺はカウンター上にある赤い熊の毛皮を見る。

そこにある巨大な熊と目が合った。かなり手こずったのか、顔は綺麗なものだが、体の部分の革はボロボロだ。

近づいて見るまでもないな……。



「それじゃ、あとは支部長さんとやらに任せて……」


「お待ちください、イーナム様」



 待ったをかけたのは、意外にもルーヴではなくタツミだった。



「ん? どうした?」


「聞けばその者、ブラッディベアの毛皮を条件に、ランクを上げるよう要求していたというのです。

 冒険者にとって、ランクとは命の次に大切なもの。

 それを棚上げされるのは、我慢ならないかと……」


「そういうもんなのか?」


「そうだよ! だからさっさと、受理しろっての!!」



 なるほど、必死だったのにもわけがあったのか。

まぁ、結局はギルドの支部長が来れば解決する話なんだが……。



「で、ギルドの支部長に鑑定してもらえばいいんだったよな? どこにいるんだ?」


「それが……。支部長はあいにく、全国支部長会議に出席中でして……」


「居ないのかよ」


「ですので、イーナム様にお願いできないかと……」


「えー、めんどくせぇ……」



 めんどくさいってのは、鑑定自体ではなく、その後の騒動に巻き込まれることだ。

雨に濡れた野良犬のごとく、しゅんとする受付嬢だが、俺もこれ以上ギルドのしがらみに首を突っ込みたくないしな。


 そんなことを思っているなんて知らないタツミは、妙な提案をするのだった。



「でしたら、こういうのはどうでしょう?

 私と、この子が勝負をするのです」


「へ? なんでそうなる?」


「課題として出された魔物の討伐は、つまりその魔物を討伐できるだけの力を示せということ。

 ならば、力を示しさえすれば、ギルドとしての目的は達成されますでしょう?

 それに、皆が見ている前で力を示すのならば、物品と違い、真贋を問われることもありませんから」


「まぁ、そりゃそうかもしれんが……」



 静かに、そして確実に裏のあるにこやかなタツミの顔が逆に怖い。

あーあ、変なのに目をつけられて、この子もかわいそうに……。

支部用不在の間にうまい事やろうとしたヤツの末路。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ