六
「そのころには父の賭博癖も病膏肓というやつで、その生活たるやひどいものでございました。賭場はもちろん、あちこちに借金をかかえ、方々に不義理をし、長屋の支払いも滞って追いだされる寸前。それでも賭場がよいをやめられず、さらにつけだの借金だのを増やしていったのです」
「そりゃあ救いがたいですねえ。おっとごめんなすって」
「いえ、本当にそうですから構いません。わたしもそう思います。なにしろとうとう、いよいよ残ったほうの腕まで落とされる、というところまでいったのですから」
「さすがにそんときぁ、お見捨てなすった?」
「ふふ。それがそうではないのです。実はそれこそが今日の話の本題でして、父に博打をやめさせるために、わたしは博打に打ってでることにしたのです」
「賭場に乗りこんだんで?」
「いえいえ、わたしの博打というのはもののたとえです。ある意味では賭場に乗りこんだといえるかもしれませんが。まあ順を追ってお話ししましょう。
まずはいろいろのところの借金を利子をはずんできれいにし、たまっていた家賃を返済すると、庵と通いの小女を用意して、父を住まわせたのです。借金の額というのは、父にとってはとても返しきれる額ではありませんでしたが、わたしにとってはそれほどでもありませんでした。家のものには、わたしの唯一の道楽だと思ってくれ、と堪忍してもらいました。実際のところその額は、そののちにわたしが父のために費やしたのまで含めて全て合わせても、紀文がひと晩で使った十分の一にも満たないでしょう」
「そののちに……というと、それでも親父さんは博打をやめなかったんで?」
多賀屋惣兵衛はうなずいた。




