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「第三話 教師」

登場人物


風波見 裕一(主人公)

15歳の男の子、妹想い、ソラリスメテオ墜落以降妹の真理亜とともに崩壊した世界を旅しながら母親を探している


風波見 真理亜

心優しい12歳の女の子、好奇心が強い、裕一と旅をしている


御菓子屋のおばあちゃん

死んでいるように見えて実は生きてる、御菓子屋に住んでおり家族が戻ってくるのを一人で待っている


神谷

中年の男性、中学校で数学の先生をしていたらしい


天野 咲

小学生の時の裕一の同級生女子、二年前ソラリスメテオが堕ちる前日に自殺してしまう、生前は裕一と仲が良かった、裕一とは別の中学校に進学していたが中学校ではいじめを受けていた、裕一の夢の中によく出てくる


風波見 良子

裕一と真理亜の母、女手一つで兄妹を育てる、ソラリスメテオが堕ちた日は仕事の出張で家におらず現在は消息不明


ノア

真理亜が見つけたメス猫、風波見兄妹についてくる人懐っこい猫


「第三話 教師」

○5 野営(○4の続き、日が昇る前)

 ポテトチップスを食べて満腹になった真理亜は寝袋で爆睡している

 裕一は悪夢を見るのが嫌で起きている

 あくびをする裕一


裕一「眠い・・・」


 睡魔と格闘している裕一

 裕一がぼーっとしていると突然後ろから声をかけられる


神谷「水、もらえない?」


 突然声をかけられてびっくりする裕一

 声をかけてきたのは中年の男性


裕一「いきなり脅かすなよ!」


 半ギレしている裕一


神谷「ごめんごめん、まさか寝てるとは思わなくて」


 真理亜がまだ寝ていることに気づき、落ち着いて神谷に聞き返す裕一


裕一「寝てませんから、水ですか?」


 頷く男

 紙コップに水を入れ差し出す裕一

 水を一気に飲み干す

 紙コップを丸めポイ捨てする男


神谷「助かったぁ、どこも汚染された水ばかりで全然飲めてなかったんだよ」


 男は勝手に自己紹介を始める


神谷「俺、神谷。君らはここで野宿?」


 中年男性とは思えないほど気楽な挨拶をする神谷


裕一「そうです。俺は風波見裕一、そこで寝てるのが妹の真理亜」


 神谷が一瞬寝ている真理亜の方へ目を向ける


神谷「ほぉー、若いのに大変だねえ。こんなご時世だし兄妹で結婚とかヤっちゃってる感じかな」


 神谷の口調にイラッとくるものの無視をする裕一


神谷「あーごめんごめん、アダルトジョークだから。俺、人畜無害な大人だから安心して」


 とてもじゃないが人畜無害には見えない裕一

 真理亜が起きない程度のボリュームで喋り続ける神谷


神谷「しかし、君くらいの年の子を見ていると懐かしいなぁ」

裕一「懐かしいとは?」

神谷「俺、中学校で数学の教師をやってたんだ。もちろんソラリスメテオが空からこんにちはする前な」


 自慢げに語る神谷

 嘘だと思っている裕一

 二人の間に沈黙が流れる


神谷「うぉいうぉい、目上の人間に対してなんだその疑いを向けるような目は」

裕一「信じられない」


 ため息をつきリュックの中からぐちゃぐちゃになったプリントを取り出す神谷

 取り出したプリントを裕一に投げる神谷

 それを拾う裕一

 プリントを広げる裕一


 神谷「教員免許だ、かっこいいだろ。これで信じるか?」

 

 プリントには中学校教諭一級普通免許状と書かれている


裕一「まさかほんとに持っているなんて」

神谷「人を見た目で判断しちゃいかんぞ少年、特に大人の言うことは信じないとな」


 反論する裕一


裕一「こんな世界で大人も子供も関係ないでしょ」


 教員免許を丸めて投げ返す裕一


神谷「それもそうだな、でもいつの時代も子供は大人の言うことを聞いて育つはずだ」


 神谷は丸まった教員免許を一人で投げている


神谷「いや、そうでもないか・・・子供って言うのはトリッキーな動きばかりをしやがる。まともに育っちまえばおかしなことはしないはずなんだがな。俺の教え子にもあえて普通の道を外れた子がいたよ」


 神谷の喋り方はイライラするが、不思議と興味が湧いている裕一


裕一「普通じゃない道って?」

神谷「そいつはちょうど君くらいの年齢の女の子だった、見た目こそ可愛かったが、頑固だったよ。多分、その見た目と頑固な性格のせいだろうよ」


 神妙な面持ちで語る神谷


神谷「いじめを受けていたんだ、でも俺はあえて無視してやった。その子がいじめられていると知りながらな」


 神谷はリュックからガムを取り出しクチャクチャと噛み始めた

 ガムを出したついでに教員免許をリュックにしまう神谷


裕一「どうして無視した?」

神谷「話をせかすなよ、今順を追って説明してるんだから。俺には教師としてのある程度の経験値があった、今まで何人もいじめを受けている学生たちを見てきたが、だいたいいじめっていうのは加害者側にも被害者側にも悪いところがあるんだ」

裕一「その女生徒が悪かったのか?」

神谷「おー、その通り。そいつが弱かったからいじめられたんだよ、教師が間に入ったところでますますいじめがひどくなるだけ、だから俺は待ったんだ、その子がやり返すまでね。今までの経験ではいじめを受けている子供の保護者から連絡がくるか、いじめを受けている子がやり返していじめそのものがなくなるかの2パターンしかなかった」


 神谷は再びリュックからガムを取り出し噛み始めた


神谷「2パターンの前者の場合は最悪だ、教師の立場すら危うくなる、モンスターペアレント恐るべしってやつよ。それでも俺はその子がやり返す方に賭けてた」


 恐る恐る裕一は話の続きを聞いた


裕一「それで、その子はどうなった?」

神谷「結果は・・・モンスターペアレントでも、やり返すでもなかった」


 静かに話を続ける神谷


神谷「ある日のお昼休み、普段は学生たちの笑い声や楽しい雰囲気でいっぱいの休み時間なのに、その時だけはなぜか様子がおかしかったんだ。校舎全体が異様な興奮に包まれている感じだったな・・・多くの学生が校庭に集まっていた、今思うとなぜ俺はその時まで何が起きているのか分かっていなかったのか不思議でしょうがないよ」


 ここまでくると裕一は話のオチに気づいていた


神谷「俺も急いで校庭に行ってみると、いじめを受けていた女生徒が屋上にいた。次の瞬間・・・ドン!!初めて聞くような鈍い音が校庭に響いた、その子が飛び降り自殺したのさ。もうその瞬間学校は大パニック!泣く、叫ぶ、吐くの異常事態!しまいにはいじめてた側の奴らまで自殺するとか喚き始めるもんだから俺がぶっ殺してやろうかと思ったよ」


 やけに嬉しそうに喋る神谷


神谷「当然俺は担任としての責任を追われる始末だ、でも俺の処分が決まる前に・・・ドカン!!今度は空から隕石の野郎が降り注いできやがった!これだから人生はやめられねえんだよ!!」


 神谷が大声で喋ってるのにも関わらず真理亜は起きる気配がない


神谷「でもよ、今になって考えればその女生徒はいじめが嫌で自殺したんじゃなくて隕石が堕ちてくるって分かってて自殺したかもしんないよな、予知能力者かもしんないぜ」


 愚かにも最後まで話を聞いてしまった裕一は激しい怒りを鎮めるので手いっぱいだった

 怒りで声が震えないようにしながら裕一は女生徒の名前を聞いた


裕一「自殺した女生徒の名前は天野咲か?」

神谷「名前はもう覚えてねえな、担任だったけどそんな喋ったこともないしな」

裕一「忘れるはずないだろ!」

神谷「わりいな、覚えてないのも事実だ。それにしても面白いよな、生きて死ぬのって素晴らしいことだと思うよ」


 神谷が立ち上がる


神谷「それじゃあそろそろ俺は失礼しようかな、長居は迷惑だろ?」


 立ち去ろうとする神谷を裕一が止める


裕一「今の話は全て本当なのか?」


 神谷が笑顔を見せる


神谷「そうかもな、あるいはお前の頭の中で起きてることかもしれない」


 少し離れた場所で神谷が叫んだ


神谷「水ありがとな!お礼に一つ忠告だ、水に気をつけろ!」


 意味が分からず聞き返す裕一


「どういう意味だよ!」


 裕一の質問には答えず神谷は手を振ってどこかに行ってしまう

 あれだけ大きい声で会話していたのに真理亜はぐっすり眠っている

 神谷との会話で疲れ果てた裕一は眠ってしまう

 辺りはすっかり朝になっている


 時間経過

 

 目が覚める裕一

 真理亜は既に起きている

 神谷がポイ捨てしたはずの紙コップが消えている


真理亜「おはよう」

裕一「おはよう、朝方うるさくなかった?」

真理亜「なんで?別にうるさくなかったよ」


 首をかしげる裕一

 どれだけ真理亜に聞いても昨日朝方はうるさくなかったと答える


裕一「紙コップは?その辺に丸まった紙コップが落ちてなかった?」

真理亜「ないけど・・・」


 風もない紙コップが消えるのはおかしいと思う裕一


真理亜「何かあったの?」

裕一「・・・何でもない」


 裕一は神谷という男が現実にいたのか、あるいは夢の中に出てきたのか分からなくなっていた


実を言うとこのシナリオは、もう二年以上前に書いた作品です。現在連載中の長編作品「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」の滅びかけた世界編と、Chapter5(第十二、十三、十四部分)の基盤となったお話でもあります。

この作品が気に入った方はそちらもぜひ読んでみてください、究極の異世界ファンタジーが広がっておりますので。

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