ハレルヤ全軍出撃。
遅くなってすいません。いろんなところ修正しました。
国境の街ピッサヌロークの郊外では次から次に傷ついた帝国兵士が退却してきた。
それを直ちにハレルヤ討伐軍に編成しなおす。
チャイチュアはそこでハルの噂を確かめていた。
「はい。怒りきったデブゴンが吼えると前衛部隊がはじき飛ばされて
気づくとハッパ将軍の目の前に怪獣がいたんです。」
「将軍はなすすべもなく怪獣に一刀のもとに両断されてしまいました。」
「あの脳筋のハッパがか」
チャイチュアは信じられなかった。
「おい聞いたか。ハッパ将軍が怪獣に殴り殺されたって。」
兵士にはかん口令が引かれたが、駐留軍は皇帝の直営軍と違って綱紀もそこまで高くなかった。
「いや、5万の精鋭前軍が怪獣の咆哮で吹き飛ばされたってよ。」
「将軍は怪獣に両手で両断されたのだと。」
噂が噂を呼んだ。
「兵の中には怪獣に踏みつぶされて圧死した奴もいるそうだ。」
「殴られたら命は無いぞ」
「皇帝陛下もシャンデリアで殴り殺されたそうだ。」
「食い殺されたってやつもいるそうだ。」
兵たちはどんどん不安になっていった。
いくら帝国軍は近隣諸国で最強だと言っても一番強いのは皇帝直属の10万人だ。
それが2回もやられて二人の指揮官一人は皇帝が殺されたのだ。
「いつも必ず大将が真っ先に殺されているそうだ」
「次はチャイチュア様かな」
「あの人もチェラムではひどい事してきたからな」
「くわばらくわばら」
兵士たちの中では次に怪獣が目指すのはチェラムだと衆目が一致していた。
当然チェラムの周りにはつきたがらない。
「何。第五部隊が偵察におもむきたいだと。チェラムの奴らに任せればよかろう」
「チェラムの奴らは裏切る可能性があるとのことですが」
副官が言いよどむ。
「まあ好きにさせればよいだろう。では本軍の守りは第4部隊に」
「第4部隊もできるだけ前線に近いところが良いと」
「そうか。やるきにはやっておるな」
感心感心と喜んでチェラムは言った。
チャイチュア全く分かっていなかった。
みんなチャイチュアから離れたかったのだ。
「ダージリン。お前が本軍の守りをやれ」
ニコッと笑ってチャイチュアは言った。
「わたしがでございますか?」
嫌そうな顔を押し隠してダージリンは顔を上げた。
「なんだ嫌なのか」
少し不機嫌になってチャイチュアは言った。
「いえいえ滅相もございません。」
慌ててダージリンは答える。
「そうだろうそうだろう。やはりわしの守りはわが軍最強の者がやらないとな」
「まあその方も後衛では、前衛と違い怪獣退治出来ないかもしれんが、わしの親衛隊長をやっておけば、この戦のあとは一軍の将軍になれるかもしれんて。
何しろ今回は陛下の弔い合戦なのだからな。うまくいけば恩賞は思いのままだぞ」
チャイチュアはもはや勝った気でいた。
何しろチェラムには駐留軍5万人。現地人の軍5万人。退却してきた軍8万人で20万人弱の軍勢となっているののだ。これで負けるわけは無かった。
そうハレルヤの最終兵器がいなければの話だったが。
一方ハレルヤの宮城
「いやだいやだいやだ」
世間を騒がせた最終兵器は自分の部屋でダダをこねていた。
「まだお菓子食べていたい。」
嫌がる理由がハル姫らしかったが。
「殿下。隣国の帝国軍が攻めてまいりました。
ここは野獣王を倒されたハル姫様にぜひともご出馬頂かないとハレルヤ王国は滅んでしまいます。」
ラタナポン将軍・国防司令官がケーキを前にしたハルの前に跪いていた。
「そうじゃ。ハル。ここは何としても頼む。」
ハレルヤ25世もハルに頼み込む。
「姫様。今回勝利すれば、この部屋くらいあるゴディパのケーキを国王様は褒賞としてご用意いただけるようでございますぞ」
チンが横で姫に言う。
「本当?父上」
途端にハルは喜んで立ちあがった。
「あああ。当然だ。」
動揺した顔を慌てて隠して笑って国王は頷いた。
「今回のはラタナポン将軍はじめ国軍の総力を挙げて姫様と一緒にお供するそうです。」
「えっ。私も」
慌てたラタナポンの足を思いっきり国王は踏む
こいつはついてくる気が無かったのかよ。呆れてチンはラタナポンを見た。
誰が軍の長官なのだ。姫は軍人でなくていくら太っていても姫君なのだ。
チンは切れているとジト目でハルが見てくる。
「当然のことだ。ここには簡単な守備兵だけ残して、全軍が姫に従軍する」
国王は言い切った。
「しかし、陛下。王城の守りが手薄になりますが」
ラタナポンが言う。
「そうよ。父上。先日みたいに別動隊が襲ってこないとも限らないわ」
シリポーンは言った。
「何を言う。その時お前も戦うのだ」
呆れて国王は言った。
「そんな私無理です。こんなにか弱いのに」
「それはハルも同じだ。」
国王は言い切った
「ハルがいくらお前より体格が良くてもそんなに大きくは変わらん」
「でも」
「デモもくそもあるか。姉ばかり戦わすつもりか」
きつく国王は言い切る。
「お父様」
こんなふうにかばわれるとはハルは思ってもいなかった。
「本来。ハルに戦わすなどという選択肢は無かった。
しかし、その戦わざるおえない状況になってハルは戦ってくれたのだ。
それも近隣諸国最強の野獣王を倒し、私の長年の恨みつらみを全てはらしてくれた。」
国王は皆を見回した。
「姫がいなければ本来帝国軍に蹂躙されていたはずだ。
5千の軍などあっても変わらない。それならば今まで2回も勝利したハル姫に全軍上げてかけるしかないのだよ」
諭すように国王は言った。
「国民皆兵制度を導入する。」
国王は宣言した。
「私も見回りに立つ。女官どもにも武装させろ。王城の守備等は交代で行うようにする。」
国王令として直ちに国内に御触れが出た。
「頼んだぞ。ハル。特大のケーキ作って待っているからな。」
国王は微笑んだ。
しかし、ハルが父の笑顔を見る事は二度と無かった。
次は怪獣デブゴン攻撃すです。