三
「へい」
色吉はうなずいた。
「なにか遊びかたでわからないことはありますか?」
「うーん」色吉は頭をひねった。が、なにも思いつかない。「ほんとのところ、遊んでみねえことには」
苦笑交じりに言うと、留亜もうなずいた。「そりゃあそうですねえ」
「で、その絵双六は、家にはもうないんで?」
留亜はうなずいた。
「で、双六の進め方と、双六が行方知れずになっちまったことには、どういうつながりがありやしょう」
「あら」
留亜は驚いたように、ぱちぱちと目をしばたいた。「沈世双六は行方知れずになったわけじゃないんですよ、わたしたちがあまりに夢中になるものだから、父が近所の古道具屋に売ってしまったんです」
色吉はあっけにとられた。
「ああ……そうなんで。じゃあ、その古具屋にいけば、売れてなけりゃ手に入りそうでやすな」
「それが、もう十年近くも以前の話で、その古道具屋さんももう潰れてしまってるんですよ」
色吉はなるほど、と言い、「でもとにかく、その古具屋を手始めの手掛かりにたぐっていきゃよさげですな」
「でもね、その古具屋さんは家族も身寄りもなく、ひとりでやっていて、年取ったからといって店をたたんでどこか遠くへ隠居したらしいんですけど、もうだれもどこに隠居したのかわからないのです。というのもそこのおじいさんと親しかった人も、みな亡くなってしまって」
「親御さんは……」
留緒の父母、つまり留亜の両親は健在のはずだ。しかし留亜は悲しげに目を伏せながら小さく首を振った。
「それほど親しくはなかったのです」
そうですか、と色吉は腕を組んだ。
「ええと、それで、双六の遊びかたは、失せもの探しとなにか係りあいがあるんで?」
色吉は逸れた話を戻した。
「さあ、そんなことはわかりません」
「じゃあなんで……あんな事細かに話していただいたんでやしょう」
「さあ、それはなにかの役に立つかもしれないでしょうから」
「役に立つ……」わけないだろ、というのは飲みこむ。
「それはわたしではなく、色吉さんのほうで決めてくださいな」
「はあ、そうでやすね」
たしかに関係のあるなしはかまわず、とにかくすべて話してくれ、とは色吉のいつも言っていることだった。だったが、しかし限度ってものがあるだろう、とも思うも、もちろん口には出さない。
「沈世双六を特に気に入っていたのは、すぐ下の妹の留依でした」




