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32/72

32 誤解

 タツミの夫婦宣言に、村長は目を丸くしている。

ん? なんでだ?


 そりゃ、ルーヴの「妻です」宣言なら、お前年齢差考えろよと言われても不思議ではない。

だが、今回はタツミだ。見た目は十分大人……。

というか、酸いも甘いも経験してきたような、色香がある。

実際、村長も見惚れてたくらいだしな。お前こそ歳考えろと言いたい。


 そんな俺の心中を察したのか、村長は小さくため息をつき、静かに語った。



「事情はわかりました。けれど、あまり褒められたことではありませんよ」


「なんの事情だよ!?」


「まったく、ルナ殿が悲しむわけです」


「いやだから、なんの話だよ!?」


「イーナム殿、重婚は禁じられておりません。

 むしろ、何があるかわからぬ世の中、力と経済力のある者が、多くの女性をめとるのはよくある話。

 しかし、それは女性側の了承あってこそであり、精神面をサポートするのが、男の務めですよ」


「マジでなんの話してんの!?」


「まずは、ルナ殿とよく話し合い、合意した上で新たな女性を招くべきですよ」


「もう、帰ってもらっていい?」


「ルナ殿が家から飛び出してきた時は、何事かと思いましたが……。

 まったく、至上のテイマーと名高いイーナム殿も、乙女心は分からないのですね」


「勝手に納得して、勝手に話を進めるな」



 俺の言葉は聞こえないのか、村長はくどくどと続けた。

いや、俺が招いたんじゃなく、勝手に来たんだけどな……。ルーヴ含めて。


 どうやら村長はルーヴが飛び出していったのを、俺がタツミを招いたからだと誤解しているようだ。

まぁ、最近の様子からすれば、近からず遠からずな気もするが……。


 しかし、飛び出していった本当の理由を話す方が、色々と面倒になりそうだ。

歳ゆかぬ子になんてことを教えてるんだ、なんて言われそうだし。

なにより、ドラゴンの生態についての話なんて、村長は知らないだろうから、俺が食事中に下品な話をしただけだと思われるだろうな。

ま、村長にどう思われようが、どうでもいいことではあるんだが。



「ルナ殿、二人でちゃんと話あって、今後を決めなさい。

 もし、わだかまりなく受け入れられるようでしたら、私が二人の挙式を開かせていただきますよ。

 ご希望でしたら、村の教会の見学も……」


「あの、村長? そんな話しに来たんじゃないですよね?」


「おっと……。そうでした。しかし、これだけは。

 私はルナ殿の味方ですよ。何か悩みがあれば相談してくださいね」



 にっこりと笑い、ルーヴの頭を撫でる村長。

まったく、近所のおじさんが、ちっさい子を甘やかしているだけじゃないか。

…………。いや、考えてみれば俺もタヌキのちび助には甘いし、ひとのこと言えないか。



「さて、それはそれとしてです。今回やって来たのは、ドラゴンの件のその後の報告です」


「うん。それはさっきも聞いた。わざわざもう一回調べたってことは、何か問題があったのか?」


「いえ、全ての調査依頼は、二つ以上のパーティーに出す決まりになっているのです。

 よからぬ者が、調査せずに報告をでっち上げる可能性がありますのでね」


「俺はそんなことしてねえぞ?」


「もちろん、信用しておりますよ。それは決まりというだけですので」


「色々と面倒な決まりがあるんだな」


「えぇ。なにせ、冒険者は荒くれ者だけでなく、ずる賢い者も多いもので……」



 そりゃ、確かに言えてるな。そういう意味で、リビィは特別だった。

アイツは、王国軍の騎士にでもなった方がいいんじゃないかってほどに、凛とした振る舞いと、性格を持ったヤツだった。

だからこそ、周囲の冒険者たちとは、折り合いを付けるのに苦労していたようだがな……。

おっと、そんな事を思い出してる場合じゃなかったな。



「それで、当然問題はなかったんだよな?」


「いえ、それが……」


「ん? どした?」


「ドラゴンが、居なくなったそうなのです」



 えぇ、そうですね。あなたの目の前にいる人が、そのドラゴンですよ。

なんて、口が裂けても言えるわけがなかった。

勝手に納得して、勝手に話進めるやーつ。

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