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九
太助とふたりの捕方は通りに出ていき、のたうち回っている怪我人を立たせ、肩を貸した。店から爆発音がして、体の横を空気を切り裂きながらなにかがかすめていった。
「ちくしょう、撃ってきやがった」
怪我人を引きずるようにして慌てて退散する。
「親分が撃つなら撃て、なんて言うからでしょうが」
捕方のひとりが言った。
「ああ言やあ、ふつう撃ってこねえもんだろが。意気に感じるってことを知らねえのか」
「ええ……」
岸摩屋には戻らず、そのまま摂津屋から遠ざかる。それを追うように二回、銃声がしたが、いずれも弾は誰にもあたらなかった。
少し離れたところに、気の利くやつが戸板を三枚用意していた。怪我人を任せると、太助はさっきの路地に入っていった。
「その後どうでえ」
摂津屋の明り取りを見上げている卒太に小さく声をかける。
「なにもありやせん」
窓を見あげたまま卒太が答えた。
「そうか」
これからどうしたものか。店のまえを通って宇井野のもとに戻るのは危険だ。太助も明り取りを見あげ、腕を組んだ。




