第8話 〜俺様〜
「アイラさんこれで登録は全て完了です」
「はい、ありがとうございます」
ギルドマスターが去った後、1時間ほどBランクでの立場などを全て教えられた。
「そして改めて紹介を」
受付嬢は立ち上がり俺の目を見て喋る。
「エラスラン王国ギルド本部、受付嬢ライ・ジュリーと申します。アイラ様の専属アドバイザーを務めさせていただきます」
綺麗なお辞儀をするライさん。ライさんのお辞儀は美しく俺も思わず立ち上がり俺もお辞儀する。
緊張のせいか俺の声も強張りそして、裏返る。
「こちらこそよろしくお願いします!」
◇◇◇◇◇
「それでライさん。さっきも言った通り俺は魔王城の場所が知りたくって」
う~んと悩むしぐさをするライさん。
「魔王城の位置ですか、これは本当に機密事項なのでBランク以上の信頼された者しか言えないのですが……」
「お願いします、絶対に他言はしません。教えてください」
ライさんは俺の目を見る。その目に惹き込まれそうな気分になりながらもこちらも絶対に引けない状況。
「……分かりました。魔王城は未だエラスラン王国、マカル帝国、キュロス教国。この三大国家全ての国が探しておりますがまだ確認出来ていません」
こんなに大きい国達が総力を尽くしても魔王城の位置が分からないのなら隠すに決まっている。
人類の力を使っても魔王軍という最大の敵の根城が見つからないのならば国民の不安も募るし、王国への不満も溜まるだろう。
「それでアイラさんはこれからどうなさるんですが?」
「これから……ですか……」
確かにこれから何をすればいいのか。三大国家が総力を出しても魔王城は見つからない。ならば俺が探したって何も変わらないだろう。
「うーん、まずはこの街を散策しようかなって」
「そうですか。ならばメイン通りで食べ物を漁るとかはどうでしょう?」
「メイン通り?」
「はい。メイン通りには屋台が常に出ていて美味しいご飯が沢山あるんですよ」
美味しいご飯と言われ、俺は唾を飲み込む。そういえば朝から飲まず食わずで生きてきた。そろそろご飯も水も欲しい。魔王城で出ていたご飯も絶品だったが、やはり未知の食べ物もあるかもしれない。
「じゃあそこに行ってきます」
◇◇◇◇◇
俺はギルドを出てライさんの教えてもらった通りにメイン通りに向かっている。
街並みにも目が行くが、それよりも不可解な疑問が俺を支配する。それは……
「全てが上手くいきすぎている」
それは客観的に見たらいい事だ。初めての人との交流、初めての経験。
ハラさんから教わり意味がないと思っていた冒険者の登録の仕方。数多あるユニークスキルの中で俺の新しいユニークスキルの内容も教えられていた。
全て俺がエラスラン王国へ行くように分かっているように。しかも今日の朝に支給されたこの装備の中には10万キュロスが入っていた。
当分の生活には困らない量のお金。
全てが周到に用意されたものでは無いかと疑いが出てきた。
「おっちゃん、串焼き1つくれ」
「はいよ!」
やはり、最近教えられたお会計の仕方も全てあっている。
俺は熱々の串焼きを頬張りつつ、また考察を深める。
家族は俺をここに移動させざえる理由があったのではないのか?
もしかしたらこれはテストで今も皆に見られていて、人を惨殺しろと言っているのか?
分からない。考えるほど、可能性が出てくる。
「いや~、こんなに美味そうな匂いがしたら色々買っちゃうな~。早く別のところに行こ」
俺はグルメストリートを抜け出すために人混みを掻い潜り、裏路地に入る。
まぁこれは演技なんだが。
本当はまだいっぱいご飯を食べるつもりだったが、俺の後を男と女がついてきているのに気づいた。
一般人ではない。冒険者でもなさそうだし。
確実に戦闘になることを見越して俺は、迷った振りをしながら裏路地を進んでいく。
いい感じに人がいなくなり、狭いが一応剣が振れる所にきた。俺は後ろを向き2人が来るまで待つ。
「あっれ~~~もしかして気づかれてた? 俺様の尾行がバレるなんて……うざいな」
金髪で青色の目をしたイケメンに、赤髪に赤色の目をした小柄の可愛い女の子が俺の前に現れた。
対峙して分かったがこの2人の剣の素材が統一されているのに気づいた。
剣の素材は銀。
銀で作られている剣を持っているのはエラスラン王国、聖騎士の証。
聖騎士は高すぎるプライドを持っていると教わった。
「聖騎士様がどうして私の所に?」
ここは下手にいき、ちゃんと理由を聞き出さなければならない。もしかしたら魔王軍関係者だとバレているかもしれない。
「くせぇんだよお前が」
「くさい?」
「お前からは強い魔物の匂いがプンプンするんだよ」
ハラさんから教わったことがある。聖騎士の中には魔物の強さを匂いで判別でき、その鼻の嗅覚は並外れていると。
そのお陰で王城への侵入は不可能と言われている。王城に魔物が変装して近づこうにも直ぐにバレるらしい。
魔王城の強敵たちがいる中で18年も生きてきたんだ、そりゃあ匂いだって染み付く。
「お前……魔族だな?」
「カインケル殿それは乱暴ではありませんか!?」
「黙れ……! 俺様の言ったことは間違いないんだよ!」
男は剣を取り出し俺に向けて構える。
これが聖騎士の実力社会。自分より強い者の意見は絶対、あの女の子は男より弱いのだろう。
「待ってください、私は冒険者です」
あくまでも下手でいく。相手は聖騎士だ、少しぐらい俺の話も聞いてくれるだろう。
「魔族は黙ってろ! さっさと剣を抜け、お前をぶった切ってやる!」
「私は剣をとりません、ですから話し合いをしましょう」
「俺様の体に 俺様の魂に纏わりつけ 電気魔法『電気付与』」
先に仕掛けたのはカインケルの方だった。銀の剣に電気を付与し触れた敵を感電死、それか麻痺をさせるという雷魔法の基本的な戦い方。
そしてそのもう1つの効果で体にも電気を纏わりつけ筋肉を刺激し身体能力を大幅に強化させるそれがカインケルが使った魔法だ。
「『制御』解除」
戦いになったら俺も本気を出さざるおえない。
「ふぅーーーーーーーーーーーーーーーー」
アイラは木刀に手をかけ、カインケルを見る。
「うぜぇなその目。一瞬で終わらせてやるよ! 溢れ出ろ ぶち飛ばせ 蹂躙しろ 電気魔法『電脚』」
カインケルは脚に電気を流し走る。そのスピードは爆速で目にも止まらぬ早さだ。
「シュライン流剣術 『抜刀』!」
圧倒的な速さのカインケルに、圧倒的すぎる速さでアイラはカインケルの頭に”木刀”を入れる。
「かはっっっっっ!?」
カインケルは左の壁へと激突する。
普通は死んでいるが、聖騎士は常に見えない鎧を身につけている。それを知っていたから結構な力で振ってみた。
「カインケル殿!? 大丈夫でありますか!?」
女の子がカインケルという輩に傍による。
俺は木刀をしまい、カインケルを見る。カインケルは白目を向いていた。これで一件落着だろう。この女の子はどう考えても下っ端だし。
「大丈夫だその男は死んでない。気絶してるだけだ」
「本当でありますか?」
「ああ、本当だ。だから大丈————」
瞬間、女子から微々たる殺気が放たれる。その殺気にアイラはすぐさま後ろへ飛ぶ。
「あれ? 気づかれたでありますか、今なら殺せたでありますのに」
「お前……!?」
「そういえば名乗ってなかったでありますね。私は第2聖騎士団《分身の聖騎士》ことナル・シャーロットであります」
カインケルの雑魚キャラ感半端ないな〜いや私的にはカインケル好きなんですよ?
でももうカインケルは当分出て来ません。多分ですけど、まぁそんなところでナルさんが出てきましたね。この子は闇の深さがえぐいことになっております。
まぁネタバレになるのでそれは控えますが。次の話はナルとアイラの一騎打ち、聖騎士がどれだけ強いのか?
期待して欲しいですね。
まぁ話は変わるのですが、タイトルを1番最初のに戻しました。大幅に変えたのでこれで読者を置いてゆくスタイル。また1から読者を付けるという独特なスタイルで自分らしさを醸し出します。
ということでタイトルはこれがやっぱりしっくり来たのでこれにしたいと思います!
by テンションが高くなっている犬三郎




