第10話 〜契約〜
「これは騎士団長からの命令でね。君を観察していたんだよ。君からは魔物の匂いがプンプンするだろ? そんな怪しいやつの2つ名が【最弱勇者】……ギルドマスターが許しても私達は許さない」
脅すような声色で目付きで俺を威圧してくるミイナ。
「それでどうだった。俺の試験は合格か?」
「そうだね〜。2つ名に恥じない実力だし、人を守るという選択肢ができること、そして敢えて被害が少ない魔法しか使わなかった。これは人を守れるって選択肢も出来てるし……合格」
先ほどと打って変わって軽い声色に軽い歩きで俺に近づいてくる。俺はまたさっきのことがないように油断をしない。
「君、冒険者じゃなくて私の団にこないかい? 色々教えてあげるよ。君が望むならえっちいのも大歓迎だけど?」
ミイナが言ったことは突拍子もない事だった。確かに騎士団に入れば魔王城の情報は入るかもしれないが……
「いや俺は自由にやりたい。国に関わるつもりは無い」
「そっか……残念だね」
あたかも答えを知っていたように心のこもっていない喋り。
「話は変わるけど君は1人で冒険をするつもりかい?」
「どういうことだ?」
「冒険者とは1人で務まる仕事ではないってことだよ。Bランクならどこからでも声はかかりそうだけど、君の場合パーティーリーダーをやりたいだろ?」
「それは否定できないが……それがどうした?」
「だったらナルを使うといい。君と居たらナルは絶対に強くなるし君もいい刺激になるんじゃないかな?」
「不安の種にはなるぞ?」
「だったら契約をすればいい」
俺は契約と言われた瞬間、心の中が煮えくり返るような気分になった。
「契約……そんな外道なことを俺がするとでも?」
「ナルと契約して私も目を見張るほど強くなったら、特別な情報を教えてあげる」
「特別な情報?」
「魔王軍関係のことだよ」
「魔王軍関係?」
「ふふふっ食い付きがいいね」
不覚にも魔王軍と言われ体が反応してしまった。一般人には分からかい動揺だが、彼女には分かってしまう。
「君が魔王軍となんらかの関係であることは分かるよ。それを聖騎士団は深追いする事はない。我らが聖騎士長だって因縁があるからね」
「………………………………分かった。だが一応契約書は書くぞ。本当にいいのか?」
「いいよ。その子の事などこれっぽっちもなにも思ってないからね。もちろん性奴隷にしたって構わない」
◇◇◇◇◇
ミイナはカインケルを背負って帰って行った。しかも契約書の紙も渡された。
全てが予想通りっだったのかよと少し虫唾が走り、俺は契約書の紙を受け取った。
「おーい、起きろー」
俺は未だに地面にへばりついているナルの体を触り揺らす。話には聞いていがやはり聖騎士の鎧は特殊なんだなと思う。こうやって敵意がないと普通に体に触れるし、さっきみたいに斬りかかったら鎧としての役割を果たすし.......。
「だれ.......であますか.......?」
「俺だよ俺、お前を倒したアイラだ」
「ッッッッッッ—————!?」
ナルは腕の力だけを使い立ち上がり、後ろに飛び跳ね俺との距離を図る。
そして腰の剣を取ろうと剣の柄を掴もうとするが、もちろんその折れた剣は俺が預かってる。
「お前のお姉様に会ったぞ。契約書も渡された」
俺は先程ミイナに渡された契約書の紙を見せると今まで警戒態勢だったミイナが目を柔らかくし、体の力を抜く。
「じゃあ契約書を書くでありますか」
「は? 契約書を書くんだぞ?」
この世界の契約書は絶対だ。
契約は両者の合意の元行わなければならない。
両者の合意が浅ければ浅いほど簡単な契約書しか書けないし、合意が深ければ深いほど複雑な契約書も書ける。
もしもその書面に背いたら死が待っている。
内容によっては理不尽な死が待っている。両者の契約の内容を書くのか、一方の契約を書くのかその内容次第で不利有利が決まってくる。
もし俺のことは契約書に何も書かず、ナルの事だけを書いたらナルは死の恐怖と付き合っていくしかない。
「いいのであります。お姉様の命令は絶対でありますし、それと貴殿に付いていけば私は絶対に強くなるのであります」
「お前がいいならいいんだが」
「じゃあ契約の内容はどうするのでありますか? なんでもいいのであります」
これは想像以上に闇が深いぞ。先程、ミイナが言った通りに俺の性奴隷にするといったらそうしなければ死ぬ。
それほど、契約書はタチが悪い。なのにこんなに簡単に契約書を書いていいなんて…………
最高じゃないか。
「じゃあそうだな。仲間として信頼するってのはどうだ?」
「信頼……でありますか?」
「ああ、信頼しなかったら俺たちは死ぬ。信頼って戦いの中で一番大事だろ?」
信頼とは仲間である時の最強の武器。信頼すれば仲間は最強になれる。
「そうであります……けど本当にそんなことでいいのでありますか?」
「そんなこと? ナルは他になにか条件はあるのか」
「いや……ないであります」
「じゃあ決定だ」
◇◇◇◇◇
「どうだった、例の者は」
「アイラ・ミーラは確実に魔王軍関係者ですね。泳がし監視していれば魔王城の場所も分かるかもしれません」
「そんな奴にナルを渡したのか?」
「はい。あの子にいい刺激になると思って」
「はぁ〜、お前はまたナルを使って殺す気か?」
「ふふふふふふっ、もし魔王軍関係者ではなかったら期待の新人は流石に殺しませんよ。でも……魔王軍関係者だとしたら殺しますよ」
「それは同意だ」
契約がこんなに重い世界ある!?
そんなところの第10話です。ヒロインと謎の第2騎士団団長、ミイナ。この2人は姉妹なんですよね〜そこんところは第2章で書きたいと思います。
話は変わりますが小説ってマジで難しいですね。もう難しい!
by 無料10連ガチャが馬鹿みたいに当たらない犬三郎




