第1話 〜ファイア〜
アイラは物心着いた時には魔王城の中で暮らしていた。
「メンタークさんこんにちは!」
アイラは広い魔王城の廊下で通り過ぎる異形の者、足が馬の下半身で上半身が人間の体をしている合成魔獣。
「おーアイラ、小さくて見えなかったぞ」
メンターク10人居る魔王軍幹部の1人。魔王軍幹部内の序列は5位だ。
言ってはなんだがメンダークはバカだ。
合成魔獣の活かした戦い方をすれば序列などもっと上のはずなのに、足を鍛えず腕を鍛えず指だけを鍛えている。
指だけの握力で小さい山を壊せるほどだが、腕全体を鍛えていればパンチで大きい山だって壊せたはずだ。
「今からハラの授業を受けに行くのか?」
「うん、そう! 今日は魔法を使うって約束したんだ」
人間が5歳になると覚える魔法が7つある。
『ファイア』指先から少しの火がでる。
『ウォーター』指先から少しの水が出る。
『ウィンド』 片手をかざすと少しの風が吹く。
『ボルト』指先から静電気並みの小さな電気が出る。
『ロック』 片手をかざす少しの砂利を生成する。
『ライト』 指先から小さい光が輝く。
『ダーク』 相手の視界を少し暗くする。
これらは日常生活で覚える魔法、日常会話と同じように簡単に覚えることが出来る。
この7つの魔法で自分と相性のいい属性の魔法をみつけ、そこから自分の使いたい魔法を使う。この世界には沢山の魔法が溢れている。
殆どの魔法はこの7つの魔法の派生から出来ているが、自分独自の魔法を作る者もいる。
一概にどれの魔法が一番強いとかはないが、全ての魔法に善し悪しがある。
「おお、そうか! ハイ・ヒューマンであるアイラには簡単な授業だな! ガハハッッッハハハ!」
「ハラさんこんにちは!」
「よぉ、アイラ。元気か」
「はい! 元気です!」
「そうかそうか、では今日からは魔法を使うぞ」
アイラが勉強を教わっている人物、ハラ。魔王軍幹部で種類は泥スライムの亜種、泥で人間の大人並の体をを形成し目と口に穴が空いている。
「アイラはハイ・ヒューマンだからファイアぐらい簡単に撃てるだろ。よし、魔力の流れは掴んでるよな?」
「はい!」
「じゃあ指先に魔力を込めファイアと言ってみろ」
アイラは指先に魔力を込める。すると体中の魔力が指先に全て流れていく感覚を掴んだ。
普通なら凄い小さい火が出るはずだ。
だがアイラは違った。
「ファイア!」
鳴り響く轟音、肌に熱風が当たり肌は瞬時に焼ける。
超絶初級魔法『ファイア』。それを産まれて始めて撃った時、魔王城の一部が壊れた。
この後アイラは1ヶ月、目をを覚まさなかった。
何故こうなったか。それはアイラが目を覚まして数日後に教えられた。
アイラの種族をよく調べたらヒューマンの上位互換と同じく下位互換である、”外れ”ハイ・ヒューマンという種族だった。
ハイ・ヒューマンとは勇者になるべくして産まれた種族だ。
元々のステータス値が高く、レベルが上がるほどその数値は爆上がりする。
アイラの種族外れハイ・ヒューマンとはレベルが1から1レベルも上がらず、魔法も超絶初級魔法しか覚えられない。
その代わり超絶初級魔法に多大な魔力を使って放つとその魔法は超威力へと変わる。
だが魔力量の消費も激しく使い物にはならないといわれている。
その代わりステータスがレベル600の戦士、魔道士の丁度中間辺りのステータスとなる。
だがそのステータスのせいで外れハイ・ヒューマンとなった人間は死んでしまう。
産まれた瞬間から徐々にレベル600のステータスになるため、生後2ヶ月後には圧倒的なステータスと自分のレベルが噛み合わず体が破裂する。
普通ならアイラは死んでいた。
それが何故か体が破裂しなかった。
それは何故か?
それは人間が産まれた時に神から授かると言われる固有スキルが原因だった。
人族が授かる固有スキルは多種多様。新種のスキルや、戦闘系のスキル、意味の無いスキルも授かる時がある。
アイラの固有スキルは新種スキル『制御』だった。
『制御』とはステータスをある程度でストップさせるスキルだ。
アイラは人族の農夫が18歳になったときと同じステータスで止められていた。
そして何故かアイラが魔法を撃った時、魔力の『制御』だけが解除されていた。
そこで魔力管理に慣れていないアイラはレベル600の魔力を全てファイアに注ぎ込み、レベル600の魔導師が炎系の上級魔法を使うのと同じ魔法が出てしまった。
アイラはその話を聞いた時、物凄くワクワクした。
強い異形者が集まる魔王城の中でアイラは絶対に最強の魔王軍幹部になる自身……いや確信があった。
それほどハイ・ヒューマンは特別な存在だ。
アイラは自分より強い人達と戦えるそれが嬉しかったのだ。
レベル600のステータスというのは魔王軍最弱幹部と同等のレベル。
体が自由に動き始めた時、アイラは魔王様に直談判しに行った。
「魔王様、僕は魔王軍幹部になりたいので特訓させてください」
ハイ・ヒューマンであったアイラは普通に特訓し魔王軍幹部になる予定だった。
それも外れハイ・ヒューマンであることによって魔王様がやめるように言ったのだ。
「執務室に来たと思ったらそんな事を言い出したか」
人族の人間は魔王が大きい部屋にいると思っているだろう。それは間違いだ、魔王様は少しデカい執務室で執務をこなしている。
今も話しながら書類に釘付けの魔王様にアイラは頭を下げた。
「僕もみんなの役に立ちたいんです! お願いします!」
「アイラ、君はもう今年で5歳。君が外れハイ・ヒューマンと知った時もう私はダメだと思った。その理由は分かるね?」
「はい!」
「だったら知っているはずだ、魔王軍の幹部になるということはそれ相応のリスクが伴う。君の場合は圧倒的努力、圧倒的才能、圧倒的精神力、圧倒的戦闘力」
魔王様は動かしていていた手を止め、俺の目を見る。
「君に魔物以外の全ての人間に襲われる覚悟はあるのか?」
「僕は皆のことを家族と思っています! 僕は皆のことを守りたいんです、その為には強くならないといけません!」
魔王様は僕の瞳を見る。
「覚悟は…………あるか」
はぁ〜とため息をつき魔王様は優しい声で喋る。
「うん、分かった。じゃあさっそくハラに私から言っておこう」
「ありがとう魔王様! じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
アイラは執務室を元気よく飛び出して行った。
ガタン! と勢いよく閉まる扉を見て魔王はまたため息をつく。
「魔王様……なんですかその書類は? ぐちゃぐちゃじゃないですか」
魔王の後ろから1人の金髪の女性が現れ、魔王がさっきまで書いていた書類を見る。
そこには線がぐにゃぐにゃで何を書いているか何も分からない物になっていた。
「大丈夫かなアイラは」
「魔王様の心配も分かります、現に私も心配です」
「アイラには闘争心がある、強い人と戦いたいという。正義に就くか……それとも悪に染まるか」
「正義に就くか、悪に染まるかですか……。あの子はそんなものに留まりませんよ」
「留まらないか……ははは、それは僕も同意見だ」
魔王はアイラが出ていったドアを見て笑みを零した。
レスポンス異常に早い人っていますよね。私が新作出すと直ぐにコメントくれる優しい人がいるのですが……なんで分かったのか……考えても分からない。
まぁその話は置いといてやっとのことで第1話が始まりましたね。アイラが主人公なんですが後3話ぐらいは説明会と修行編です。いや修行編地味すぎてヤバですね。
普通は魔王軍幹部の秘伝の技とか、魔王様が稽古してくれるとか、なんですけどね。なんだろまぁ技は教わるんですけど大半は……。
そして主人公が放ったファイアこれは私の原点であって頂点である最高の技ですまぁこの魔法があるからいいでしょ。
by 何万文字でスランプになるんだろうと考えても分からない犬三郎