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「第六話 最期」

登場人物

風波見 裕一(主人公)

15歳の男の子、妹想い、ソラリスメテオ墜落以降妹の真理亜とともに崩壊した世界を旅しながら母親を探している


風波見 真理亜

心優しい12歳の女の子、好奇心が強い、裕一と旅をしている


御菓子屋のおばあちゃん

死んでいるように見えて実は生きてる、御菓子屋に住んでおり家族が戻ってくるのを一人で待っている


神谷

中年の男性、中学校で数学の先生をしていたらしい


天野 咲

小学生の時の裕一の同級生女子、二年前ソラリスメテオが堕ちる前日に自殺してしまう、生前は裕一と仲が良かった、裕一とは別の中学校に進学していたが中学校ではいじめを受けていた、裕一の夢の中によく出てくる


風波見 良子

裕一と真理亜の母、女手一つで兄妹を育てる、ソラリスメテオが堕ちた日は仕事の出張で家におらず現在は消息不明


ノア

真理亜が見つけたメス猫、風波見兄妹についてくる人懐っこい猫


作家

世界の秘密を知っている謎の人物

「第六話 最期」

○16 裕一の夢(○15から五日後、朝)

 第二話の時と同じような夢を見ている裕一

 真っ暗闇の空間の中に裕一と咲きがいる

 咲は体育座りをしており、裕一は咲を見下ろしている


咲「私、行くべき場所に行ったんだよ」

裕一「行くべき場所ってなんだよ?どこだよそれ」

咲「行かなきゃいけない場所だよ」

裕一「だからどこなんだよそれ」


 咲の曖昧な言葉でイライラする裕一


咲「次の場所、私は先の世界に行きたかったんだ。いじめはそれを示してたの」

裕一「次の場所って何があるんだ?」

咲「裕一も早く分かって、こんな世界、もう裕一と真理亜ちゃんしかいないんだよ」


 悲しそうな表情をする


裕一「咲、よく分からないんだ。何が言いたいのか」

咲「この世界はね、次の物語に行くための空間」

裕一「空間?」

咲「私たちはいろんな物語を生きる芸術のかけら、この世界から抜け出してまた次の物語として生きなきゃいけないの」

裕一「どういう意味?説明が足りないよ」

咲「思い出して裕一、今までだって色んな物語、色んな世界に生きていたということを」

裕一「色んな物語?」

咲「余命わずかなヒーローがいた世界、悪魔がいた世界、子供が神を名乗り大人に反乱した世界、数字に取り付かれる世界、身体障がい者が罪を犯す世界、ロボットが障害を持つ子供と暮らしていた世界、憂鬱な魔法少女が苦しみ続ける世界、空が不気味な世界。全部私たちが前にいた世界だよ。よく思い出して」


 混乱をする裕一


裕一「何言ってんの?意味わかんないよ」

咲「ほんとは隕石が堕ちてみんな死ぬはずだったの、それでこの物語は終わって、次に行く予定だった。でも死ぬに死にきれない強い意欲を持った人は生き残って、この死んじゃう世界でさまよってる」

裕一「説明になってない」

真理亜「裕一、次の物語に行こう?これ以上ここにいても辛いだけだよ・・・真理亜ちゃんも気づいてるかもしれない」

裕一「自殺者の空想ジョークだね、笑えない。なんで死んだんだ?どうして?」


 裕一は辛辣に言い放った


咲「多分、私だけだと思うんだけど・・・隕石が堕ちてこの物語は終わるって気づいていた。次の物語があるって分かってたの、前の世界の記憶もあったし・・・でも隕石じゃ死ねない気がして、裕一が死んで自分一人だけが生き残るのが嫌で、頑張ろうって思ったけど、やっぱり頑張れなくて・・・ごめんね・・・辛い思いをさせちゃって・・・自殺したせいで・・・」


 徐々に涙を流す咲


裕一「俺は・・・どうすればいい?」

咲「真理亜ちゃんが苦しむ前に・・・二人で心中して」


 心中という言葉がしばらく理解出来ずにいる裕一


咲「お願い!二人が苦しむ姿は見たくないの!」


 懇願する咲


裕一「俺は・・・」


 裕一が何かを言おうとした途端目が覚める


○17 神願神社(○16の続き、海から離れて五日目)

 海から戻ってきたものの、雨が降り数日間足止めを食っている裕一たち

 激しく降っている雨

 目を覚ます裕一

 ノアは裕一の隣にいる


裕一「また雨か・・・」


 真理亜は裕一より先に起きている


裕一「早く梅雨明けしてくれないと頭からキノコの山が生えてきちゃうな」


 裕一がノアの頭をなでながら冗談を言う


真理亜「そうだね・・・」


 タケノコ派なのに真理亜の返事が大人しい


裕一「タケノコ派は絶対絶命じゃないか」

真理亜「うん・・・」


 やはり微妙な返事をする真理亜


裕一「なんか今日、ノリ悪いな」

真理亜「ごめん」

裕一「どうかした?」

真理亜「体調が悪いかも・・・」


 裕一がよく見ると、真理亜の顔は赤く染まっており体調も悪そうに見える


真理亜「熱かな・・・気持ち悪いし頭も痛い」


 裕一はリュックから体温計を取り出し真理亜に渡す

 体温を測る真理亜


裕一「夏風邪だ」


 まるで自分に言い聞かせるかのような裕一

 裕一の脳裏には咲の言葉がちらついていた


咲 声「真理亜ちゃんが苦しむ前に・・・二人で心中して、お願い!二人が苦しむ姿は見たくないの!」


 裕一の頭は不安でいっぱいだった

 二人の間に嫌な沈黙が流れ、雨音がより一層激しくなる

 体温計の音が鳴る

 

裕一「何度?」

真理亜「38.9度」

裕一「馬鹿、海ではしゃぎ過ぎだ」

真理亜「馬鹿じゃないし・・・」

裕一「しばらく休んでろ、熱が下がるまで絶対安静」

真理亜「分かった」

裕一「昨日も調子悪かったの?」

真理亜「昨日の夜から熱ぽかった」

裕一「そうだったのか・・・」


 時間経過


 真理亜にご昼飯を食べさせようとする裕一


裕一「何か食べないと」


 嫌がる真理亜


真理亜「お腹空いてない」

裕一「お菓子でも、何でもいいから」


 無理やり勧める裕一


裕一「食べ物の美味さは共有するべきなんだろ?それじゃあ何か食べないとな」


 乾パンを砕き真理亜に渡す裕一

 乾パンを食べる真理亜


真理亜「味がわかんない」


少し食べて残す真理亜


裕一「風邪をひいて鼻が馬鹿になってるのかな・・・」


 裕一は他の食べ物を真理亜に見せ勧める


裕一「乾パン以外の物を食べる?」

真理亜「いらない」


 結局乾パンを少しだけしか食べなかった真理亜


裕一「お腹が空いたら言うんだぞ」

真理亜「うん」


 時間経過


 夕方、雨は変わらず降っている

 昨晩食べたものと昼の乾パンを吐く真理亜

 真理亜の背中をさする裕一

 謝る真理亜


真理亜「ごめんねお兄ちゃん・・・」

裕一「気にするなマイヤングリトルキュートシスター」

真理亜「移しちゃったらごめん・・・」

裕一「移ってるならとっくに症状が出てるよ」

真理亜「大丈夫かな・・・」

裕一「大丈夫だよ」


 ノアは裕一と真理亜をじっと見ている


 時間経過


 夜、雨は変わらず降っている

 真理亜の体調は良くならない

 再びご飯を勧める裕一


裕一「ご飯は?吐いてお腹空いてない?」

真理亜「吐いたけど吐き気が収まらない・・・」


 迷う裕一

 吐き気があれど、真理亜の胃は空っぽだと裕一は思っている


裕一「お腹が空いてないなら食べない方がいいか・・・」

真理亜「うん」


 一人でご飯を食べる裕一


裕一「なぁ真理亜」

真理亜「何?」

裕一「最近全然人を見ないよね」

真理亜「そうだね、おばあちゃん以来会ってない」

裕一「あれは春前だっけ、おばあちゃん、まだあのお店にいるのかな」

真理亜「きっといるよ」

裕一「今度また行ってみるか」

真理亜「私たちのことなんてもうとっく忘れてるかも」


 真理亜が寂しそうに言った


裕一「なぁ真理亜」

真理亜「何?」


 少しの沈黙が流れる


裕一「やっぱ何でもない」


 裕一は夢の中で聞いたことを話そうとしたが、やめる

 結局その日、真理亜は何も食べない


○18 神願神社(海から離れて六日目)

 朝、変わらず雨が降っている

 目が覚める裕一


裕一「真理亜?大丈夫?」


 裕一は寝込んでいる真理亜に声をかける

 真理亜の体調は昨日よりもひどくなっている

 

真理亜「まぶしい・・・」


 真理亜は手で目を抑える

 裕一は隣で寝ていたノアをどかし、急いで真理亜のそばへ行く

 真理亜は明らかに高熱である


真理亜「魔女がいる・・・頭が割れそうなくらい痛い・・・寒いよ」


 裕一は救急箱から薬をあさる


裕一「クソ!」


 救急箱の中にはばんそうこうや湿布などしか入っていない

 救急箱を怒りで投げる裕一

 そして真理亜の手を握る裕一


裕一「真理亜、俺はここにいるぞ!ノアもだ!」

真理亜「お兄ちゃん・・・」

裕一「俺たちはここにいるからな!そばにいるからな!」


 裕一はその後も一人で真理亜に声をかけ続ける

 ノアはそんな裕一の姿を凝視している

 雨はやまない


 時間経過


 真理亜は眠っている

 裕一は本で調べ事をしている

 本の中でフォーラーネグレリアという寄生性アメーバについての記述を見つける裕一


裕一「フォーラーネグレリアとは温水環境に生息している寄生性のアメーバ・・・」


 記述を読み続ける裕一


裕一「フォーラーネグレリアが生息している場所の水が鼻から入ると感染する可能性がある。致死率は約98%と言われており、生存者はわずか3人。初期症状は嗅覚や味覚の異常、進行すると吐き気、嘔吐、高熱、頭痛、食欲不振、幻覚、まぶしがり症など。最後には昏睡状態に陥り、発症してから3~7日で死亡する」


 海での真理亜を思い出す裕一


真理亜「鼻の中に水が入ったみたい」


 発狂する裕一


裕一「クソ!クソ!クソ!ちくしょう!」


 物に八つ当たりする裕一


裕一「なんでだよ!クソッタレ!」


 裕一の頭には良子の声が響く


良子 声「これは自分の内側にある全てが焼けこげるかのような思い、世界で一番重たいトラックに轢かれてもこんな痛みは味わうことは出来ない。でもあなたはそれをかみしめないし、見ようともしない。あの美しかった隕石はそれをあなたに教えようとしている、真実の言葉を心臓からえぐり出せ」

裕一「これ以上俺に何を見せようって言うんだ!」


 叫ぶ裕一

 神谷の忠告が頭によぎる裕一


神谷 声「水に気をつけろ!」

裕一「自殺する生徒を救えなかったお前に何が分かる!」


 叫ぶ裕一

 夢に出てきた咲の言葉が聞こえてくる裕一


咲 声「私たちはいろんな物語を生きる芸術のかけら、この世界から抜け出してまた次の物語として生きなきゃいけないの」

裕一「咲!助けて!こんな人生あんまりだ・・・」


 裕一は膝をつき咲に助けを求める


裕一「俺たち兄妹が一体何をしたって言うんだよ・・・なんでいつもいつもこんなに苦しまなきゃいけないんだ・・・」


 裕一の声で真理亜が目を覚ます


真理亜「ごめんね・・・お兄ちゃん・・・私の代わりに・・・生きて」


 真理亜は弱弱しく意味深なセリフを裕一に言う

 それからしばらくすると真理亜は昏睡状態に陥る

 ノアは裕一と真理亜を見ている


○19 神願神社(海から離れて七日目)

 朝、ここ数日間が嘘に見えるほどの快晴

 真理亜は昏睡状態のままである

 裕一は疲弊しきっている

 ノアは昏睡状態である真理亜の隣でくつろいでいる


裕一「真理亜、起きろよ・・・死ぬのか?俺に埋葬しろって言うのか?共有する喜びをもう一度俺に教えてくれ・・・」


 裕一が真理亜に話しかけても反応はない


裕一「こんなあっさりと死んじまうのかよ・・・」


 裕一はポケットから光り輝く五百円玉を取り出す

 裕一は真理亜の五百円玉も取り出す


裕一「おばあちゃん、このお小遣い、神頼みに使わせて」


 裕一はそう呟いた

 裕一は神社の賽銭箱に御菓子屋のおばあちゃんからもらった五百円玉を二枚入れる

 ノアは立ち上がり賽銭箱の方へ近づいていく


裕一「真理亜を救ってくれ・・・」


 裕一は心の底から願う

 裕一は長い時間願い続ける


裕一「俺たち兄妹を助けてくれ・・・」


 突如神社と賽銭箱がまばゆい光に包まれる

 驚いた裕一はその場に倒れ込む

 あまりのまぶしさに裕一は直視することが出来ない

 賽銭箱から二つの光る球体のような物が飛び出てくる

 光の球体の一つは真理亜に、もう一つはノアの体の中に入る

 裕一は目をつむる


裕一「光がッ・・・」


 突然裕一の体に何かが重くのしかかり、首には尖った何かが当てられていた

 光が収まり目を開ける裕一


裕一「何が起きたんだ・・・?」


 目を開けると裕一の体の上には真理亜が乗っていた


裕一「真理亜・・・?」


 それは限りなく真理亜似ていて真理亜ではない謎の生物だった

 黒髪だった真理亜の髪色は綺麗な白髪に変わっており、その体には猫耳と猫の尻尾のようなものが生えている

 裕一が見渡すと、真理亜もノアも本来いた場所にはいなくなっている


裕一「お前は一体なんだ?」

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。いよいよ次回が最終話です!!!

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