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32話 〜死〜

「おりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


屋敷に女の子を入れたあと、またワイは走り回る。もう殆どの人は屋敷に誘導した。大工の人達や元冒険者たちも手を合わせ、今のところ死者は少数しかいない。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


ワイは魔物をもう50匹以上倒している。もう体力の限界が近づいている。


「おいそこの、身長がデカいやつ! 早く逃げねぇとやばいぞ!?」


顔と肌の露出が異常に少ない、しかもやけにこの状況に冷静な男性。その姿に戸惑いつつ、男性へと近づいていく。


「あ?」


男性へと近づいた瞬間、男性は居なくなっていた。


「おいどこに————かはっっっっっっっ!?」


ワイのお腹に傷口が出来ていた。ワイ自身も何が起こったか分からない、分かるのはお腹の痛みだけ。


「くそっっっっっ!?」


幸いにも傷口は浅い、早くポーションを! と右腕を動かそうとした瞬間、違和感を覚える。右腕の感覚がないのだ、ワイは右腕を見てみると……


「ッッッッッッッッ———————!?」


右腕がない、なのに痛みを感じない。傷口が再生し、血も出ていない。右腕は元からなかったようにも感じるほどワイ自身には違和感はなかった。


今度は左腕を動かそうとする、左腕もない。


右脚を動かそうとする、右脚もない。


左脚を動かそうとする、左脚もない。


首を動かそうとする、首は動かない。



目を開けようとする、目が見えない。




匂いを嗅いだら死の匂いがした。




◇◇◇◇◇



『弱者、お前は王都に行け 』


『いいのか?』


『いいもなにもこちらはお前より強い冒険者もいる、王都の行動の判断はお前に任せる』




「はっ! はっ! はっ! はっ! はっ!」


俺は王都中央部へと向かって走る。


王都中央部にはメラ、ラメ、ハラさん。バーリーさんのところにはミケランジェロ、師匠は居るのは分かるがどこにいるかは分からない。


第7騎士団の活動区画に行く前にハラさんに会った方が手っ取り早い。なんで俺がこの国にいるのか、なんでこの国を襲っているかを聞けるはずだ。


「シュライン流 剣術 『抜刀』!」


目の前にいる敵はどれも弱い、どれも一撃で葬れる。ワイが魔物と戦っても大丈夫だろう。

今のワイはBランクの上の中並の力はある。1体1ならナルに勝てるほどだ。


なら第7騎士団の活動区画は大丈夫だ。


「ふん!」


中央部に近づく程に魔物の強さも強くなり、皆の匂いが濃くなる。周りには聖騎士団が戦い、王都民を逃がしている。


「あははははははははは! こいっははははつ攻撃はははは効かないなはははははははははははは!」


「ったくうるせぇ聖騎士だな。泥魔法『泥の刃』」


「あははははははいったーーーいなははははははははは!」


ハラさんと聖騎士が戦っているのが見えた。


ハラさんを見たら何か込み上げてくるものがあった、早くハラさんと1体1で話したい。


ならあいつは邪魔だ。


「シュライン流 剣術 ウルフ『抜刀』!」


————ザン!


完璧な不意打ちでどっかの団の団長の頭に木刀をめり込ませる。


「あはっっっっっ!?」


「「「団長!?」」」


「泥魔法『泥の刃』」


「「「がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」


団長とその団員を全て気絶させた今この瞬間、この場にはハラさんと俺しか周りにはいない。


「【最弱勇者】が何の用だ?」


この殺気……本物だ。俺に敵意を確実に向けている。今からでも戦いになってもおかしくない。


だがこんな所で引き下がる訳には行かない。ここでハラさんを逃せばいつ皆に会えるか分からない。


「……なんだよその言い方、どうしちまったんだよハラさん」


「どうしちまったって? 俺たちはどうもしてないぜ【最弱勇者】」


「【最弱勇者】って……俺達は家族だろ?」


「ははははっこれはたまげたよ。俺達は家族だって………? 殺すぞ」


「ッッッッッッッッ———————!?」


先程よりもえげつない殺気が放たれる。


この体中に纏われる殺気……これが魔王軍幹部の本物の殺気……でもそんなの関係ない。


「こんなことしても俺は何もするわけないだろ!」


「馬鹿かお前は。お前は俺達の敵だ……【最弱勇者】。これだけは変わることない事実だ」


「で……く…………」


俺は何を言えばいいんだ分からない、本当に俺との生活を忘れたのかよと声を大にして言いたい。だけどハラさんの目は俺を差別しているような目。あんな目は見たことない。


「泥魔法『泥の刃』」


ハラさんは手を横に振る、飛び散った泥が刃となり俺の方へと飛んでくる。


アイラは避け無かった。


「俺は……戦いたくねぇよ……!」


アイラは体に傷を負いながらもとは家族とは戦いたくない。18年も一緒にいた家族と本気で戦えるはずがないだろ!


「【最弱勇者】お前が戦いたくないのは、よーーく分かった。ならこれならどうだ?」


ハラのお腹が開く。その中からは一人の女性が出てきた。その人はアイラのよく知る人物。


「……ライ……さん……?」


「そうだったライとかっていう名前だったな。殺す前にお前の事を言うもんで生け捕りにしたんだわ」


ハラは自分の右手を刃の形にし、ライの首を少し切る。


ライの首からは少しの血が流れる。その人物が本物だと分かるように。


「ハラさん止めてくれよ。そんな事しないでくれ!?」


アイラは何故か声を大にして講義をしていた。人間なんて殺す気でいた、なのにこの短期間で人間への敵意が親しみに変わっていた。


この言葉にハラはチッ! と舌打ちをする。


「お前、こいつのこと好きなんだろ? だから葛藤してるんだろ? そんなこと関係ないんだよ! これは生きるか死ぬかの戦いだ! 生ぬるいこと言ってんじゃあねぇよ!?」


「くそ……クソっが……!」


アイラは涙を零す。だがアイラは決められない。どうやってもハラさんに手を出すのは……家族に手を出すのは無理だと。だがアイラの心の中にはライさんがいる。


究極の天秤。戦うか 何もしないか


「我流 剣術 ウルフ『抜刀』!」


「ッッッッッッ—————!? シュライン流 剣術 『抜刀』!」


————カァン!


「師匠……!」


「…………」


アイラはシュラインの『抜刀』を止める。

 

「我流 剣術 『薙払い』!」

 

「ウィンド!」


アイラはシュラインに向かってウィンドを撃つ、ウィンドの突風に身を任せ後ろへ後退する。


「おお【無音】ちょうどいい時に来たな。あ! そうだ! 【無音】に勝ったらこの女を解放してやるよ、どうだ? 最高だろ」


アイラは立ち上がり、泣いた顔で訴える。


シュラインの本当に殺しにくる刀身、それを見て涙を流さないアイラではない。


涙を流し心がぐちゃぐちゃになる。


「どうしちまったんだよ……そんなことしたくねぇよ!」


ハラのいきなりの提案、魔王軍で1番一緒に過ごしたと言っても過言ではない目の前の……父親みたいないや、父親を殺せるわけがない。


「したいとかしたくないとかじゃないんだよ! そんなことをお前が決める権利はないんだよ! これは死ぬか死なないかの戦いだ! 死にたくなかったら剣を抜け! 守りたかったら剣を抜け!」


アイラは分からない。声を出そうにも何を言ったらいいか分からない。2人のこんな形相初めて見た、家族にどう声をかけたらアイラを殺すのを止めてくれるのか頭が真っ白になり、何も分からなかった。


「我流 剣術 ウルフ スネーク『抜刀』!」


そんなアイラを叱咤するようにシュラインはアイラに向かって一直線に飛ぶ、いつもなら防げる筈の攻撃が、シュライン剣が曲がっているように見えどこから攻撃されるか分からずもろに剣を受ける。


いや攻撃を受けたかった、本当にシュラインは殺しに来ているのか? それを知りたかったからだ。


だがその代償ももちろん大きい。


鮮血と共にアイラの左腕が宙に飛ぶ。


それでも尚、声を上げずに左腕も抑えずにアイラは下を俯く。


そのアイラを見てシュラインは頭に今までにないくらい血が上る。


「アイラ!」


シュラインはアイラの胸ぐらを掴み、声を荒らげる。こんなシュラインを見た事がない、アイラは目を見張りシュラインを見る。


「俺はお前に全てを叩き込んだ! その成果がこれか!? これがお前の努力の証か!? これがお前か!?」


アイラはシュラインの言葉に胸を打たれる。なにか今まで頑張ってきた物が全て無くなるような、今まで魔王軍にいた時に培った勝ち取ったもぎ取った物がなくなる、そんな気がした。


「でも師匠と本気の戦いなんて……!?」


「がやがや言うな!お前の大事な人が目の前にいて危ないんだ!? それを守れなくて何がお前だ!? そんな奴に育てた覚えもないし、教えた覚えもない! 」


「……うっ」


アイラは涙を流す。師匠がハラさんがこんなにも声を荒らげて戦えと言っている。漢がこんなにも声を荒らげていってるのにその気持ちに答えなくていいのか?


そこでアイラの中の糸がプツンと切れる。


この音は覚悟が決まった音だ。


「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


アイラは覚悟を決める。


「それでいい」


シュラインはアイラから離れる。


「クソォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」


アイラは涙を拭きながら怒号を放つ。今からお前を殺すと、大事な人に殺気を放って。


「力の根源解除 感覚の根源解除『制御(リミッター)全解除(リリースオーバー)……!」


アイラは今できる最大の力を使う。未だに使いこなしていない加護の力。『制御(リミッター)』の全解除。活動時間は約1分。


「シュライン流 剣術 ウルフ『抜刀』!」


「我流 剣術 ウルフ『抜刀』」


2人の剣が交差した時、師弟対決に遂に決着が着く。







ワイ死んでしまった……ワイ!? ワイーーーーーー!?


悲しいな……ワイが死んじまったってことの話でしたね。まぁ最後もいい感じに終わったのですが。

アイラの葛藤ですね、愛すべき人をとるか家族をとるか……究極の選択。結果的には愛すべき人をとった、これがアイラの選択でしたね。

悲しいですね。


あ、今日でこの小説終わります。


by え? 最近投稿してなかったのにどうしたんだ犬三郎!? と思った犬三郎

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