第16話 〜やってやるぜ!〜
2人は確信する。私達じゃ太刀打ちなど出来ないと。目の前の敵は私達を凌駕する魔物だと。
「おい、何秒で詠唱できる?」
「1分であります」
少しでもナルの魔法を唱える時間を稼ぐ。自己中なワイだって分かる。今の活路はナルの魔法しかない。レッドウルフによって消されたナルの分身体。それをまた発動しても勝機はあるのか?
だが諦めるという言葉はワイには存在しない。ワイは両頬を手で叩き気合を入れる。
「やってやろうじゃねぇか!」
ワイは剣を抜き、ナルはワイを信用して詠唱を始める。
「わたくしめに私の片割れを下さい」
ナルとワイが臨戦態勢に入ったことによって赤色のウルフはワイ達の前へと現れた。
「ガルルルルルルルルル」
ワイは足りない頭で考える、アイラ程の実力を持っている者が一瞬で飛ばされた。
そんな力を持っているウルフは聞いたことがない。こいつはウルフの亜種、魔物が産まれる中で稀有に産まれる存在だと確信する。
「双方の容姿は瓜二つ」
ワイは赤色のウルフの目を見る。
一触即発の雰囲気、ワイが飛び込めばワイが死ぬ。赤色のウルフ、レッドウルフが突っ込んできたならばワイが死ぬ。
圧倒的な死の匂いがワイの鼻腔に突き刺す。
「ワイ流 剣技『気波』」
この状況で選んだ剣技は『気波』。『気波』とは体術の技にもあって自分の気を体中に波のように唸らせ身体能力を飛躍的に上げるものだ。
それを剣技へと応用した技、体中に唸らせた気の波を剣にも張り巡らさる。身体能力をアップさせる且つ、剣の威力も上がる。
「ふぅーーーーーーーーー」
それにも弱点がある、あまりにもの気の量を使うため魔法詠唱並の集中力が必要とされる。しかも気の量も無限ではない。ワイがこの状態を保てるのは35秒。
ナルが言っていた1分には程遠い時間だ。それでも35秒。これはワイが確実に稼げる時間。
「こいやこいやこいや!」
「ワウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
レッドウルフはワイへと噛み付く。その突進の速さにワイは反応しきれず剣のガードが遅れる。
「いってぇな!」
剣のガードが遅れたワイは手にレッドウルフの牙が刺さる。剣でレッドウルフが口を閉じるのを止めているが、どんどんワイの手にレッドウルフの牙が浸食していく。
「クソが!」
ワイは右脚を上げ、レッドウルフの腹を蹴ろうとする。それを瞬時に理解したレッドウルフは蹴りが当たる寸前に後ろに下がる。
「ウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ! ワゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「嘘だろ!?」
後ろに下がったレッドウルフに魔力が溜まっていく。その魔力は赤く燃え上がり炎の玉となる。
レッドウルフは火球を撃とうとしているのだ。ウルフが火球を撃とうとするなどそれは驚愕の光景。
「クソがァァァァァァァ!」
ワイはレッドウルフに突進をする。
身体能力が上がっているため火球が撃たれる前にレッドウルフに剣が届く。
「は?」
ワイにはレッドウルフが笑っているように見えた。
ワイの行動はレッドウルフの予想通りの行動。ワイの剣は先程の攻防で消耗されていた。それが今、突進しレッドウルフに斬りつけた剣が噛み砕かれた。
「があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぉぁ」
レッドウルフウルフはすかさず右前足の爪をワイの体に横から右へと動かす。レッドウルフに血が付き、ワイの腹からは鮮血が飛び出る。
ワイは地面に倒れ伏す。
レッドウルフは後ろへ下がり、ナルに放つ火球を貯め始める。正に慎重すぎるレッドウルフの行動。
「っ……!?」
アイラがいない今はレッドウルフを倒すにはナルの魔法しかない。
ワイが倒れた今でも、ナルは詠唱を続ける。
「クソ……が……!」
ワイはあまりにもの痛さに意識が朦朧とする。
しかし、もう剣はない。レッドウルフに攻撃する手は絶たれた。朦朧としている中、剣とともに戦意が折られた。
今にも倒れ、傷を癒したい。その考えがワイの頭の中をぐるぐると回る。
「ワウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
レッドウルフからナルへと火球が撃たれる。
————ドンッッッッッッッ!
「かはっっっっっ!」
爆煙の中から現れたのは防具以外の服が破け、肌の皮が焼けピンク色の肌があらわになっていたワイだった。ワイは最後の力を絞りナルを守ったのだ。
バタン とワイは地面に倒れる。
稼げた時間30秒。
あまりにも短い時間。圧倒的絶望。
「片方ではなく 1人の私に全ての力を与えよ その私はレッドウルフを殺す者」
それでもナルは詠唱をやめなかった。
レッドウルフはナルが詠唱を止めないことに気づく。そこでレッドウルフは1番安全な道を進む。
レッドウルフは先程ナルに火球を放った時の体勢なる。先程と同様に口に魔力が集結される。
レッドウルフが集結される魔力の量は先程よりも10倍近く多い。6秒後……レッドウルフの準備が整う。
「ガルルルルルルルルル! ワゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ワイに放った約10倍以上の火球がナルに放たれようとする。その魔法はレッドウルフの渾身の魔法。
火球に当たればナルは死ぬ。火球を避けても火球が爆発した時の熱風と熱波により詠唱は止められるだろう。
でも何故、レッドウルフはこの行動をしたのか?
普通に攻撃したらナルには確実に勝てる。
レッドウルフは少しの希望を持たせて1番痛い方法で殺そうとしようとしたのだ。小賢しくひねくれてるレッドウルフ。
その行動は正に愚の骨頂。
レッドウルフは1人の男の存在を忘れていたのだ。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
鳴り響く怒号。
「ガウウウウウ—————————!?」
何者かの木刀によって吹き飛ばされるレッドウルフ。
「よくやったワイ、ナル。お前らの稼いだ時間は無駄じゃなかったぞ」
ナルの目に映ったのはアイラだった。
この話でワイの好感度が上がればいいですね〜。それにしてもアイラはいい所に登場しますね〜、レッドウルフはどうなったか、期待していただければ幸いです。
まぁそんなこんなであとストック何個、あるんだろうなって思ったら20何個もありました。いや〜多いなということなのでこの短時間で3本投稿させていただきました!
明日はレッドウルフとの決着です!
by ぶーーーーーーーーーーーん、飛行機が飛んでるぞ〜……え? どゆことと思った犬三郎




