〜2.前世〜
短めです。
それから数年が経ち、ファミンは12歳になっていた。
いつものように外に遊びに出かけ、草原へと寝転びボーッと空を眺める。この家の周りは草原と森だけで、街に行った回数は2桁にも届かない。しかし、動物や植物といった自然が好きなファミンは、苦に感じずに毎日を過ごしていた。
「……暇、だなぁ」
けれど、流石に飽きることもあるわけで。しばらくすれば、また動物を観察したり花を摘んだり遊び始めるが、それまでは何をするにもやる気が起きないので、それはそれは暇なのだ。
結果、ファミンは少し馬鹿なことを考え始めた。
「……別の世界って、あるのかな」
ファミンにとって、“世界”はこの草原と森、そして数回しか行ったことのない街だけだ。そんなファミンが“外の世界”について考えるのは、至極普通のことだろう。それがどうして別の世界に飛んだのかは、実はファミンにも分かっていなかったりする。
「ま、知りたくても知れないのは分かってるけど」
ポカポカとした日差しに逆らえず、ファミンは、そのまま昼寝へと入った。
•・•✦•・•✦•・•✦•・•✦•・•
「んぅ……」
翌日、いつものように森の鳥の鳴き声で起きて、身支度を整える。そして朝食を食べに行こうと部屋の扉に手をかけたとき、はたと気づいた。
「あれ、前世の記憶……?」
そう、ファミンは寝ている間に、前世の記憶を思い出していた。あまりに今世の記憶に馴染んでいたため気づくのが遅れたが、確かに前世の記憶だ。地球という星の日本という国に普通の女の子として生まれ、大学を卒業し、普通に働いてアラサー手前で死んだところまでしっかりと覚えていた。ちなみに、彼氏は中学の頃に告白され1ヶ月で別れた1人っきりだ。
「確かに違う世界のことを知りたいとは思ったけど……」
何か違うとファミンは呆れる。
実は、前世は神の仕業だったりする。ファミンは気づいてないが、実は〈神の愛し子〉と呼ばれるもので、神にそれはもう愛されているのだ。本来神はあまり世界に干渉してはいけないが、ファミンに喜んでもらおうとできるギリギリの処置として前世を思い出させたのだ。わざわざ、情報処理が出来なくて頭が痛くならないようにと寝ている間に。変なところで気遣う神である。
「まあ、こんなのあってもね……」
残念ながら、神からのサプライズプレゼントは喜んで貰えなかったようだ。この時の神の様子と言ったら、思わず敵であったとしても可愛そうになり擁護してあげたくなるほどだったらしい(神の秘書天使A談)。
「お婆ちゃん、お爺ちゃん。おはよう」
「ファミン、おはよう」
「おはよう」
そして、いつもと同じように3人で朝食を囲むのだった。