第2話 〜ふっ! ふっ! ふっ!〜
「アイラ、お前は今から圧倒的ステータスに耐える体を作ってもらう」
今日からアイラは戦闘の訓練に入る。
「まずは筋トレだ。お前は外れハイ・ヒューマンと言ってもハイ・ヒューマン。体を極限まで鍛えられるはずだ」
「ってことはどうしたらいいんですか?」
「この剣を振りまくれ。剣を振るということは握力、腕力、全ての上半身も下半身も効率的に鍛えられる。だが間違った振り方をすれば筋トレにもならないし武器の扱いも雑になる」
「それはつまり……もしかして!」
「そうだ。シュラインが振り方を教えてくれる」
「やった!」
シュラインとは魔王軍幹部序列3位。剣の達人だ。
剣の技術で全ての者を斬殺してきた剣のスペシャリスト。
魔族は生まれた時から魔力の量が決まっている。シュラインはその量が極端に低いのだ。
その代わり、突出している速さと剣の技術を磨き魔王軍幹部となったシュライン。
そんなシュラインにも欠点がある。
「シュライン、隠れてないで教えてやってくれよ」
「…………」
スタッ! とアイラとハラさんの目の前に突如と出現した。
シュラインは魔獣ウルフの亜種。ウルフが人型になり、毛も無くなり見た目は本当に人と同じ見た目。
だがシュラインは物凄い恥ずかしがり屋で仮面を付けて声も出さない、そのせいで人族からは【無音】と言われている。
そう呼ばれている理由はまだ沢山ある。
例えば音もなく姿が現れ、対象の首を掻っ切る。
敵と退治した時、相手が声や剣を抜く時の音を出す前に殺す。
そしてシュライン自身はあんまり喋らない。
まさに無音と言っても過言ではない。
「…………」
シュラインは剣を取りだし、アイラに見せるように剣を振り出す。
一見ただ振ってるいるように見えるが、注意深く見れば剣を降っているのに空気を斬る音は出ていない。
まさに洗練された技術。
「…………」
シュラインはアイラに剣を渡し、素振りをしろと言われているような感覚になったアイラは剣を振る。
「…………」
駄目だ。と言わんばかりに首を思いっきり横に振るシュライン。
「ふんっ!」
シュラインは首を振る。
「ふんっ!」
シュラインは首を振る。
そこから5年の月日が経った。
「ふっ! ふっ! ふっ!」
今日も俺は剣を振る。
俺には才能がなかった。普通のハイ・ヒューマンなら軽く出来る剣の振り方も未だできない。
「ふっ! ふっ! ふっ! ふっ! ふっ!」
毎日、剣を6万回振っている。それぐらい振っても大丈夫なくらい筋肉と体力はついてきた。
だがそれまでだ。未だ『制御』の解除をやらせて貰えない。
師匠のオーケーがもらえるまで絶対にやらせないそれが条件だ。
だけど今日は嬉しいことに俺は10歳の誕生日迎える。
人族は10歳になると加護をもらえる。加護とは神が一人一人に適した加護を与えるもの。
加護次第で最強になれるそういう可能性を秘めている。
俺はその加護に賭けている。もう俺は伸び代はないと言っても過言ではない。それを加護の力によって超越する、もうそれしかないのだ。
「師匠、俺は加護で強くなれますかね? そもそも加護に頼ってもいいのでしょうか?」
「………………」
「分からないですか……」
俺はこの5年間で師匠の考えていることが分かってきた。本当になんとなくだが言葉足らずの師匠からは未だアドバイスを貰ったことは無い。
だけど師匠の代わりを用意しろなんて言えるわけもないし、言うつもりもない。
剣を振り続けてる間、ハラさんに座学も教えてくれている。
その中でやはり剣の技の習得は必須だと自分でも分かった。
『制御』を解放して何分体が耐えられるか分からない。
『制御』の力を使えない状態に陥った時、一般の農夫と変わらないステータスの俺は力任せに剣を振っても戦士系の職業に就いている冒険者には簡単に負けてしまう。
だったら技で勝つしかない。そのため技が多い剣術を覚えようと頑張ってはいる。その為にはこの素振りを完璧にしないと……
とその時、俺の周りから淡い光の粒が無数に出てくる。
「これが……加護の獲得の前触れ」
光の粒は100いいや500いいや、それ以上の数がどんどん出てきた。
その中の3つの光の粒が眩くなる。
その光の粒は俺の体内へとスっと入ってゆく。
3つの光の粒が入った途端、無数にあった光の粒が全て砕け散った。
◇◇◇◇◇
後日、加護を調べる検査をし俺の加護が分かった。
1つ 『力の根源』
2つ 『魔法の根源』
3つ 『感覚の根源』
通常は加護を獲得出来ない事の方が多いのに、俺は加護を3つも貰ってしまった。
普通、加護が3つも獲得できるのは滅多にないことらしいが…………全て外れの加護だ。
名前に根源がついている加護は前者にある文字の力を馬鹿みたいにパワーアップさせることができる。
それと同じに根源の付いている加護は体に唯井な負担が掛かる。
加護を絶対に使うなとハラさんや他の皆にも言われた。
「使ってみるか……」
ある日、好奇心に負けた俺は『感覚の根源』を使ってしまった。
その直後、俺の感覚が爆発したように激しく全てを読み込む。
目・耳・鼻・舌全ての五感が研ぎ澄まさる。
いや研ぎ澄まされすぎている。何かを意識すれば全ての情報が俺の頭に入ってくる。目の前の壁に集中すれば、壁についている埃、汚れ、模様が全て俺の頭の中に入ってくる。
その情報量が多すぎて頭が脳が痛くなる。
「『感覚の根源』解除!」
直ぐに加護の発動を取り消し、俺は床に倒れた。
地味すぎ! 剣降るだけでどうやってかっこよく見せればいいの!? まぁ後々カッコイイのにするつもりですけど……まっいいか。
ということで始まりました修行編です。あと1話で終わりです……修行編……剣振るだけで書くことないんだもん……まぁそんなことはどうでもいい。
私は天気の子大好きなんですよね。天気の子のDVDを買おうとしたら8K対応のDVDは1万2000もするんですよね。いや8Kってどんな綺麗なの!? とか思いましたよ……思ったんです、オチはないです。
by 前転ついでに犬三郎