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13 フィールドワーク

 ドラゴンの調査に出発してから三日、俺たちは村と逆方向の森の端へとやってきていた。


 ルーヴの歩幅に合わせると、もっとかかると思っていたのだが、ルーヴは変わらず風にように森を駆け抜ける。

俺の進行速度についてくるとは、姿は変われどさすがは森の主だと感心するばかりだ。



「しかし、森の外は荒野なのか」


「はい。ここから先は、私の縄張りの外です。

 ドラゴンには負けましたけど、追い払うことはできたんです」


「えらいぞ。森の主としての仕事は、全うしてたんだな」


「へへへ……」



 褒めてやれば、はにかみながら誇らしげに笑う。


 しかし、どうしたものか……。

この先は縄張りの外なのだから、これ以上の案内は望めない。

それに、荒野は魔物はともかく、動物の気配が少ない。

気配の密度から居場所を特定するのは、なかなか難しそうだ。



「どうしたものかな……」


「どうしましたか?」


「気配から探ろうにも、動物が少なくてな」


「心配いりませんよ。私のよくきく鼻で、探し当てますからね」


「え? んなことできんのか?」


「当然です!」



 自信満々に胸を張るルーヴ。

危ないんじゃないかと思っていたが、なんだかんだ連れてきてよかったな。



「それじゃ、頼むぞ」


「はい!」



 スンスン鼻を鳴らしながら、目をつむり空気中に漂う匂いを調べるルーヴ。

そんなので分かるものなのだろうかと、俺も匂いに意識を向けてみるも、ぜんぜんわからん。



「んー、こっちからほんのり瘴気が……」


「瘴気ってのは、ほんのり香るものなのか」


「んー、ちょっと遠いかもですね」


「ま、とりあえず行ってみるか」



 言われた方向に進めば、人の背丈より大きな岩がゴロゴロと転がっており、まるで迷路のようだった。

けれど、それは作られた迷路と違って、正解のルートがあるとは限らない。

俺たちは岩に遮られ、進めずにいたのだった。



「むー、飛び越えられなくはないですが……」


「しかし、飛び上がって鳥の魔物や、上に何か居たりすると危ないな」


「瘴気が強くなってきて、鼻もあまり効きませんね」


「気配はないが、魔物の気配は読みにくいからな……」



 二人とも使える手が封じられてしまった。

今回は調査目的だし、余計な戦闘は避けたいものだ。



「仕方ない、岩を砕くか」


「それこそ、魔物に感づかれますよ?」


「全部を砕く必要はないだろ? こうやってな……」



 岩に手をかざし、魔力を放出する。

すると岩は淡く光だし、真ん中を人一人が歩ける程度の大きさの穴が、ぽっかりと姿を見せるのだ。



「えっ!? 何をしたんですか!?」


「ん? 穴の分の岩を砂に変換したんだが?」


「どっ、どんな魔法ですかっ!?

 こんな奇妙な魔法、見たことありませんよ!」


「そうか? 俺はよく使うけどな」


「うー……、人間にはこれが普通なんですか?

 魔法なんて、魔力にモノをいわせた、超火力なものだと思ってましたよ……」


「まぁ、俺も普通は知らんけどな。我流だし」


「我流って……」



 そういえば、今までもあまり魔法を使わない生活をしていたからか、ルーヴは俺がどんな魔法を使えるか知らないようだな。


 今まで見せたのは、コイツを縛るための植物魔法と、あとは風呂を沸かすときの炎魔法くらいか。

全部独学だし、本職の魔導士はもっとすごいんだろうな。

別に魔導士になりたいわけじゃないから、興味ないけど。



「ま、とりあえず行こうか……。

 って、お前、顔色悪いが大丈夫か?」


「うぅ……。少し、瘴気に酔ってきました……」


「ここで休んでるか?」


「いえ、ついていきますよ……。

 旦那様をお護りするんですから……」


「そう言うならいいが……。無理するなよ?」



 コクコクとうなずき、重い足取りで進むルーヴ。

こんなになるほどとは、その瘴気ってやつは相当濃くなっているようだ。

俺の鼻はイカれちまってるのか、全然瘴気ってのを感知してくれないけどな。

(嗅覚が)鈍感系主人公。

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