第7話 〜化け物かな?〜
若い受付嬢と歳がいった多分上司となる者に連れられたのは個室だった。
俺は椅子に座り、目の前に受付嬢達も座り込む。
「アイラ・ミーラさん、貴方はどうやってここまで生きてきたんですか?」
まさしく直球、どうやって外れハイ・ヒューマンである俺がここまで生きてきたか。
まぁここは正直に言った方がいいだろう。なぜなら相手の受付嬢の職業が嘘を見抜ける職業ならここで嘘をついたら損しかないからだ。
「固有スキルのおかげです。『制御』というスキルで、ステータスに制御をかけ今まで生きて来ました。」
「そういうことでしたか……それなら納得です。一応確認のためこの冒険者カードのステータスを見てもよろしいでしょうか? 一緒に映し出されてしまうスキルは隠してもらってもいいです」
「分かりました、じゃあ一応先に見させてもらいます」
俺は冒険者カードを受け取り、ハラさんに習ったとおりにステータスと心の中で念じる。そうするとカードの中に俺のステータスがでてきた。
力 魔力 知力 俊敏 耐久。全て平均通りだ。
それは別に見せてもいいがが目に付いたのはスキル欄だ。
固有スキル『制御』と別に3つのユニークスキルが宿っていた。
ユニークスキルとは職業から獲られるスキルとは別に、今までの人生の中での出来事を神が見て、その功績に見合ったスキルを授けてくれるものだが……てっきり俺には無いと思っていた。
ユニークスキルは3つ。
1つ『躍動』
2つ『魔法融合』
3つ『爆熱』
『躍動』これはハラさんから聞いたことがある。
心が踊ったり、体が躍動したり、体中の全てが躍動した時に相手を恐怖するほどのバフがかかるらしいが……このユニークスキルを獲られるのは極稀で使用している人を見た事がないからなんとも言えないと言っていたのを覚えている。
2つ目 『魔法融合』これは名前の通り魔法融合できる。だが扱いが難しく、初級魔法ぐらいしか融合出来ないという外れスキルだが……これは俺にとっては最高のスキルかもしれない。
そして3つ目『爆熱』。これは分からない。
今は気持ちを昂させるのをやめ、一応加護の欄は消しておこう。
俺のユニークスキルは知られていてもたいして意味が無い。一応『魔法融合』だけは消しておこう。
「はい、これで大丈夫です」
「では見させてもらいますね……『制御』『躍動』『爆熱』そして職業はなしですか。珍しいですね」
そうか1つ空欄があったがあれは職業の欄だっのか。
「ステータスは一般の農夫と一緒と。あと一応、2つ名も……2つ名【最弱勇者】?」
「「…………ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
◇◇◇◇◇
「どうも……ギルドマスターのベルクル・リーリンです」
今度はギルドマスターが出てきた。赤いボサボサの髪に酷いクマ、そしてやせ細った体にボーボーの髭。
ギルドマスターとは思えない風貌だが、毎日強者と会っていた俺だから分かる……こいつは強い。
入った時から見定められている感覚が俺の体を支配している。
それほど俺の2つ名持ちが異常だったらしい。
2つ名。Bランク以上の者に国の偉い人が考え、2つ名を決め世間に公表される。
そしてみんなから認識され呼ばれるようになったらやっと冒険者カードに載る。
それもしてない俺は誰に【最弱勇者】と呼ばれているか?
世間に浸透しなくても2つ名が得られる事がある。
魔王、魔王軍幹部、四天王、圧倒的猛者から呼ばれる場合。
魔王軍から呼ばれている2つ名、圧倒的猛者から呼ばれる2つ名は直ぐに冒険者カードに載る。
「君は魔王軍とどういう関係なのかな?」
これまたド直球。
ギルドマスターからは魔王軍と何かしら因縁がある者だと思われているだろう。
「言えません、何も言えません」
勿論、何も言えない。嘘をついたら俺に得はないし、真実を言う訳もいかない。ここは言えないを突き通さなければならない。
「なにも言えないか……。私たちとしては君の強さを知りたいと思っていてね。もし君が魔王軍に認められている人だとしたらAランクか、それともSランク……もしかしたらSSランク冒険者並の人物なのか」
「…………」
「何も言わないか!」
「ッッッッッッ——————」
眼前に見える一筋の刃。
アイラは心の中で『制御』を解除と念じる。瞬時に溢れ出す力でアイラはギルドマスターが投げたナイフを上半身を思いっきり前へと倒して避ける。
そこから上半身をさげた勢いで地面に手を付け下半身を浮かせる。その勢いの右足でギルドマスターの顔をを蹴りつける。
だがギルドマスターは俺の右足を左腕で防ぐ。
それも予想通り。
アイラは右手を床から離し、木刀を手に取りギルドマスターを蹴りの勢いと一緒に切りつけていた。
蹴りの防御に気を取られていたギルドマスターはアイラの木刀に気づかずそのまま無防備の足に木刀が当たる。
「なに!?」
木刀が当たる直前、ギルドマスターの右手がいつの間にか先程蹴った右足に握られていた。
その右腕の腕力で不安定なバランス俺を、投げ飛ばした。
「かはっっっっっ!?」
アイラは壁に激突した。
なんだよあいつ!? あんな細身の腕にどれほどの力があるんだよ!?
と心で悪態付きアイラ直ぐに状態を戻そうとするが、体勢が悪いため起き上がるのに2秒時間がかかってしまう。
こんな狭い空間での2秒それは死を意味する。
ギルドマスターは俺の隙を見逃さず、まだ隠し持っていたナイフを俺の首元へと投げた。
それは寸分狂わない完璧な角度と速さ。洗練されすぎたそのナイフは俺の首を貫くかと思ったが……
「ウィンド!」
超絶初級風魔法『ウィンド』俺は左手の手のひらをナイフの方に向け風を一直線に起こした。それはナイフに当たりナイフの向きをギルドマスターに変えた。
ナイフは風の勢いと共にギルドマスターに当たる筈。
そう思ったが……
右手の親指と人差し指でナイフの中腹を掴み、止められてしまった。
「Bランク並の腕前はあるか……君を今からBランク冒険者と認めよう」
「ははははは、化け物かよ」
ギルドマスターは微笑する。
「君も相当化け物だよ。この小さい空間の中でこの2人に危害を加えず私だけに攻撃を集中させた。2人とも、ごめんねこんなに熱戦になると思わなくって」
「本当ですよギルマス! 死ぬかと思いましたよ!」
「ごめんごめん。それとライちゃん。君がアイラくんの担当になりなさい。あとは任せましたよ、ミリー」
その言葉を最後にギルドマスターはドアを開け、応接間を出て行った。
「ではアイラさんこの後の手続きをしましょう」
「分かりましたけど、ちょっとこの体勢直してもらってもいいですか? 死に直面して腰が抜けちゃって」
受付嬢2人に情けない姿を見せているが、俺はそんなことを気にしない。
それより強者と戦えたことが嬉しい。
これが人族、魔族とは全く戦い方と考え方が違う。
慌てて寄ってくる、受付嬢に体勢を直してもらっても抜けた腰は戻らず10分間休憩を頂いた。
◇◇◇◇◇
「あの子は化け物かな?」
ギルドマスター、ベルクル・リーリンは先程アイラに蹴られた左腕を擦る。
「あのキックは囮であの体勢から木刀を僕に叩こうとした。その後の初級魔法の魔力のコントロール……確実にAランク並の実力はある」
ベルクルは自分の執務室へと入り、人差し指の先端に何かをはめる。
「こちらベルクル、聖騎士長に連絡をお願いする」
「おーどうしたベルクル?」
「期待の新人が出た」
「ほう名前は?」
「【最弱勇者】アイラ・ミーラだ」
この小説はあと20話ぐらいストックがあるのですが、小説を書くのって難しいなって……いや戦闘シーンが苦手すぎるんですよね。俺の戦闘シーンって皆さんの中で想像出来てるのかな? 心配になったりしてます。
ということで今回はベルクルとの戦闘シーンですね。すんなりBランク冒険者と認めましたね。まぁ新戦力は必要ですし、多少怪しい冒険者も入れた方がいいですよねって私の中で完結してます。まぁまだ見定めはあるんですけど。来週はヒロインが登場します、私の小説人生で初めての使う喋り方です。
by わっしょいわっしょいわっしょい! 犬三郎