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Nola ~偽りの勇者~  作者: A_ria
一章 高潔のシンコウ者
2/19

N-1 目が覚めたら王都だった件

「おはよう」


 (だれ)かの呼ぶ声がする。

 声が()こえた方を見てみると、そこには青空を()に俺の顔を(のぞ)幼馴染(おさななじ)みのマリアがいた。


「あぁ、おはよう。マリア」


 やあ、俺はノラ。

 もうじき成人(せいじん)(むか)えるしがない村人(むらびと)だ。

 今は(むら)(はず)れの丘で楽しんでいた昼寝を幼馴染みに邪魔(じゃま)されたところさ。


 ところで、今マリアは至極(しごく)不機嫌(ふきげん)そうな顔でこちらを(にら)んでいる。

 おかしいな、その顔をしたいのは俺の方だと(おも)う。

 だってそうだろ? 人がせっかく気持ち良く(ねむ)っていたっていうのに、それを邪魔されたんだから。


 まったく……どうして眉間(みけん)にシワなんか()せてるんだ?

 心当たりが()いな。

 そんな(こわ)い顔をしていては村一番の美人(びじん)(だい)()しだぞ。


 マリアは俺のとぼけ顔を見るやいなや、


「そのわざとらしい顔やめて。ノラ、あなたもうすぐ成人するっていうのにいつまでそんな気の抜けた生活続けるつもりなの? 少しはソラの真面目さやサラの活発さを見習いなさい」


 同じような小言(こごと)を言われ続けて数年、流石(さすが)()きた。

 マリアは一々弟妹(きょうだい)のことを比較(ひかく)に出すが、みんな違ってみんな良いではだめなんだろうか。

 弟には弟の、妹には妹の良さがあるんだし。


 な? だから俺には俺の良さがあるってことにならないかな。

 まあそんなことを言ってもマリアの口煩(くちうるさ)さが()すだけだから言わないけど……


「別に良いだろ。俺は村の皆と笑い合いながらのんびり生きていくのが性に合ってる」


「はぁ……その考えを駄目とは言わないけど、仮にも元()()()()を両親に持つ男でしょ。王都で名を上げようとか、そう言う野心の1つや2つ持ってないの? あなたは昔から……──」


 王都か、興味(きょうみ)無いな。

 俺が()まれる前に両親が王都で騎士をやっていたらしいが、それも昔の話だ。

 今は隠居(いんきょ)して王都から最も遠いこの村でスローライフを送っている。


 俺はむしろ両親の姿(すがた)を見ているからこそ村に居たいと思っている。

 両親を見ていると今が一番(しあわ)せという感じがするから。



 はぁ……マリアも王都で冒険者になるとか言いってないで、ここでスローライフを謳歌(おうか)すれば良いのに……









ピッ……ピッ……



「ここは……」


 ベッドの上……みたいだな。

 何か昔の(ゆめ)を見ていたような気がする。

 ん……? なんだこれ、体が(うご)かない……。


「……」


 ここは何処(どこ)だ?

 こんな天井(てんじょう)には()(おぼ)えがない。



ぴよんっ……



 見覚えのあるアホ毛だな。

 と思ったのも(つか)()、小さな影が俺に(かぶ)った。


「!?」


 (い"だ)っ……!?

 少しビクッとしただけで身体中に(しび)れるような激痛(げきつう)が走る。

 なんだよ……一体(いったい)何がどうなってるんだよ。


「起きた……ノラお兄ちゃんが起きたよぉ!」


 小さな影からよろこぶ声が聞こえる。

 聞き馴染みのある声だ。

 ただ、その声にはいつものような活気かっきはなく、今にも泣き出してしまいそうなほどふるえていた。


「サラか……?」


 俺は声を(しぼ)り出す。


「そうだよ! 良かったぁ……あっ、そうだ! 早くみんなに知らせてあげないと!」


 そう言ってサラが走って(はな)れていく。


「ヘブっ!?」


 おっと、何かにぶつかったようだ。


「い、痛いよソラお兄ちゃん! 突然入って来ないでよ!」


「いやいや、そっちが飛び出してきたんじゃないか。だいたい、病院を走ったら駄目だって何度言ったら……──」


 サラがぶつかったのは部屋(へや)に入ってきたソラだったみたいだな。


 ソラは相変(あいか)わらず真面目だな。

 そして聞き捨てならぬ言葉(ことば)が聞こえた。

 ここが病院だって? なんだってそんな場所(ばしょ)で俺は寝てたんだ。


 少し状況(じょうきょう)整理(せいり)しよう。

 ここが病院だというなら分かることも多い(はず)だ。

 さてと、


 口元に着けられている呼吸器(こきゅうき)……


 体中に(つな)がるチューブ……


 固定(こてい)されている体の節々(ふしぶし)……



 なるほど俺は患者(かんじゃ)らしい。

 (まい)ったな、何があったか何も覚えていないぞ。

 ふむ……事件(じけん)(にお)いがするな。


 まあそれはそれとして、


「ソラ……相変わらず手厳しいな」


「え?」



ガシャン



 (なに)かが落ちる音がした。



………



……





 魔法(まほう)という神秘(しんぴ)の力が(あふ)れる世界アグノツウズ。

 人類は太古(たいこ)から聖竜(せいりゅう)加護(かご)のもとに繁栄(はんえい)し、数千年にも(わた)文明(ぶんめい)発展(はってん)させてきたという。

 しかし、そんなにも長い歴史(れきし)があるのに(いま)(なぞ)(おお)きこの世界は、きっと人間には(はか)れない程に壮大(そうだい)なんだろう。


 世界は現代(げんだい)までに様々(さまざま)な国がそれぞれの文化(ぶんか)(いとな)(さか)えてきた。

 中でも世界最古(さいこ)の歴史を(ほこ)る人間の国──ノレシア王国。

 そんな国の最果(さいはて)ての、(いち)さな村で俺は(そだ)った。


 村での()らしは充実(じゅうじつ)していた。

 スローライフ志望(しぼう)の俺には、年頃(としごろ)の者なら(だれ)もが夢見る都会(とかい)での活躍(かつやく)なんて(まった)くと言って良い(くらい)興味(きょうみ)()かないことだった。

 だから俺は村での暮らしを手放(てばな)すものかと幼馴染みのしつこい勧誘(かんゆう)(かわ)し続けていたんだ。


 だが(いま)はどうだろう。

 見知(みしら)らぬ場所で目覚めたかと思ったら、なんとそこは王都だというじゃないか。

 一体(いったい)なぜ、どうしてこんな所に? と始めは必死(ひっし)回想(かいそう)(かさ)ねたが、そんなことは(じき)にやめた。


 何故(なぜ)なら思い出せないから。


 医者(いわ)く、俺は解離性健忘(かいりせいけんぼう)とかいう一種の記憶喪失(きおくそうしつ)状態らしい。

 どうやら(ひど)い事故にあったようで、ショックでその時の記憶が()け落ちてしまったんだろうとの話だった。

 全く(こま)った話だよ。


 そのせいで俺は2ヶ月近くも入院(にゅういん)する羽目(はめ)になったし、村へもすぐには(かえ)れないし。

 俺たち兄弟3人は(しばら)くは王都に住むじいちゃんと()らすことになっている。


「ノラよ、支度は済んだか?」


「うん。行こうじいちゃん」


 今日(きょう)、俺は退院(たいいん)した。

 そして俺たちは、約4ヶ月後に(ひか)える王国祭(おうこくさい)が終わるまでの間を王都で()ごすこととなった。

 なんでも、王国祭には故郷(こきょう)(のこ)ったという両親とマリアも来るらしい。


 どうせ(むか)えが来るならそれまで王都にいれば良い。

 そう言うじいちゃんの提案(ていあん)にソラとサラが賛成(さんせい)したため、当面(とうめん)(あいだ)王都で暮らすことが決定(けってい)した。

 (じつ)は俺はさっさと村に帰りたがったんだが、そこはしっかり空気を読んで(だま)っておいた。


 とまあ、そういう(わけ)で故郷へ帰るまでの間をじいちゃんの所で厄介(やっかい)になることになったのである。


 王都の暮らしは村でのノビノビした暮らしと比べると少し窮屈(きゅうくつ)に感じる事もあるだろう。

 もしサラが(ひま)を持て余す様なら、俺が時間が空いたときに面倒(めんどう)を見てやろう。

 ソラの方は普段(ふだん)から魔導書(まどうしょ)とにらめっこしているから故郷にいた(ころ)特段(とくだん)変わることも無いだろうし大丈夫かな。


 肝心(かんじん)の俺はと言うと、どうやら病院で寝たきりでいる間に成人を迎えていたみたいなのでこれを()冒険者(ぼうけんしゃ)になろうと考えている。

 なぜなら冒険者になればその(あかし)がそのまま身分証(みぶんしょう)としえも利用できるらしく、冒険者になることで(とく)はあっても(そん)は無さそうだったからだ。

 一応(いちおう)、一定期間依頼(いらい)を受けていないと登録抹消(とうろくまっしょう)されるらしいが……俺は冒険者として生涯(しょうがい)を生きていこうという訳ではないから別に良いだろう。


 一生の(うち)のほんの少しを冒険者として活動(かつどう)するだけだ。

 ()()りすぎずほどよく(かせ)いで多少の娯楽(ごらく)と故郷へのお土産(みやげ)を買うのを目標(もくひょう)にしよう。


 まあ、あれだ。


 気楽(きらく)に行こう。




2021/2/18 大きく修正致しました。

2021/9/30 再び大きく修正致しました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・第一話がとても読みづらいので頭に物語が入ってこない、ある意味インパクトが強すぎる。 [一言] Twitterで作品の紹介いただきありがとうございます。
2021/09/25 14:19 退会済み
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