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第34話 〜絶望と歓喜の厄災〜

アイラはとうに限界を超えていた。それなのに立ち上がるのはライの為か? 自分の自尊心の為か?


いや違う、圧倒的猛者に勝ちたいそれだけだ。


「シュライン流 剣術 レッドウルフ ポイズンスネーク ハイオーガ アイアンゴーレム シルフィード『抜刀 乱れ打ち 真』!」


アイラは一直線に爆速でシュラインに向かって飛ぶ。


『抜刀 乱れ打ち 真』この剣術はアイラの空想上の技だった。


アイラがシュラインにどう勝とうかと未完成ながら練習をしていた。その成果と今のアイラの『躍動』によってそれ以上のモノを完成させた。


「我流 剣術 スネーク オーガ ゴーレム キラープラント シルフィード『受け流し』!」


準備ができておらず、シュラインは『受け流し』を選択する。


「うりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「なんだこの強さは!?」


シュラインに生傷が増えていく……いや増えすぎている。シュラインの『受け流し』が通用しない、シュラインの剣に刃こぼれも増える。


「ユニークスキル『爆熱』発動!『爆発する炎』ファイアエクスプロージョン!」


鳴り響く轟音、舞う砂埃。


アイラは木刀を振る中、ユニークスキル『爆熱』を発動させ、『爆発する炎』ファイアエクスプロージョン放つ。アイラの木刀を受けきるのに精一杯でシュラインは『爆発する炎』ファイアエクスプロージョンを受けざる負えなかった。


圧倒的な炎にシュラインは死ぬ、そのはずだった……たが……


「無効魔法『全無効の体』!」


シュラインの最強の魔法。無効魔法の極意、『全無効の体』。『全無効の体』を使うと魔法、物理攻撃、状態異常、全てが無効になるというチート魔法だ。


だがその代償も凄まじく、1回でも使うと通常の無効魔法の継続時間が極端に短くなる。


シュラインがこれまで使った回数は3回、これで4回目。通常魔法の効果時間は約0.1秒なってしまう。今、この状態で勝たなければ一瞬で死に至る。


今、この魔法が持続している時間で倒さなければシュラインは死ぬ。


「ふぅーーーーーーーーーーーーー!」


アイラは未だに『抜刀 乱れ打ち 真』をしているがシュラインには全く効かない。シュラインは集中力を高め、剣を携え、握る。


「我流 剣術 奥義『抜刀 斬』!」


アイラが危険を感じた時にはもう遅かった。シュラインはアイラに向かって一千の抜刀を放つ。


「グアアアアァァァァァァァァァァ!?」


抜刀が一筋当たっただけなのに、アイラに千もの切り傷が一瞬で付く。


アイラは『抜刀 乱れ打ち 真』の手が止まる。


「我流 剣術 奥義『突き 喝』!」


それでもシュラインは油断をしない。己の最強の技の奥義2つでアイラを仕留めにかかる。

シュラインの剣の剣先がアイラのお腹の部分に少し当たる。


次の瞬間、アイラのお腹に大きい穴が空く。


「かはっっっっっっっっっっっっ!?」


そこでシュラインの気は全て無くなる。愛弟子に勝つために全ての技を使い。今できる最大の結果を残した。

普通なら勝ちに安堵し、膝をつき体を休ませたい。


だがシュラインにはそれは出来なかった。


何故ならお腹に穴を開けても、体に数千の傷を負っても、血を何リットルも出したとしても目の前の愛弟子は倒れないからだ。


「ふぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


アイラは大きく息を吸い吐く。


そして木刀を上へ持ち上げる。もうシュラインには逃げる力は残ってはいない。


だが未だに『全無効の体』の魔法は続いている。どんな攻撃がきたって耐えられる。


それはアイラを知らない人がいたらそう思うはずだ。


だがシュラインの目には圧倒的な死と自分の涙が見えた。


アイラが木刀を上げる仕草、一切無駄がなく全てが洗練されている。あんなに漏れ出ていた気が1つの木刀に収束し始める。


「1000……2000……3000キロ!」


アイラは目を光らせる。その姿はまるで英雄と呼べる姿。


「我流 奥義 『上段切り 天変地異』!」


「ッッッッッッッ—————————!?」


シュラインは13年間、アイラが剣を振り続ける所を見てきた。アイラが剣を振るフォームが完成したのは1年。


もうそこで合格を出そうとシュラインは思ったがこれを続けたらどうなるのか?


指導者としては最悪の判断だが、剣の達人としてこの振り方を極めたらどうなるか?


それを見てみたいそう思ってしまった。


それが今叶った。目の前に見える木刀は正に愛弟子の最強の一撃、魔王にも傷をつけるであろうであろう一撃。


この攻撃は自分の『全無効の体』を貫くだろうとシュラインは確信した。


————スン!


シュラインが死を覚悟した時、王都全体に突風が起きた。


「出来るわけ……ない……だろ……!?」


アイラはシュラインの眼前で木刀を止めていた。血を何リットル出したとしてもアイラの目からは涙がドバドバと出始める。


「師匠を……家族を……! 殺せる……わけ……ないだろ!?」


アイラは大粒の涙を流しながら木刀から手を離す。


————バタン!


アイラは木刀を手放し、地べたに倒れる。それを気に血が有り得ないぐらい出始める。


本当にギリギリの戦い、その中で成長したアイラは自分の血を出させないことに成功していたのだろう。


数千のギスから、空いたお腹から血がドバドバと出始める。


普通の冒険者、魔王軍幹部でも死ぬぐらいの深手を負っても尚生きていのは『躍動』のおかげで魔力、気が有り得ないぐらい体を覆ったいため命からがら生き延びていた。


「アイラ!? アイラ!?」


シュラインはアイラを揺さぶる。アイラの体は恐ろしく冷たい。


「お前はここで死んでいい人間ではない!?」


思わず自分の使命を捨て、アイラを生かそうと励ますシュライン。


「師匠……俺の……剣は……どうだった?」


「凄かった! お前は俺を超えた! なら生きろ!」


「あはは……は……師匠をやっと越え……たか……それだけで十分だよ……」


「嘘を言え!? お前にはまだ生きてもらわないと困る!?」


アイラの師匠として、父親として見守ってきたシュライン。ここの姿を人間に見られたら終わり、そうだとしてもアイラを励まし生かす。


「そうだ……師匠……最後に……師匠の顔を……見せてくれねぇか?」


「ああそんなの幾らでも見せてやる!?」


シュラインの顔を覆っていた布を取る。


「ははは……凄いかっこいいじゃん……」


声色は笑っているが表情は少ししか動いていない。


もう死んでしまう。それを確信したシュラインの目からは紫色の涙が出ていた。魔族は基本的に滅多な事がない限り涙を流すことは無い。


たとえ人が流すような涙ではなくともアイラにはその涙を見れて嬉しかった。


「アイラ死ぬな!? 死ぬ前にお前の手で俺を殺せ!? そうすればお前は……!?」


「じゃあ俺が殺してやる」


「かはっっっっっっっっ!?」


「師匠……!?」


アイラは目を見張る、シュラインの体に剣が刺さっていたからだ。


—————バタン!


「師匠……? 師匠……!?」


シュラインは地べたに倒れ、紫色の血を流す。


その後ろに見えたのは真っ赤な鎧と真っ赤な剣を持っている人物と、顔におめかしも最大限に施している人物。

真っ赤な鎧を着ている者はシュラインから剣を抜き取ると血を舐める。


「はー、魔族の血は俺を強くするが……不味いんだよな」


「あははははは! ヤウチ君、惨いな〜。そんなヤウチ君みてターヌ怖ーーーい!」


「黙れターヌ」


あたかも何も無かったたように会話を進める2人を見てアイラは何が起こったのか未だに分からない。

それでもアイラは瀕死ながらもシュラインを揺らす。


「師匠……起きてくれよ……? 起きろよ……!?」


シュラインが死ぬことなど理解できないアイラは師匠を揺らしまくる。


「おいお前ら、なんでここにいる?」


傍観していたハラが2人に近づき、2人に先程のアイラより強い殺気を放つ。


「あ? 【泥の偶像】は黙ってろ。俺達はこいつを殺すんだよ」


圧倒的な殺気にも屈しず……いいや全く気にしないヤウチ。ヤウチはアイラに真っ赤な剣を向ける。


「聞き捨てならないな、そいつは魔王軍が受け持っているんだぞ?」


「そうか、でもこいつは何もしなくても死ぬぞ?」


「それでもだ。離れないとなるとなー…………ぶち殺すぞ?」


「あははははは! 怖いよ怖い! ターヌ怖いよーー!」


ターヌは自分の両腕を自分に抱きしめ、ヤウチは嘲笑をする。


「残念だったな。魔王と大司教様からの命令だ、後で魔王にでも聞いてみろ」


「なに!? 魔王様が許可したのか……!?」


ハラは魔王のという名を出され困惑する。まさかそのはずがない、それを聞き正そうとしようとするが———


「じゃあな【最弱勇者】」


ヤウチは全く剣を振り下ろす。ハラの抗議への説明がめんどくさいと判断し先にアイラを殺そうとする。


「幻想魔法『聖剣の光』」


「ッッッッッッッ———————!?」


ヤウチとターヌは後ろへ後退する。その判断は正しく、ヤウチとターヌがいた真下からは一筋の光が爆音と共に放たれた。


「はぁ〜、店に来ないと思ったらこんな傷だらけになって……あんたバカ?」


「サファ……イア……!?」


「そんな怪我してなんで生きてんの? あんた馬鹿でしょ、早く気絶しろ!」


————ガン!


サファイアはアイラの頭を先程のヤウチよりも強く蹴り上げる。完璧に頭蓋骨がイッたような音がする。


アイラは声も出さずに白目を剥き気絶をする。


「幻想魔法『聖女の癒し手』」


サファイアはアイラに回復魔法を施す。その回復魔法は異常な程の力でアイラの切り傷、空いた穴が戻ってゆく。


「あいつは……伝説の魔王軍四天王【空想の絶女】」


「えー私のこと知ってくれてんの、ちょっと嬉しいじゃん……ってあーーー!? 【泥の偶像】じゃん!?」


「よっ、【空想の絶女】。元気にしてたか?」


「もーあんたは何も変わらないね〜」


「お前もその喋り方といい、懐かしい気分にさせるな」


————ドン!


自分を無視されヤウチはイラつきが隠しきれなくなり真っ赤な剣を地面を斬る。物凄い音ともに地面が割れる。


「お前そこを退け。そいつを返してもらう」


気迫ある声と殺気、常人なら漏らすほどのものだが——


「え、無理だけど」


「あ? 調子に乗ってるとぶち殺すぞ?」


「あーそういう感じね。気持ち悪い男だね〜」


「搾り出せ 血液魔————」


「幻想魔法『聖剣の一撃』」


サファイアの魔法がヤウチより早く放たれる。その魔法は勇者でしか使用できない魔法。


大きい剣が出現し、ヤウチ当たりヤウチは死ぬはず。その運命を防げるはずがないが……


「かはっっっっっっっっ!?」


「げげげ、魔法無効の防具着てんの? 趣味悪〜」


本当なら一撃で葬れたはずがヤウチの魔法無効の防具のせいで魔法が軽減され、膝を着かせるだけだった。


「幻想魔法『絶対断絶空間』」


『絶対断絶空間』対象の人物と2人だけの空間を作り出せる魔法。魔法の中は発動者が解除というまで外部からの全てを遮断する。


「流石、元魔王軍序列4位。鍛錬は怠ってないようだな」


この魔法は2人だけの空間にしかできない制限がかけれているが、ハラの泥の中にはライ、サファイアの近くにはアイラ。

2人だけの空間とは言い難い、これを成功させたのはもちろんサファイアの鍛錬のおかげだ。


「あははは〜褒めてくれて嬉しいじゃん。っであんた達の目的はなんなの?」


「お前もよく知ってると思うぞ」


「ふーん、あの方が動き出したんだ」


「そうだ。あの方が世界の滅亡を望んでる」


そこでサファイアの頭の中の辻褄が合う。


「あーそういうことね。もうそれは苦肉の策じゃん」


「それは魔王軍全員が思ってるぞ」


「そのためのシュラインの死なんだ」


未だにアイラの隣に倒れているシュライン。心臓は貫かれもう死んでいるだろう。


「【空想の絶女】……お前は帰ってくる気はないか?」


「そうだね〜、どうせ死ぬならこいつの精気吸ってた方がいいや」


「それならいい。元気でいろよ」


「あんたもね。幻想魔法『透明の体』。幻想魔法『絶対断絶空間解除』」


サファイアはアイラと自分自身を透明にし、去っていった。


「くそっ!? あいつはどこだ!?」


「残念だったな、あいつはもう居ないぞ。それじゃあ、俺は行くわ」


ハラは地面の中に入り、姿を消す。


「待て!? お前のしたことは許されないぞ!?」


「がははははははは! 我の考えだとお前らがしたことの方が許されないけどな!」


「わーお、それは予想外かも」






アイラが居なくなったエラスラン王国、それでもまだ様々な思惑が交差する。


この日、エラスラン王国王都民約4000人が死亡。


聖騎士約200人が死亡。


魔王軍幹部1人が死亡、四天王の1人が死亡。



魔王軍幹部、四天王を約10年振りに殺し多大な損害を与えた。


だが全世界の人は絶望するしか無かった。



魔王軍とキュロス教国が同盟を結んだことを。



エラスラン王国では今日のことをこう言う。



絶望と歓喜の厄災と。






——————————第1章~完~——————————







終わったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


はい、終わりました。完結でごさいます。いやこの話はプロローグみたいなもんなんで次回作にご期待くださいとしかいえないですね。

次回作、この話の続きを書くのはいつかは分かりませんがいやーーー終わった終わった。今回はエタらかった! 小説歴2年のなかで完結を出したのは初めてです。いや短編を除いてね。

いやーーー気持ちがいいものですね!


あ、もう全くこの話と関係のないものを書いててですね、それを今夜の1時ぐらいに投稿しようかなって思ってます。まぁ1話投稿したら結構また充電期間に入るのですが……


まぁそんなこんなで


職業無し 種族外れ 2つ名【最弱勇者】〜魔王軍から追放された俺は英雄になる〜完結です!


ここまで読んでくれたかたありがとうごさいます!


次回作


美少女が作る最強ぼっち軍団のVRMMO with毒舌王子


をよろしくたもう!


by 終わった……終わったぁぁぁぁぁぁぁぁと思った犬三郎

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